行列ができているので何の行列か分からずに、とりあえず並んで前の人に「何の行列ですか?」と聞いても、その人も分からない。このような体験をしたことはありませんか?人込みや人の動きを生かすとビジネスには様々な効果が生まれることがわかっています。具体的な事例と共に見ていきましょう。
行列が出来ているとなぜか並んでしまう人の性
半世紀以上前の話ですが、アメリカの心理学者ミルグラムは、ニューヨークの繁華街で、サクラを使った実験を行いました。
その内容は、複数人のサクラに特定のビルをいきなり見上げさせた時に、周囲の人がどのような反応を示すかを観察するものでした。
実験の結果、3人のサクラが一定の場所で立ち止まってビルを見上げると、そばを通った通行人の6割が立ち止まって同じ方向を見上げ、5人以上のサクラがビルを見上げた場合には、8割もの人が立ち止まって、同じ方向を見上げたという結果が出たそうです。
このようなことは、私たちもよく経験することですね。
今年の2月に銀座へ訪れた際の話ですが、数人の人が通りの反対側の店を見ています。何だろうと、私も思わずその方向を見ました。
そこには、春節で日本を訪れた大勢の中国の買物客で、ごった返している店がありました。
朝市でも同じようなことがあります。
行列ができているのを見て、何の行列か分からずに、とりあえず並んで前の人に「何の行列ですか?」と聞いても、その人も分からない、こんなこともよくある話ですね。
人込みは同調行動効果と活性化効果という2つの効果をもたらす
なぜ人込みは、更なる人込みを生み出すのでしょうか?
実は、人込みは、皆と同じ行動を促す「同調行動効果」と、その場に活気のある雰囲気をもたらす「活性化効果」をもたらす作用があります。
コンビニの雑誌売場は通りに面した場所にあり、店内で雑誌を立ち読みしている人が外から見えますね。
これは、店の前を通った人の入店を促す「同調行動効果」と店に活気を出すために「活性化効果」を狙っているためだと言われています。
また、外から店内が見えるレストランでは、窓際から座ってもらうようにお客様をご案内します。
これも、人込みが持つ2つの効果を狙ったものです。
ドン・キホーテでは、間接的な「同調行動効果」を狙っています。
山積みの商品の一角を減らしておくと、「それなら私も」という「同調行動効果」を誘引して、思わず手にとってしまいます。
ネットを見ると、「この商品を買って良かった」「このセミナーを受けて良かった」という体験談が出ています。
インターネットで「同調行動効果」を狙うには、1人や2人の体験談でなく、8人以上の体験談を載せると効果があると言われています。
店先で肉を焼くヤキトリ屋が狙うのはシズル感
残業の帰りに、同僚と駅に向かっていると、店先でウチワをバタバタさせながらヤキトリを焼いています。
ヤキトリの良い匂いが漂ってきます。
こうなると、もうだめですね。「ちょっと軽く一杯飲っていくか」ということになります。
ところが、店の奥でヤキトリを焼いていたら、こうはいきません。
やはり、動きが見えること、臨場感が感じられること、これが「行動誘引効果」を生み出します。
動きや臨場感のことを「シズル感」と言います。
ちなみに「シズル感」は元々、ステーキをジュージュー焼く音のことを指していた言葉を指すものです。
暇な喫茶店でも店員にある行動を取らせると活性化効果が生まれる
ある喫茶店で聞いた話です。
客がいなくて暇なときは、「ボーっと立っているのではなく、テーブルやコーヒーカップを拭いていなさい」と従業員に指導しているのだそうです。
このように、何かしら動いていると店内に活気が出て、お客様が入ってくるそうです。
先述の朝市でも、同じ活性化効果が見いだせます。
お客様に試飲・試食してもらっている店と、実際にその場で商品を調理している店とでは、お客様の寄り付きがまったく違います。
チラシやネットの写真でも、ただ店主の笑顔を載せるのではなく、店主が実際に、料理や物を作っている、動きのある写真を載せると効果がかなり違ってきます。
「人込み効果と動きの効果」は、様々な場面で応用できます。ぜひ試してみてください。