ヨーロッパのある国で一つの村が核廃棄物の処理地に選定され、なんと住民の50%がこれに賛成しました。彼らが賛成した理由は、補償金ではなく「自分達が受け入れることが国民のためになる」という使命感でした。同じように起業時も使命感の有無が、事業の継続性や成功確率を大きく左右します。
核廃棄物処理場建設をなぜ住民は認めたのか?
ヨーロッパのある国で、核廃棄物の処理を巡ってさんざん悩んだあげく、一つの村が最終候補地にあがりました。
村民の意思を住民投票で確認したところ、約50%の住民が受入れに賛成の意思を示しました。
そこで、受入れ賛成の住民をもっと増やすべく、行政は一戸あたりの補償金をさらに増やすことにしました。
そして改めて住民投票を行ったのですが、結果は意外なものとなりました。
「補償金を増やしたのだから当然賛成が増えるはずだ」と行政だけでなく誰もがそう想像したにも関わらず、再投票の結果、受入れ賛成派は20%くらいにまで減ってしまったのです。
いったい、どういうことなのでしょう?
人の気持ちをやる気にさせるのは「使命感」
住民への聞き取り調査を行ったところ、保証金を増やしたにも関わらず、受け入れ賛成派が减少した理由が、やがて明らかになりました。
最初に賛成した人の中には、処理施設が危険だということは重々承知しながら、「受入れることが国民のためになる」、「自分たちが受け入れなければみんなが困る」という自己犠牲の精神で賛成した人が多かったのです。
つまり、それを受入れることが自分たちの使命であると認識したからこそ、住民の人々は処理施設の建造に賛成したのです。
悲壮な覚悟に近い決心を、政府がお金で解決しようとしたと、住民は感じました。
お金というインセンティブで自分たちは動いているのではないのに、自己犠牲に近い自分たちの行動が、まさに踏みにじられた形になったわけです。
この話は、「ハーバード大学白熱教室」で人気の、マイケル・サンデル教授が日本での公開授業の折に話したものであり、人は使命感を持つことで、自己犠牲に近いほどの行為を選択するようになることを説明したものです。
つまり、使命感こそ、その人をその気にさせる最大のモチベーターである、という事実を私達はこの事例から理解することができます。
起業時も使命感の有無が成功を大きく左右する
これを起業の場合に置き換えてみましょう。
起業で最も大切なのは、どんな使命感、ミッションを持ってそのビジネスをやるのかを明確にすることです。
心理学者のアドラーは、
原因を追究していっても問題は解決しない。自分の本来の目的やミッションから考えれば問題は解決するのだ。
と話しました。
「成功するには、いかに失敗があっても、成功するまで諦めなければ成功するのだ」ということは良く聞く言葉ですね。
でも、失敗が続けば、やっぱり途中で投げ出してしまいます。最後までやり続けるのに必要なのは、使命感とミッションなのです。
ビジネスモデル、集客、事業計画…起業にあたっては大事なものがいくつもあります。
しかし、最も大事なのは、あなたは何のためにそのビジネスをやるのかということなのです。