ホールディングスを作る5つのメリットと3つのデメリット

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ホールディングスって何?日本における歴史

“ホールディングス”と名の付く会社名を多く見かけるようになりました。

ホールディングスとは、日本名でいうところの持ち株会社で、グループ会社の株式をホールド(Hold=保有、保持)するところから名付けられています。

日本におけるホールディングスの歴史は古く、戦前に勃興した財閥の殆どはホールディングスの形式を持っていました。

しかし、GHQによる戦後の財閥解体以後、ホールディングスを作ることは長らく禁じられ、1997年の金融ビッグバンを契機に独占禁止法が改訂され、再度形成できるようになったのです。

ちなみに、現在の制度に入って1番最初にホールディングスを形成したのはダイエーです。

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ホールディングスを形成する5つのメリット

では、ホールディングス(持ち株会社)を形成するメリットとデメリットについて考えてみましょう。

まずはメリットからです。

1)意思決定が迅速になる

ホールディングスを形成するメリットは、何と言っても意思決定の迅速化です。

傘下の企業に個々の事業を任せたうえで、ホールディングスはグループ全体の意思決定に特化することで、経営の迅速化が図れ、効率的な会社運営が可能となります。

また事業ごとの権限と責任も明確化することができます。

ソフトバンクの孫社長は、ホールディングスによる独立採算経営を「自然界の掟を導入し、自分たちで生存本能を働かすもの」と表現しました。

2)事業ごとのリスクの分散

ホールディングスを形成すると、それぞれの会社が別個に事業を行うことになります。

たとえば、持ち株会社Aの元に事業会社が5つあり、このうち1社(仮にB社)が莫大な損失を出したとします。

この時は、持ち株会社AとB社は、損失を被ることになりますが、4つの事業会社は影響を受けずに済みます。

B社だけを売却すれば、持ち株会社A社とその他4つの事業会社を守ることも可能になります。

3)各事業の実情に応じた人事制度の導入

たとえ資本が同じでも、それぞれの事業会社が全く違う事業をやっていれば、それに合わせた人材採用と人事評価を行う必要があります。

たとえば、全く社風が違うのに、持ち株会社で一括採用することになれば、後になって「こんなはずじゃなかったのに」というミスマッチが多発し、採用が不効率化することも。

ホールディングス化は、権限の移譲により、実情に応じた人事制度を導入することを可能にします。

4)M&Aの防衛や迅速な対応が可能

ホールディングスの下に事業会社を置くことで、外部による事業会社の買収は実質的に不可能となります。

また、それぞれの事業会社毎に決算を行うことで、売却を行う時にもデューデリジェンスが行いやすく、比較的容易に交渉を行うことが可能になります。

5)損金算入限度額がトータルで増える

持ち株会社は、子会社からの受取配当金について、その全額を不算入扱いとすることが可能です。

また、交際費も年間800万円までの損金算入を、それぞれの事業会社が計上することが可能になります。

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ホールディングスを形成する3つのデメリット

一方で、ホールディングス化にはデメリットも存在します。

1)事業会社が都合の悪い情報を親会社に隠す可能性がある

ホールディングスの良いところは、自己裁量が事業会社に大きく委ねられることです。

一方で、事業会社の株は持ち株会社に握られていますから、お伺いを持ち株会社に対して行うようになる場合も。

更に自己完結型な組織になると、都合の悪い情報を親会社に隠すことがよくあります。

2)グループ全体の方針に事業会社間で対立が起こる場合がある

ホールディングスの事業会社間では、事業内容はもちろん、社風、考え方に良くも悪くも多様性が生まれます。

このような中で、持ち株会社が下す方針が、一方の事業会社にとって良い判断であっても、他方の事業会社にとっては悪い判断となる場合があります。

こうなると、事業会社間で対立が生まれ、お互いに交換したほうが発展的になる情報を、相手に公開しないようになるデメリットが生じます。

3)会社間で部門等が重複し全社コストが増加してしまう

ホールディングスのデメリットの大きなものとして、会社間で部門等が重複し全社コストが増加してしまうケースがあります。

特に、バックオフィス部門の肥大化が、結果としてホールディングス全体の収益確保を阻害しやすい状況を生みます。

ホールディングス(親元)の存在意義は、このようなデメリットをいかに解消、あるいは縮小させるかというところにかかっています。

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ホールディングスを作る3つの方式〜個別の状況で使う方式はどう変わる?

では、実際の持ち株会社を作ろうとした場合、どのように作るのでしょうか?その方法には主に三種類あります。

①抜殻方式

自ら行っている事業を事業譲渡や会社分割で子会社に移し、自身が持ち株会社に移行する方式です。

NTTやイオンなどは、この方式を活用してホールディングスとなりました。

②株式移転方式

持ち株会社となる親会社を新規に設立しますが、その際「株式移転」という方法を用いる方式です。

「株式移転」とは、自社の全ての株式を新設される親会社に取得させる方法で、既存の自社株主にはその代わりに新設親会社の株式が交付されます。

この形式を採用している代表的なホールディングスは、バンダイナムコホールディングスです。

③株式交換方式

株式会社が発行済株式の全部を他の株式会社または合同会社に取得させる方法です。これにより自社は取得させた他の株式会社または合同会社の100%子会社となります。

自社株主には対価が支払われますが、対価に制限がないため現金のほか株式やその他の財産、無対価も認められます。

では、3つのホールディングス運用方式が、それぞれどんな状況に合っているのかも考えてみましょう。

抜殻方式は自社(1社)が持ち株会社体制に移るときに用いられますが、複数の会社の事業再編やM&Aでは株式移転若しくは株式交換が用いられます。

株式移転では新会社を設立する手間がかかりますが、株式交換は既存の会社をそのまま使えるため、特に企業買収などではよく使われます。

一方複数の大きい会社がホールディングスに移行するようなときには、一方の傘下に入るような印象を避けるため、新会社を設立する株式移転を使用することが多くなります。

ホールディングスを形成することは、あくまでも手段であり、目的ではありません。

移行時には会社設立費用もかかりますから、もしもホールディングス形成を考えるならば、これらの費用も慎重に熟慮しましょう。

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