商品に3つの選択肢があるときに、マクドナルドのポテトは「Mサイズ」が一番売れて、牛丼チェーンでは、牛丼「並盛り」が一番売れるのが常識です。人が無意識に消費行動において中庸を選ぶことは「ゴルディロックス効果」と呼ばれています。ところがネットでは、この効果が通用しません。何故でしょうか?理由を解説いたします。
消費者は価格帯の中間を選びやすい性向を持つ
こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。
今回は、ネットでの購買行動はリアルなそれとは異なり、売り手側の誘導が効きにくい、ということをお話ししたいと思います。
あなたは「ゴルディロックス効果」という表現を聞いたことがありますか。日本では「松竹梅効果」とわかりやすく言われることもあります。
飲食店のメニュー、例えばウナギ専門店では、たいてい「松」「竹」「梅」の3つの価格帯のメニューが並んでいることが多いですね。
価格的には、松は3,500円、竹は3,000円、梅は2,000円といったところでしょうか。
私たちは、このように3つの異なる商品を提示されると、多くの人が「竹」、すなわち真ん中のものを選ぶことがわかっています。
消費者の心理をのぞいてみると、3つのメニューを見比べてみて、「松はちょっと高いなあ、でも梅だとなんか物足りない気がする、真ん中の竹にするか」といったところでしょう。
この心理的効果が「ゴルディロックス効果」と呼ばれるものです。
ウェブではゴルディロックス効果が通じにくい
さて、ここでもし、「松」のメニューがなく、「竹」と「梅」だったらどうなると思いますか。
2種類のメニューを提示された場合、安いほうを選ぶ人も多くなります。すると、全体としては顧客単価の低下を招いてしまいます。
売り手としては、できるだけ顧客単価を引き上げたいわけですから、「3つの価格帯を提示されたら中間の商品を選ぶ人が多くなる」という人の心理傾向=「ゴルディロックス効果」が、リアル店舗での商売には活用されています。
例をあげれば、マクドナルドのポテト「Mサイズ」推し、牛丼チェーン店各社の牛丼「並盛り」推し、などは皆さんもよく認識されていると思いますが、これらは「ゴルディロックス効果」の活用事例です。
ところが、オンラインショッピングでは、この「ゴルディロックス効果」が効きにくいことが、実験からわかってきました。
2012年に行われた実験では、被験者に対し、まずアマゾンのWebサイトで様々な機能、価格帯のカメラの詳細情報やレビューをチェックしてもらいました。
その後、欲しい消費を2つ、または3つに絞り込んだという前提で、被験者Aのグループには2つの商品を、Bグループには3つの商品を見せて、どの商品を購入するかを決めてもらったのです。
「ゴルディロックス効果」を考慮すると、3つの商品を提示されたAグループの場合、Bグループよりも真ん中の商品を選ぶ人が増えるはずです。
ところが、この実験ではそうはならず、「ゴルディロックス効果」は全く発揮されなかったのです。
ウェブでは消費者が商品判断の選択権を持つ
では、なぜ、ゴルディロックス効果は消えてしまったのでしょうか?
それは最初に、多様な機能、価格のカメラ情報に触れたことで、「カメラ」の選択において、ある程度、絶対的な評価が下せるようになったからだと思われます。
すなわち、価格が高かろうが、安かろうが、自分にとって最適と思われるものを選べるようになっていたというわけです。
売り手の立場で考えると、ネットショッピングにおいては、豊富な情報に簡単にアクセスできる消費者と対峙しています。
自社ECサイトで「ゴルディロックス効果」を活用したからといって、顧客単価を簡単に引き上げることはできないと、覚悟しておいたほうがよさそうです。
Photo credit: chidorian via Visualhunt / CC BY-SA