スマートフォンの普及により、「お試し」のつもりが定期購入になっていた、という健康食品や化粧品のネット通販の定期購入トラブルが急増しています。この問題に対して、埼玉県が定期購入トラブル改善要望書を国へ提出しました。「お試し注文」からの自動定期購入契約に対する、行政の厳しい目が集まり始めています。
スマホの普及で通販の定期購入トラブルが急増
「お試し」のつもりが定期購入になっていた、という健康食品や化粧品のネット通販の定期購入トラブルが急増しています。
1回目の「お試し」購入を行った後、2回目の商品が届いたので事業者に問い合わせたところ「定期購入なので決められた回数を購入してからでないと解約できない。」などと言われ、初めて定期購入であることに気付くというものです。
特に多いのが、スマートフォンの広告サイトを見て注文した人のトラブルです。
画面が小さいこともあり、消費者がよほどの注意を払わない限り、定期購入と認識できないような表示がトラブルの要因であり、中にはこれを意図的に行っている悪質な業者も存在します。
国民生活センターの調べによると、こうしたトラブルの2015年度における相談件数(5,620件)は、2011年度(520件)の10倍以上に増えています。※2
埼玉県が定期購入トラブル改善要望書を国へ提出
この問題に対して、いよいよ自治体が動きました。
埼玉県が2月20日に、ネット通販の定期購入トラブルについて国に対応を求める要望書を提出したのです。※
要望の主な内容は次のようなものです。
- ・特商法に定める義務表示事項の「商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価」について、定期購入の場合を考慮し「総額」を明記すること
- ・注文内容の最終確認画面で定期購入の総額を表示することを、同法施行規則やガイドラインに明記するなど必要な措置を取ること
これに対して岡村消費者庁長官は記者会見(※3)において、「現行法令により一定の対応が可能である」として、法律やガイドライン改正には言及しませんでした。
広告の内容と比して著しく有利であると誤認させるような場合は、特商法や景表法の有利誤認表示に該当する可能性があるということです。
お試し価格で継続意向の無い顧客を引き止めるのは愚策
今後、消費者被害の状況次第で、具体的な処分による国の判断が示されることが推測されます。
通販においてライフタイムバリュー(生涯顧客価値)の向上を目指すのであれば、お客さまとの継続的な信頼関係がベースとなることは言うまでもありません。
「お試し」の格安価格で購入誘導しても、継続購入の意向のないお客様を無理に引き留めることは、クレームや不満につながるだけです。
お客さまにとっての定期購入メリットを示しながら、定期購入の申し込みを後押しするような、魅力的な「割引価格」を提示できるといいですね。
※インターネット通販の定期購入に関する総額表示の明確化 埼玉県
http://www.pref.saitama.lg.jp/a0001/news/page/documents/170220-0301.pdf
※2相談急増!「お試し」のつもりが定期購入に!? 国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20160616_1.html
※3岡村消費者庁長官記者会見要旨(消費者庁 平成29年2月22日)
http://www.caa.go.jp/action/kaiken/c/170222c_kaiken.html