日経新聞が、都心5区のオフィスビルについて「オフィスビルの需要は上昇しているのに、賃料が上昇しない」実態を報道しました。不動産の価格や賃料は、不動産の将来における収益性を割り引いて算段されるため、オフィスの過剰感が既に出始めていることを、私達は報道から読み取れます。
東京都心のオフィス不動産で空室減っても賃料上がらぬ珍現象
日経新聞は、都心5区のオフィスビルは稼働率が非常に高く、空室率が3.9%になっている一方、賃料が思ったよりも上昇していないという調査結果を報道しています。
都心5区のオフィス賃料、空室減でも賃料伸びず
東京都心のオフィスビル賃料の上昇が鈍い。2008年のリーマン・ショック前の水準と比べて2割安い。立地や機能性に優れたビルの需要が堅調で、空室率が直近で高かった12年から半分以下に下がった一方、賃料は同時期からの上昇率は1割程度にとどまる。外資系金融機関の撤退で賃料回復が遅れている。18年に向けた供給増を見据え、過熱感は薄らいでいる。
2016/9/8 日本経済新聞
本記事データの出処は、空室率レポートでおなじみの三鬼商事さんです。
「オフィスビルの稼働率は上昇しているのに、賃料が上昇しない」というのは、需要と供給の原則に当てはまらない現象です。
ここから私達は、日本の将来を予測するに当たって糸口を見つけることが可能です。
報道が示す未来におけるオフィス不動産の価値
賃料が思ったよりも上がっていないことについては、幾つかの理由が報道でも提示されています。
その1つに2018年以降、ビルが大量供給されることがあげられています。
この真意は、 「今はよいが、近い将来、オフィスビルも過剰感が出てくることをマーケットが予想している」 ということでしょう。
新築ビル、改築ビルはいきなり明日増えることはなく、計画、建築段階からある程度、見込がつきます。
そして、売価や賃料はそれを反映して、先取りして変化をしてきます。
実際に、REIT(不動産投資信託)を組成する際は、不動産価格の将来における収益性を現在価値に割り引いて算定する「DCF法」が重要視されており、東京都心のオフィス不動産の将来価値は、それほど上昇しないと計算されているのでしょう。
その結果が現在の「オフィスビルの稼働率は上昇しているのに、賃料が上昇しない」という現象に結びついています。
確かに2020東京オリンピックへ向けて、不動産は増えていきます。
ただし、オリンピックの需要というのは実際には2週間程度ですから、そのために不動産を買って、持ってしまってよいのか、疑問に思うところは多いにあります。
オリンピックはなんとしても成功させたいでしょうから、そこまでは不動産価格の暴落など、経済的に不安をあおるようなことは避けたいはずです。
しかし、その後のことは分かりません。
先は読みにくく誰かがババを掴むまでゲームは続く
国家財政が傷んでいることは今に始まったことではないのですが、1000兆円に及ぶ負債がいつ破綻するかは誰にも分かりません。
今思いつく解決策は、徳政令を出すか、実質的に徳政令と同じ効果を持つハイパーインフレの状態を起こすことくらいです。
これを踏まえたインフレ政策が導入され、金融緩和が実施された結果、不動産の供給は増えた。しかし、賃料は上がらない。
誰かがババを掴むことは予想するに容易なことです。
今回の不動産賃料で起きている逆行現象も、マーケットが先について何を予測しているのか読むカギになります。
今回のニュースのような1つ1つの事実を大事に確認し、先を読むことが経営者には求められています。