「エスキモーに氷を売る」は、著者”ジョン スポールストラ”が15年以上前に執筆した、マーケティングの鉄板本です。本の中身は、主人公がNBA史上最弱で、チケットが全く売れない会社の社長となるところから始まります。彼がチケットを売るために行った逆襲策はどのようなものか?私達は何を学べるか?キミアキ先生が解説してくれます。
マーケティングの基本書「エスキモーに氷を売る」
今日は「エスキモーに氷を売る」という本について、紹介してみたいと思います。
この本は、私がお勤めしていた15年以上前に読んだマーケティング本なのですが、実は「エスキモー」の話も「氷」の話も、一切出てきません。
この主題はむしろ、本を通じて著者”ジョン スポールストラ”が伝えたいことのメタファー(比喩)に過ぎません。
エスキモーにとって氷は、目の前にあるもの。誰も買おうなんて思いません。彼らと氷という商品を元に商売して、利益を得るには知恵がいります。
ストーリーの始まりは、主人公がNBAプロバスケットボール協会で、チケットが最も売れない「弱小チーム」の社長になるところから始まります。
社長になったのは良いけれど、弱いからチケットは一切売れません。そりゃファンは、自分が好きなチームが負ける試合なんて見たくありませんよね。
弱小チームのチケットを社長はどう販売した?
社長は「どうやったらチケットが売れるのか?どうすれば完売するのか?」のみを見つめて、チケットの売り方を考え始めます。
皆さんだったら、どうされますか?「スポーツチームだから、チームを強くしようとすれば良いのでは?」という方も多いのではないでしょうか?
でも、この社長は一切そういことを考えません。これが、「エスキモーに氷を売る」という本の面白さです。
チケットが売れないのはもちろん、人気選手が一人もいませんから、グッズも売れない。
そこで社長は決断します。「自社の商品(選手・グッズ)は売れないから、一切売らない!」と。
ただし、社長は、こう考えました。
「自分達のチームには金を払ってでも見たい選手は一人もいないけれど、対戦相手には金を払ってでも見たい、マイケル・ジョーダンのようなスター選手がいる。相手選手を売りこんで、チケットを売ろう」と。
更に、対戦相手のチームにもスター選手がいない時は、両方ともどうしようもない(笑)
では、どうしようか?ということも考えます。
そのような時は、人気のある講演者を呼んで、試合前に話をしてもらい、人気のないチームの試合であることを濁すわけですね。
弱小チームの社長が考えた戦略は意外と単純
この社長が打ち出した基本戦略をまとめると以下のとおりです。
お客様がほしいものだけを売る
弱い選手の試合なんて誰も見たくないし、人気のない選手のグッズなんて、誰も買わない。たとえ相手が敵チームでも、スター選手がいるなら、自分達のチームよりもスポットライトを当てることで、お客様に喜んでチケットを買ってもらう。
どちらのチームにもスター選手がいない場合は、試合そのものではなく、試合の余興に興味がある顧客に来てもらう。
そうすれば、お客様がほしいものだけを売ることができますよね。
買ってくれたお客様にはもう少しだけ多く買ってもらう
更に、チケットの値下げをせず、値下げしない分、無料グッズを付けることを徹底し、ファンになってもらいます。意味のない値下げをしなければ買ってくれないお客様は、最初から相手にしません。
あとは、チケットを沢山買ってくれる企業に対して、社長はスポンサード契約などでアプローチをかけていきます。
チーム側で「スポンサード契約して貰った結果、どれだけ効果があったか?」データを駆使してアピールし、スポンサード契約をした会社をヒーローに仕上げて、彼等もリピーターにしていき、更にもう少しだけ買っていただくのです。
全く違う業界の例だからこそ気づきに価値が生まれる
この社長は、社内でも面白い文化を作ります。社員にどんどん意見させて、実行させて、沢山失敗させます。
失敗した社員には、なんとボーナスを数万円出して、更に良いアイデアが出る環境を作っていきます。
こうして、チーム全体がどんどん賢くなっていき、売れていくようになります。
私は、この「エスキモーに氷を売る」をマーケティングの基本書と位置づけています。
なぜなら、スポーツチームの運営は、殆どの会社に関係のない事業分野でして、多くの会社さんにとって具体例で当てはまる部分がありません。
ですから皆さん「スポーツチームなんて関係ないし〜」「対戦相手ではないし〜」と言います。
しかし、普通の会社で、ここまで考えた上で、弱者としての大胆な戦略を打ち出している会社も殆どありません。
自分達の会社に置き換えた時に、このNBAチームくらい、お客様を喜ばせることを考えている会社はいかほど存在しますか?
敢えて、全く違う業界で起こることから、気付きを得ることができれば、その気付きは大きな変化につながったりするものです。
ぜひ、時間があれば読んでみることをオススメします。