「うちの業界は慣習的に労働時間が長い」「残業代を出さないのは、どこも同じことをやっている」という声が未だにあります。はたまた「うちの業種に限って例外規定はないのか?」と尋ねられる方もいますが、果たして労働時間や残業代は業種業態で例外があるのでしょうか?唯一例外規定の存在する業界はどの業界でしょうか?
「うちの業界では残業代が出なくて当たり前」本当にそのままで良いのでしょうか?
先日、飲食店を経営されている経営者様から、このような質問を受けました。
先日、労働基準監督署の調査を受け、労働時間や休日について指摘を受けました。
飲食店は、何処でもそうですが、週に2日休むお店などありません。
ランチと夜に営業をしているので、労働時間もどうやっても長くなってしまいます。
飲食業界で、労働基準法を厳格に適用したら、経営が成り立たなくなってしまうんです。
私達の業界が利用できる、労働基準法上の特例は何か無いですか?
飲食業界に限らず、「うちの業界では残業代が出ないのは当たり前」「どのお店も同じ事をやっている」、というご意見をいただくことは、本当に多いです。(今回の話は業務委託で勤務する人などを除きます。)
また、どの業界にも休みや給与の支払い設定で、慣例や風習といったものがあります。
例えば、運送業では賃金が荷揚げ額の何%といった形で支払われる場合が多いようですし、営業社員へ残業代の代わりに、営業手当等が支払われる場合も見受けられます。
では、労働基準法で業種業態や職種によって、労働時間や残業代について、例外措置というものは存在するのでしょうか?
労働基準法で労働時間の特例が設けられている業界は「運送業」だけ
結論から申し上げますと、労働基準法では業種業態や職種による、労働時間や残業代に関する例外は「ほぼ」設けられていません。
ここで「ほぼ例外を設けていない」と書いたのは、労働時間の算定の仕方において、運送業だけは特別な規程が設けられているのです。
運送業の場合、積込の待ち時間が不規則だったり、フェリーでの移動で時間が変則的になる、といった特殊な事情が存在するため、「拘束時間」という概念が取られています。
運送業においても、荷揚げ何%の中に残業代も深夜割増賃金も全て含んで、支払われる場合がありますが、これも実際はアウトです。
近年は、事故の多発によって、運送業における労働基準法違反の摘発が相次いでいます。
従って、従業員を雇う場合は、いくら定休日が1週間で1日であっても、労働基準法で定められている、
- 法定労働時間:1日8時間
- 1週間:40時間
が適用され、これ以上働く場合には、別途の残業代や深夜割増賃金を支払う必要がある点では、例外規定がある運送業含め変わりありません。
「かとく」の設置により「慣習だから」は言い訳とならなくなる
2015年4月には、厚生労働省によって東京労働局と大阪労働局で、「過重労働撲滅特別対策班」いわゆる「かとく」が設けられました。
労働環境の是正を行わず、過重労働を強いる企業は、今後「かとく」の摘発を受けることが多くなります。
原材料の高騰や人件費の上昇を含めて、経営環境が厳しい状況に置かれていても、それを「かとく」は言い訳として認めてくれません。
「慣習だから」ともし現時点で考えているならば、今すぐ、人を最小限雇用しても回る仕組み作りや、これまで雇用の対象層としていなかった幅広い層からの人材採用を行うことを、検討される必要があります。