ボーナスについて会社側が昨今抱えるようになった悩みの一つに、休職者にボーナスを支払うべきか?という問題があります。
この点、法律はボーナスの与え方について何も規定を設けていないので、会社が自主的に慎重な判断を下さねばなりません。
また、休職者が受け取れる傷病手当金もボーナスの与え方で変わるため注意が必要です。
急増する悩み「休職者にボーナスを支払うべきか?」
ただし、就業規則やボーナス支給規定などに、ボーナスを支払うことを明示し、ボーナスの支給方法や算定条件を決めた場合、原則的に企業はその規則に従う義務があります。
ボーナスについて会社側で昨今増えている悩みの一つに、休職者にボーナスを支払うべきか?という問題があります。
果たして、これはどう判断すれば良いのでしょうか?
休職者へボーナスを渡すか否かの判断方法
休職中の労働者にボーナスを支給するかどうかを決める際は、一番最初に社内規定を確認する必要があります。
就業規則、労働協約、賞与規定、労働契約など、労使で取り交わした、さまざまな書類の内容を確認しましょう。
問題は休職者のボーナスをどのように扱うかということです。
社内規則にボーナスの支給要件が明確に書かれている場合、休職者のボーナスに関してどのように扱えば良いのか確認します。
最近ではうつ病などのメンタル不調による休職者も増えている一方で、休職者のボーナス支給に関する規定がない企業も見うけられます。
休職者に対しては、社内の規定に「ボーナスの支給日に在籍している者」という規定があれば、たとえ休職中であったとしてもボーナスの支給の義務が生じます。
ただし、この場合には他の労働者と同様に通常の額を支給する義務はありません。
一般的に査定期間にどのくらい就労していたかを見ることになりますが、就労していない期間に関しては、その期間を控除したり、日割りにしたりして計算します。
社内の規則に休職者のボーナスの査定に関する規定があればそちらを優先しますが、就労の状況(出勤率ゼロ)によっては、結果としてボーナスの支給しないことも可能です。
また、査定の計算結果がゼロだった場合に、会社側の任意で寸志程度を支給する場合もあります。
これらの判断に法的な規制はありませんので、企業側の都合で決めて問題ありません。
ただし、休職者に寸志程度でも支払う場合には、特定の労働者だけを優遇せずに他の休職者も公平に扱うように十分留意してください。
3回以上ボーナスを受け取ると傷病手当金の調整が必要になる
次に気になるのが、休職中の社員がボーナスを受け取る際に、傷病手当金の調整が必要か?という問題です。
傷病手当金とは、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されるお金です。
もしも、十分なボーナスをもらえるのだったら、傷病手当金の額もそれに合わせて少額の支給となるのでしょうか?
この点、健康保険法3条5項と6項は、以下のように定めています。
5 この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。
6 この法律において「賞与」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。
この文面の中でキーワードとなるのが、「三月を超える期間ごとに受けるもの」というものです。
つまり、三月を超える=4ヶ月ですから、休職者が健康保険法の傷病手当金や出産手当金を受給している場合、年に3回までのボーナスであれば調整の対象にはなりません。
あまり聞く話ではありませんが、休職者へのボーナスの支給が同一年に4回以上になってしまうと、健康保険法上はボーナスではなく報酬とみなされて調整の対象になり、傷病手当金が減額されてしまうのです。
また、年俸制を16分割以上にしている場合、もともと決められた賃金を分割して支給しているものですので、便宜上ボーナスとして支払ったとしても、健康保険法上の報酬とみなされて傷病手当金との調整の対象になります。
このように、休職者にボーナスを支給すること自体は全く問題ありませんが、その休職者が傷病手当金や出産手当金を受給しているケースでは、回数が増えると、健康保険法上の報酬とみなされて調整の対象となる場合があります。
まずは、社内規定に休業中の社員に対するボーナス規定が無いか、よくチェックしてみましょう。