第二次産業自体は見方を変えれば、第三次産業に市場を奪われ続ける縮小市場でもあります。このような状況にも関わらずモノタロウは、第二次産業の事業者向けにインターネットでMRO(工業用間接資材)を販売する会社として、15年連続で増収を実現しています。なぜそのようなことができるのか?ビジネスモデルの強みに迫ります。
現場の味方モノタロウ♪って何をやってるの?
桃太郎ではなく、モノタロウ(MonotaRO。以下、モノタロウ)?
読者の皆さんは、この会社が何をやっているかご存知ですか?
ここ最近は、「モノタロー、モノタロー、現場で使う消耗品はモノタロウ」という歌が流れるTVのCMが盛んに放映されていますから、何をやっている会社かは理解していなくても、「ガテン系で何か販売している会社なんだろうなぁ」という感じで認知されている方もいるのでは?
モノタロウは、インターネットで事業者向けにMRO(工業用間接資材)を販売する会社です。
ECサイトの外観は以下の通り。
モノタロウホームページ
最近流行りのかっこいいECサイトという感じはしませんよね。むしろ地味というか、昔っぽいというか…
しかし、この会社の2016年12月期業績は、なんと売上高が670.1億円、営業利益も97.8億円に達し、日本でもトップクラスの超高収益企業です。※
更にこれを、15年連続の増収、7期連続の過去最高益を達成という形で実現している点で、他に例を見ない優良企業でもあります。
モノタロウの最強ビジネスモデル〜4つの強み
モノタロウがなぜ継続して利益を出し続けられているのか、そのビジネスモデルの強みをご紹介しましょう。
1)事業者を相手に商売している
モノタロウの顧客は個人ではなく、工場・工事現場など第二次産業(一部は第一次産業)に属する事業者です。
たとえば、工業用マスクから電動工具、トラックにかける幌(ホロ)まで、モノタロウはあくまで事業者に工業用間接資材を販売しています。
これら第二次産業に属する事業者にとって、モノタロウはアマゾンのような存在なのです。
しかも、事業者ですから購入する金額単位も非常に高額になります。
そのユーザー数は、2016年11月時点で210万件。圧巻としか言い様がありません。
2)品揃えとサービスの質が良いため価格勝負が不要
一見すると、工具を中心に単価の高い工業用間接資材は、「安売り」するほうが売れるように感じるかもしれません。
ところがどっこい、これらの商品をリアル店舗が在庫として持つのは、ニッチな商品ほどリスクがある行為です。
ですから、値引き販売は容易にできるものではありません。
更にインターネットの価格比較サイトを見ても、安値で販売している会社ほど、在庫切れを起こしているのが現実です。
しかし、購入する事業者にとってみれば、ニッチで高い資材ほど「今すぐ欲しい商品」です。
近くのホームセンターに行っても販売していなく、現場では工期に間に合わせるため、今すぐにでもそのニッチな商材がほしいのです。
モノタロウの品揃えは1,000万商品。このうち、50万商品は当日出荷、40万商品は翌日出荷対応が可能なもの。
更に、強力なサプライヤー(卸)とガッチリ提携しているため、本当にニッチな商品でも数日で手元に届く体制が整っています。
このようにサービスの質が良いため、ターゲットとする質の良い顧客がどんどん集まる状況となっており、強引な価格勝負を行う必要がないのです。
3)事業者の規模に関係なく価格は一定
通常、事業者向けのサービスでは見積もりを取られ、その注文数量によって価格が変動することもよくある話です。
特に、第二次産業は複雑な事業構造の元で、中小企業が不公平な価格で間接資材を買う業界の慣習が存在します。
モノタロウは、この業界の常識を破ったことにより、多くの中小事業者に受け入れられています。
4)ニッチ分野ゆえにインターネットの恩恵を受けている
工業用間接資材のインターネットにおけるSEO(検索順位の最適化)で、モノタロウは覇者として不動の地位を得ています。
ニッチな工具名をインターネットで調べれば、必ず上位に表示されているのが、モノタロウのサイトです。
モノタロウはこれらSEOに関するチームを内製化しており、なおかつ業界で戦うライバルとして、アスクルなどが最近は参入していますが、工業用間接資材という分野においては、まだまだ品揃えが少ないため、モノタロウに分があります。
モノタロウは縮小市場におけるニッチ戦略のお手本
モノタロウがこれまで取ってきた戦略は、小さな会社が取れるニッチ戦略です。
工業用間接資材という小さな業界(第二次産業全体150兆円のうち、5〜10兆円規模)の中でも、更に小さなインターネット市場で、モノタロウはナンバーワンとなることを選びました。
しかも、第二次産業自体は見方を変えれば、第三次産業に市場を奪われ続ける縮小市場でもあります。
この中で、15年連続の増収、7期連続の過去最高益を達成してきたという事実に鑑みれば、縮小市場にこそ大きなチャンスが眠っていると考えることができるでしょう。
なお、モノタロウの今期目標は売上高800億、営業利益119億円を目指しているといいます。
大手企業との取引拡大、新たな物流センターの稼働開始、そして海外市場展開と、手を緩めることはなさそうです。
縮小市場と言われる市場が、なんだかワクワクするフィールドに感じませんか?
※ モノタロウ 2016年12月期決算発表
http://pdf.irpocket.com/C3064/Wc5N/cRyE/tvNY.pdf