9月末に消費者庁は、日本サプリメントが販売する計6商品について特定保健用食品(トクホ)の認可を取り消しました。1991年に同制度が始まって以来はじめての措置であり、これを重く受け止めた消費者庁は、トクホ認定の全商品に調査依頼を通達しました。今回の出来事の経緯と予想されるトクホの行方について解説いたします。
トクホが始まって25年目に初の認可取消事案
9月23日、消費者庁は日本サプリメント(大阪市)が販売する「ペプチドシリーズ」「豆鼓シリーズ」の計6商品について、特定保健用食品の表示許可の取消しを行いました。
許可取り消しは、1991年にトクホ制度が始まって以来初めてとなります。
これを重く受け止めた消費者庁は、トクホの許可を受けている全事業者に対し、有効成分の含有量を報告するよう要請し、トクホ認定商品を販売する業者は一ヶ月以内に最新調査の結果を提出することになりました。
本稿では、日本サプリメント社の商品が許可取り消しに至った経緯を確認しつつ、今回の出来事がトクホ規制強化にどのようなインパクトを与えるか考えてみます。
トクホ取消の経緯と取り消された企業の見解
まず、日本サプリメント(株)が9月17日、自社HPに掲載した「お詫びとお知らせ」から、今回の許可取り消しに至った経緯は以下の通りです。
- ペプチドシリーズ:関与成分として記載されているLKPNMの含有量が、規格値を満たさない疑義があること等が判明した。
- 豆鼓シリーズ:関与成分として記載されているトリスが商品中に含まれていないこと等が判明した。
消費者庁の調べでは、会社側はこうした事実を2014年の自社検査で認識していましたが、同庁に9月15日に報告するまで、2年以上公表せずに販売を続けていたということです。
健康増進法の第28条では以下に該当する場合に、特定保健用食品の許可を取り消すことができるとしています。
- 1)内閣府令で定める義務表示事項を適正に表示していない場合等、第26条第6項の規定に違反したとき。
- 2)当該特定保健用食品について虚偽の表示をしたとき。
- 3)当該許可を受けた日以降における科学的知見の充実により、当該特定保健用食品について当該特定保健用食品表示をすることが適切でないことが判明するに至ったとき。
今回の取り消しの根拠は、上記のうち1)についてペプチドシリーズが、3)について豆鼓シリーズが該当していると指摘されています。
なお、日本サプリメントは、「お詫びとお知らせ」において、以下のように見解を述べています。
「対象商品には、「本品はかつお節オリゴペプチドを配合した食品で、血圧が高めの方に適した食品です。」と表示されています。かつお節オリゴペプチドが血圧が高めの方に適した食品であることは、ACE阻害活性の値から判断することができます。
そして、弊社が販売した対象商品はかつお節オリゴペプチドを含むものであり、かつ、原料(かつお節オリゴペプチド)レベルにおいてACE阻害活性の必要値が満たされていることを確認しております。」ペプチドシリーズについてのお詫びとお知らせ
「対象商品には、「本品は、豆鼓エキスを含んでおり、糖の吸収をおだやかにするので、血糖値が気になり始めた方に適した食品です。」と表示されています。豆鼓エキスが糖の吸収をおだやかにすることは、α-グルコシダーゼ阻害活性の値から判断することができます。
そして、弊社が販売した対象商品は豆鼓エキスを含むものであり、かつ、原料(豆鼓エキス)レベルにおいてα-グルコシダーゼ阻害活性の必要値が満たされていることを確認しております。」豆鼓シリーズについてのお詫びとお知らせ
上記見解のように、効果のある成分が規格値を満たしていない、特定できていない状況であり、機能性表示の届出もなされていない商品において、その原料について「血圧が高めの方に適した」「糖の吸収をおだやかにする」といった機能性を謳うことは問題であると考えます。
このような同社の認識が、2年以上公表せずに販売継続していた経営判断につながったのではないでしょうか。
認可後の事後チェックが導入される可能性も
本件を重く受け止めた消費者庁は、業界団体(公財)日本健康・栄養食品協会会に対して、特定保健用食品中の関与成分量が許可等申請書の記載どおり適切に含まれているか調査を依頼し、期日までに回答を求めました。
今後は、協会を通じてトクホの許可を受けている事業者に対し、自主的な品質管理の徹底を求めています。
消費者庁:特定保健用食品に対する今後の品質管理等の徹底について
更に、今年3月31日に発表された、消費者委員会における「特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会」の報告書では、健康増進法の法改正と広告表示における規制強化の動きもあり、行政監視が厳しくなることは必至です。
現在、トクホ制度において許可内容を事後チェックする要件はありませんが、今回のようなケースが増えるようであれば、法改正まで至ることも考えられます。
機能性表示食品制度とも合わせて、商品品質や表示の適正管理を見直す必要があるといえます。