ゲーム「ファイナルファンタジー」が独自の世界観を守るために取った特許は、「アクティブタイムバトル」というアイデアベースの技術であり、これがゲームの人気を高める一つの要素となりました。特別な優れた技術ではなくとも、発想に一捻りを入れた技術が自社にとって大きな武器となることを示す事例と言えましょう。
特許と聞くとなぜか難しいイメージを抱きがち
いきなりですが「特許」という文字を分解すると、“特別”に“許された”と読むことが出来ますよね。
この言葉が持つ意味を暗に私達は重く受け止めて、特許を取るのは難しいことと考えがちです。
「特許は青色発光ダイオードのように、特別で優れた技術にしか承認されないのだ」というイメージを抱いている方も多いのでは?
しかし、私たちの身近な商品にも、特許を取っている身近な技術は沢山あります。
本稿では、80年代以降のゲーム世代なら馴染みのある「ファイナルファンタジー」が、ある技術で「特許」を取っていることを引き合いに出し、特許を身近に感じていただけたらと思います。
FFシリーズが世界観を守るために取った特許
ファイナルファンタジー(開発元のスクウェア・エニックス)は、それまでのRPG(ロールプレイングゲーム)にはない新しい戦闘方法を採用したことで大ヒットしました。
それは「アクティブタイムバトル」という戦闘方法です。
既存のRPGは、ユーザ側とコンピュータ(敵側)がそれぞれのターンで、攻撃や魔法を使って相手を倒す際に、ユーザー側の操作を待って戦闘が進むため、しばらく考え込んだり、放置しても大丈夫なことから、時間の流れが感じられず、ドキドキ感もありませんでした。
そこで、ゲームエンジニアの伊藤裕之氏は、ファイナルファンタジーの戦闘に時間の流れを組み込むことを考えました。
単に時間の流れを入れてしまうと、アクションゲームになってしまうので、RPGの世界観を損なわないように、時間の流れが戦闘の流れに沿って流れたり止まったりするシステムにしました。
従来のRPGで止まっていた時間をアクティベート(活性化)したことから、この戦闘システムは「アクティブタイムバトル」と名付けられました。
ゲームの世界観が優れていたことはもちろんですが、このような戦闘システムの導入により、ゲームのリアル感は増し、結果としてファイナルファンタジーは世界的な大ヒットゲームとなっていきました。
FFシリーズの特許取得が切り開いた特許の新たな道
余談ですが、アクティブタイムバトルの特許は、知的財産の世界にもう一つの風穴を空けています。
アクティブタイムバトルの特許取得は、我が国でソフトウェアの特許が認められるようになった先駆けとなったのです。
この特許によって他のゲームメーカは、アクティブタイムバトルと同じ形式のシステムをゲームに採用することができなくなり、アクティブタイムバトルは、スクエアエニックス社だけのオリジナルなシステムとなっています。
翻って、私達は発想を少しだけ転換すると、今までより「ちょっとおもしろくなったり」「ちょっと便利になる」技術を持っていることに、気がついていないことがあったりします。
しかし、もしもそのような技術に気がついたなら、たとえそれが世界を変える圧倒的な技術ではなくとも、特許を取ることが会社にとって大きな武器となることを、アクティブタイムバトルの特許取得事例から学ぶことができます。