振込金額が3万円を超えると銀行の手数料が一気に高くなるのはなぜ?

経済

 取引先への支払や従業員への給与振り込みをしていると、振込手数料の金額が意外と気になるもの。多くの銀行が3万円未満、3万円以上で振込手数料の設定を変えていますが、これは銀行が負担する印紙税との絡みにより設定されています。とはいえ、平成26年の法改正で印紙税の非課税範囲は拡大したのに、銀行は旧来の基準を適用し続けています。そのワケを税務のプロが解説します。

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銀行振込3万円超えで手数料が高くなるワケ

 取引先への支払や従業員への給与振り込みをしていると、意外と気になるコストが振込手数料です。

 特に、「3万円未満なら手数料216円なのに、なんで3万円を超えると432円に上がるんだよ!ヽ(`Д´#)ノ ムキー!!」って感じることってありません?

 結論から言いますと、振込金額が大きくなると振込手数料が増える理由には「印紙税」が絡んでいます。

 銀行の窓口やATMで振込処理をすると、「振込金受取書」という書類を受け取りますよね。

 窓口だと銀行の収受印などが押されたもの、ATMだと機械からペロッと出てくる小さいレシートです。

 あの紙切れ、実は印紙税法に規定されている印紙税がかかる書類(課税文書といいます)で、専門的に言うと印紙税法別表第一の第17号文書というものに該当します。

 従って、その振込金受取書を作成・発行する銀行は、印紙税を払う義務があるわけです。

 当然ですが銀行はサービス業ですから、支払額がある一定額以上になると印紙税をお客様に負担していただくと、こういう理屈になっています。

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印紙税は下がったのに銀行が3万円基準を変えないのはなぜ?

 ただ、税務の専門家としては1つ気になることがあるんです。

 平成26年4月に印紙税法の大きな改正が行われて、平成26年4月1日以降に作成される印紙税の非課税範囲は拡大しました。

 それまでは金額が「3万円未満」の振込には印紙税がかからなかったのですが、平成26年4月1日以降に作成されるものについては、金額が5万円未満までの振込なら印紙税がかからないことになったのです。

 つまり、銀行は、振込金額が3万円以上であっても5万円未満であれば、振込金受取書について印紙税を納める必要がありません。

 ちなみに、平成26年4月といえば消費税の税率が8%に上がったので、ほとんどの銀行がこのタイミングで振込手数料を値上げしました。

 この際に、ゆうちょ銀行や一部の信用金庫は、手数料の改定と併せて従来までの値上げラインを、3万円基準から5万円基準に切り替えました。

 ところが、メガバンクや多くの銀行では、あいかわらず3万円基準を適用して、消費税分だけは8%にアップして値上げしています。

 これは、いわゆる「隠れた便乗値上げ」と言われる部分になります。

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印紙税以外にも銀行では印紙代相当分を手数料に上乗せしている

 「でも、印紙税は200円じゃなかったっけ?印紙税分には消費税はかからないんじゃないの?値上げはけしからん!」

 そういう風に思える人は、結構消費税を知っている人かもしれませんが、実はそうではないんです。

 振込金受取書にかかる印紙税が、実際に振込をした人が負担すべきものということであれば、明細の記載方法を(印紙代+手数料)と分けることも考えられます。

 でも、振込金受取書にかかる印紙を負担すべき人(納税者)は、その文書を作成する人=「銀行」なのです。

 あくまで印紙税は「銀行」が納めるべきものであり、本来負担すべきでない人に印紙代を請求することなんて出来ません。

 だから印紙代相当分を手数料に上乗せして、銀行は帳尻を合わせているという訳なんですよ。

 そう、何度も言いますが、銀行もサービス業ですからね…

 確かに、ATMからの振込みをした場合、ATMから出てくる紙切れに収入印紙なんて貼ってありません。

 でも銀行は印紙税はちゃんと払っていますよ。印紙を貼らなくても印紙税を納めることは出来ます。

 窓口から振込した場合には、銀行が印紙の代わりに収受印を押して処理します。

 ATMの場合には、ATMから出てくる明細書には収入印紙が貼ってはありませんが、よく見ると、「課税」の文字と「印紙税申告納付につき○○税務署承認済み」と記載されているはずです。

 実は銀行などでは、印紙を貼らずにあとでまとめて印紙税相当分を税務署に申告して納付しているのです。

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少しでも手数料を節約したいなら印紙税の納税義務が無いネットバンクを使い倒そう

 ここまで読むと、「少しでも手数料を安くしたい」と思われる方もいらっしゃるのでは?

 そんな方にオススメなのは、ネットバンクを使い倒すことです。
 
 一般の銀行よりもネットバンクのほうが振込手数料が安いと思ったことはありませんか?

 この理由の一つは印紙なんです。

 ネットバンクの場合、振込金送金明細はデータ上でやり取りされているので、「文書」という紙媒体では出力されません。

 あくまで印紙税の対象となるのは「紙」媒体の文書ですので、文書を発行しないネットバンクでは印紙税を納付する義務がないのです。

 何気なく支払っていた振込手数料は、こんな仕組みで成り立っているというわけです。

 今度、銀行に行ってみたらチェックしてみてくださいね。

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鈴木 一彦

鈴木一彦 プロフィール

◆保有資格

税理士、行政書士

◆モットー

「走る税理士」 それが私の別名です!

趣味はマラソンとトレイルランニング。
時間を見つけては、海に山に走りに出かけています!
今の目標は「日本百名山をトレイルランで走破」すること。
壁は高ければ高い方が挑み甲斐があるというものです。

私は生まれも育ちも小田原です。
愛着と思い入れのあるこの地で事務所を構えております。
神奈川県西地域が魅力ある場所になるためにチカラを注いでいます!

私は税理士や弁護士などの「先生商売」と呼ばれるお堅いイメージを無くすことをモットーとしています。

我々のような専門家は、もっとみなさまにとって身近な存在であるべきなのです。
困った時、助けてほしい時に気軽に何でも相談できるような、そんな存在になりたいのです。

一人で悩んでいても、なかなか答えが出てくるものではありません。

まずはお気軽にお問い合わせください!

◆経歴

昭和50年7月 神奈川県小田原市生まれ

平成6年3月 神奈川県立小田原高校卒業

平成10年3月 法政大学経営学部経営学科卒業、神奈川県秦野市の税理士事務所で勤務
(法人税申告300件、個人確定申告800件、相続税申告20件以上を担当)

平成23年12月 第61回税理士試験合格(簿記論、財務諸表論、法人税法、消費税法、相続税法)

平成24年3月 東京地方税理士会平塚支部にて税理士登録

平成26年3月 税理士法人を退社し、神奈川県小田原市にて鈴木一彦税理士事務所を開業

平成26年7月 経済産業大臣により経営革新等認定支援機関に登録される

平成26年8月 行政書士として登録(神奈川行政書士会小田原支部)

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