株主と会社経営陣との対立が度々ニュースとなります。多くの場合、これらの対立が起きる原因は、株主が保有する株の保有割合によるものです。「自分がどれだけの割合の株を持ち、どんな意思決定を行えるようにしておくべきか?」を決めるのは非常に重要なことです。過半数・2/3・3/4、それぞれの株保有割合でやれることはどう変わるかご説明します。
株の保有割合で意思決定できることは決まる
出光興産の創業家が合併に反対して会社経営陣と対立しているのは記憶に新しいところですが、その他にも料理レシピサイト大手クックパッドの創業者が経営陣を退任させるなど、株主と会社経営陣との対立はたびたびニュースになります。
会社経営者と株主の法律上の関係は委任関係です。
この委任関係は、会社の所有者(=出資者)である株主が、会社経営を専門家に任せてお金を稼いでもらい、稼いだ利益の分配(配当金)を受けるという形で成り立っています。
そのため、名目上の所有者である株主が最も上に位置し、その株主で構成される株主総会が会社の最高意思決定機関ということになります。
株主が一人であれば、その一人が基本的に自由な意思決定を行えますが、複数であれば多数決によらなければ意思決定が出来ません。
株主総会で決議しなければならない事項は会社法で決められており、その内容によって必要な多数決の数が異なります。
従って、会社設立時に「自分がどれだけの割合の株を持ち、どんな意思決定を行えるようにしておくべきか?」を決めるのは非常に重要なことです。
普通決議・特別決議・特殊決議を下すために持つべき株の保有割合
株主総会の意思決定を決める決議は大きく分けて3種類存在し、それぞれの決議を下すために、「どれだけ株の割合を持っておくべきか?」も変わります。
以下、ご紹介しましょう。
①普通決議⇒過半数(50%以上)の株を取得する必要あり
普通決議とは、もっとも一般的な決議方法で、役員の選任・解任や計算書類・配当の承認などを決議するものを言います。
出席した株主(委任状含む。以下同)の持つ議決権数が総議決権の過半数であり、かつ出席した株主の議決権数の過半数により決議されるもを言います。
逆に言えば、総議決権の過半数(50%以上)を持っているなら、もし株主総会にすべての株主が参加したとしても、普通決議であれば自分の可否がそのまま決議の可否となります。
②特別決議⇒2/3(67%以上)の株を取得する必要あり
特別決議は、合併や事業譲渡、定款の変更など、会社にとって重要な事項を決議する場合に必要なものを言います。
出席した株主の持つ議決権数が総議決権の過半数であり、かつ出席した株主の議決権数の2/3(67%以上)以上により決議されます。
つまり、2/3以上(67%以上)なら普通決議に加え、特別決議でも自分の可否=決議の可否となります。
出光興産の場合には、創業家側が1/3超を保有しているため、反対されると特別決議が必要な「合併の承認」が行えないという事態に陥っているわけです。
③特殊決議⇒3/4(75%以上)の株と過半数株主の総会参加が必要
特殊決議とは、公開会社を非公開会社に変更する場合などに必要な決議を言います。
総株主数の半数以上が参加し、かつ総議決権の2/3若しくは3/4以上により決議が可決されます。
従って特殊決議は、議決権数だけでなく株主の頭数まで必要なため、3/4を保有しているからと言って、必ずしも思い通りにいくものではありません。
たとえどんなに株を持っていても手続きの瑕疵や省略はご法度
最後になりますが、株を大量保有しているとしても、その事実に安住してはなりません。
なぜなら、たとえ少数株主であったとしても、株主総会決議の取消、無効、不存在確認といった訴えを起こすことができるからです。
なんでも決議できるからといって、手続きに瑕疵があったり不当に省略したりすると、足元をすくわれることに成り兼ねないため注意が必要です。
とはいえ、株の保有割合は会社の意思決定に大きな影響を及ぼすものですから、最初にどれくらいの株を持つか考えることは非常に重要です。
誰がどれくらい株を持つかで、会社の方向性が大きく変わることにも留意したいものです。
※定款に別段の定めがある場合を除く