ブランドのネーミングを短くすべき理由〜短いネーミングの弱点とは?

知財

 心理学には「ワーキングメモリ」という概念がありますが、人間が一度に覚えられる文字は約6文字と言われています。よって、商品をブランドのネーミングと同時に顧客へ認知してもらうには、短い文字でネーミングをつける必要があります。ただし、短いネーミングには一つの欠点があります。以下、ご説明いたします。

スポンサーリンク

自社ブランドのネーミングは短くシンプルに

 以前、「商品のブランド化を図るならネーミングで必ず抑えておきたい2つの観点」という記事で、自社商品のネーミングをブランド化したいなら、

  • 1)商標登録しやすいネーミング
  • 2)顧客が覚えやすいネーミング

 という2つの観点からネーミングを考える必要があることをお伝えしました。

 覚えやすいという点で代表的な工夫は「短くシンプル」にネーミングを行うことです。

 本稿では、

  • なぜ短くシンプルなネーミングが重要なのか?
  • 短くシンプルなネーミングを作る時に大抵の企業が四苦八苦するのはなぜか?

 という2つの点について考えてみたいと思います。

スポンサーリンク

ブランド化を考える時になぜネーミングを短くする必要があるのか?

 まず、ネーミングを行う時は、短くシンプルなネーミングにすることが覚えやすさの第1歩となります。

 次の2つのネーミングを比較してみてください。

 どちらが記憶に残るでしょうか。

  • ソニー
  • ブロードウェイ・ミッドタウン・ミュージック

 いずれも、音楽配信を行う会社だろうなというイメージは湧くと思うのですが、覚えておけるのは前者ですよね。

 心理学では「ワーキングメモリ」という概念がありますが、人間が一度に覚えられる文字は約6文字と言われています。

 そんなことを言わなくてもご理解いただけるくらい、皆様もご自分の経験から、長い名前はそれだけで覚えにくいと感じていることでしょう。

 長いネーミングは、世の中に覚えたいブランド名が数多くある中で、あなたの長いネーミングのために、これを覚えるための頭のメモリを、顧客に沢山使わせる状態としてしまうのです。

 この観点で、大企業が使っているネーミングをみてください。

 「どんなブランド名が思いつきますか?」と問われたときに、パッと思いつくブランド名は結構、短くシンプルなネーミングが多かったりするはずです。

 日本のブランドなら、ソニー、AU、イオン、など、短くシンプルなネーミングが見つかると思います。

 英国のブランドコンサルティング会社Brand Financeが発表した、世界のアパレルブランドトップ10は以下のような形になっています。

節約社長
Brand Finance Apparel 50 2017.

 いずれも発音すれば6文字以内に収まっています。

 これらを踏まえると、ブランド化に適したネーミングにするには、短くシンプルにすることが重要になります。

スポンサーリンク

短いネーミングの短所は商標登録が取得しにくいこと

 一方、商標登録を取得しやすいネーミングという点では、一般的にネーミングが短ければ短いほど取得しにくくなります。

 これが難点です。

 というのも、短いネーミングはバリエーションが多くないこと、ブランド化に適していることから、既に多くの企業に商標登録が取得されているからです。

 すなわち、短くシンプルなネーミングについては、顧客が覚えやすいが商標登録が取得しにくいというトレードオフの関係にあります。

 大切なことは、トレードオフの関係があることを知っていることです。

 これを知っていれば、短くシンプルなネーミングを採用するためには、思いつきでパッと決めるのではなく、沢山の候補の中から商標調査を行って絞り込むという作業をしなければならないということが分かります。

Photo via Visualhunt

知財
シェアする
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
弁理士 渡部 仁

新卒で特許事務所に勤務し、生粋の知的財産専門家として20年以上の実務経験を有しています。
2009年に現在の特許事務所を鎌倉に設立し、特許・商標・著作権を専門として地元企業の支援に力を入れています。また、IT・ソフトウェア・ビジネスモデルの特許に強く、特許権の侵害訴訟や外国での特許取得も取り扱っています。
鎌倉商工会議所専門相談員、知財総合支援窓口知財専門家などに従事し、地域の中小企業や行政に対する公的な支援にも数多く携わっています。

知的財産権は、事業を守るだけに止まりません。活用の仕方によって利益を上げる武器にもなり得ます。
すべてのお客様が知的財産を活用して利益を上げ、事業を大きく発展させるという目標に導くことこそが私の使命です。
人との信頼、関わり合いを大切にし、情熱をもって誠実な仕事を心がけて参ります。
記事をご覧いただき、自社の知的財産についてお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

経営者の皆様へ
私たちは、知的財産活用の知識をもつ特許事務所です。
私たちは、地元鎌倉に根ざした特許事務所として、商標登録を取得し鎌倉でブランドを育てる企業を支援しています。
地元企業とのつながりが密接であることから、鎌倉で活躍する企業が具体的にどのような取り組みを行ったか、その取り組みのなかで知的財産をどのように手当てしてきたか、どういう取り組みが成功事例につながり、どういう取り組みが失敗事例につながったのかなど、ビジネスで使える知的財産活用の知識を有しています。
地元企業を支援して得られた知識や経験をもとに、お客様の事業そのものがうまく循環することを最も大切に考え、よりよい循環が生まれるように知的財産権を手当てしています。
このことが、結果として、知的財産を活用してお客様の利益を高めることにつながると考えているからです。

【資格】
弁理士 特定侵害訴訟代理人
第一種電気通信主任技術者
情報処理技術者

【公的な役職 2016年6月現在】
鎌倉商工会議所専門相談員
横須賀市商工相談員
知財総合支援窓口知財専門家
神奈川県特許等取得活用支援事業知財専門家
島根県特許等取得活用支援事業知財専門家
川崎市中小企業サポートセンター知財専門家
神奈川産業振興センター知財専門家
神奈川県商工会連合会知財専門家
日本弁理士会関東支部神奈川委員会副委員長
日本知的財産仲裁センター事業適合性判定人候補者
日本知的財産仲裁センター調停人・仲裁人補助者候補者

【主な講演実績】
2014年 かわさき知的財産スクール 講師
2015年 かわさき知的財産スクール 講師
2015年 経済産業省・特許庁主催の知的財産セミナー 講師
2016年 かわさき知的財産スクール 講師
2016年 神奈川県ものづくり技術交流会 IoTフォーラム招待講演 講師
2016年 経済産業省・特許庁主催の知的財産セミナー 講師

弁理士 渡部 仁をフォローする