日本国内でも既に、従来は人間がやっていた仕事をロボットが代替している、実際のケースが存在します。その一つが、長崎県のハウステンボス内にある「変なホテル」です。受付からクロークまで、ほぼ全ての作業をロボットが担うことで、コスト削減と高利回り運用に成功しています。変なホテルが当たり前のホテルになる未来は、すぐ先に近づいています。
ロボットがサービスしてくれる「変なホテル」
こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。
前回の記事では、私たちの仕事を奪ってしまうかもしれない人工知能(AI)についての話をご紹介しました。
今回は、従来は人間がやっていた仕事を代替している、実際のケースを取り上げたいと思います。
長崎のハウステンボス内にある「変なホテル」をご存知でしょうか?
昨年2015年夏の開業に際し、多くのメディアがカバーしましたので、ご存知の方が多いかと思います。
「変なホテル」というホテルの名称は「変わり続けるホテル」、すなわち「進化し続ける」というコンセプトを体現しています。
とはいえ、フロントには人がおらず、「美女」と「恐竜」のロボットがチェックイン対応をするなど、現時点ではまさにちょっと‘変わった’ホテルではあります。
変なホテルには、受付以外にもロボットが多数働いています。
クロークには「アーム型」のロボットが荷物の出し入れを担当、客室まではポーターロボットがご案内、そして室内では、ベッド脇に座ったぬいぐるみサイズの「ちゅーりーちゃん」に「電気つけて」など音声で頼みごとができます。
さらに、草刈り用のロボットなども随時、追加導入し、現在は、開業当時の2倍となる180台のロボットが、従来人が担当していた仕事を代替しています。
変なホテルの投資利回りは年間20%に到達!投資対象としても魅力的
さて、変なホテルは物珍しさもあって当初から予約好調でしたが、開業一年を経過しても高い稼働率を維持しているようです。
そして、2017年3月には2カ所の変なホテルが、東京ディズニーリゾートに近い、千葉県浦安市に開業される予定とのこと。
同ホテルを運営するHISの沢田秀雄社長は、記者会見において「第一フェーズとして、変なホテル100軒開業を目指す」とぶちあげています。
この沢田氏の将来構想は、かなり現実的なものだと私は思います。
ロボットを多用する変なホテルは、通常30人のところ、10人の従業員で運営することができ、人件費が大幅に削減できています。
生産性が高いことから、投資に対する利回りは約20%だそうです。
宿泊主体のホテル(宴会需要などに対応しないホテル)の利回りは一般に8%とのことですから、投資対象としてとても魅力的だからです。
「世界初のロボットホテル」として成功パターンを生み出した変なホテルに追随する競合他社も今後、続々と出てくるでしょうし、あと数年もすれば、フロントスタッフは全員ロボットというホテルが、‘変わった’ホテルではなく‘当たり前’のホテルになっているのではないでしょうか?
人間の行う業務は創造性を求められる分野へ
今年の4月に、米・マクドナルドがアメリカ国内の一部店舗で、レジ担当の従業員を廃止し、ロボットによる自動受付方式に転換を開始しました。
コモディティ(差別化が困難な商品・サービス)な業務は、今後ますますロボット(AI)の導入によって、そのコストがゼロに近づいていくため、人手が要らなくなるでしょう。
では、人間のやる仕事が無くなるかと言えば、それはありません。
変なホテルで言えば、「ルームクリーニング」「受付」「事務処理」「会計帳簿の記帳」などのコモディティ業務は、人工知能ロボットが請け負うようになっていき、人間がやる仕事は減っていくはずです。
しかし、
- ホテル新設に向けた資金調達業務
- ホテルの仕組み(オペレーション)を考えて運用する業務
- ホテルのマーケティングを行う業務
- ホテルの経営マネジメントを行う業務
など、非定型で臨機応変に対応しなければならない、創造性を求められる業務において、人間の行う仕事の価値は高まっていくことでしょう。
すぐ先に迫った未来の仕事に対して、貴方の準備は既にできていますか?