ラ・クーポンのように、割引率の高い仕組みは、一般に「グルーポン型」のクーポンビジネスとして知られています。彼らが顧客の購買意欲を掻き立てるために活用しているマーケティングは、心理学の「損失回避傾向」を応用したものです。ただし、利用方法を間違えると、顧客の信頼を失うため、包丁のように切れ味鋭いマーケティング手法と言えます。
楽天のグルーポン型ビジネスで不適切な表現
こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。
楽天クーポン株式会社は先月(5月)、ウェブサイト上で販売している「RaCoupon(ラ・クーポン)」(以下、ラ・クーポン)において、消費者の誤解を招く不適切な表示があったことを明らかにし、同社ホームページに謝罪文を掲載しました。
ラ・クーポンは、「事前購入型」の割引クーポンであり、各種製品や飲食・サービス等が、通常価格の3-5割引き前後で購入できるのが、サービスの売りとなっています。
こうした割引率の高い仕組みの先駆者は、米国生まれの「Groupon(グルーポン)」(以下、グルーポン)であり、一般に「グルーポン型」のクーポンとも呼ばれます。
私自身、主にレストランでの飲食に、ラ・クーポンやグルーポンを時々利用しています。
お得感が高いサービスとして個人的には満足度高いサービスです。
ラ・クーポンが狡猾に利用した損失回避傾向
さて、ラ・クーポンがどのように誤解を招く表示をしていたかと言えば、販売上限枚数(クーポン在庫枚数)よりも少ない枚数を「○○枚限定」とサイト上に表示していたようです。
そして、売れ行きの状況を見ながら、クーポン在庫枚数の範囲内で随時、限定枚数を変更していたというものです。
この「○○枚/個限定」という表示方法は、テレビ通販や、ECサイト、リアル店、また様々な販促チラシで頻繁に見かけるものですね。
表現自体は、消費者の「購買意欲」を喚起する効果が高い表現なので、多用されているわけです。
では、なぜ、この表現は買いたい気持ちを起こさせるのでしょうか。実は、これまでもご紹介してきた「損失回避傾向」にその理由があります。
人は、得をすることよりも、損をすることのほうが、より不愉快に感じる傾向が高いのです。端的に言うと、私たちは、「なるべく損したくない」という気持ちが強いということです。これが「損失回避傾向」です。
「○○枚/個限定」という表示は、売り切れてしまったら、もはや自分は買えないということを暗示しています。
買えなかったからといって実質的な損害を受けたわけではないですね。しかし、「すぐに買ったら、買えたかもしれない機会」を失った。すなわち「機会」を損失したというわけです。
適切な形で損失回避傾向を利用し価値を高めよ
人間にとっては「機会」でさえ、失うのはとても嫌なことなのです。
だから、「限定○○枚/個」という表示をみると「売り切れる前に買わなければ・・・」という感情を喚起し、たいして必要でもないものを購入してしまいがちになるのです。
ラ・クーポンの場合、おそらく在庫枚数は100枚あったとしても、限定性を高めるために最初は「限定20枚」などと表示していたのでしょう。
枚数が少なければ少ないほど、早く売り切れる可能性が高いため、「機会損失感」をあおることができるからです。
ラ・クーポンのような不適切な表示は消費者を欺く行為ですから現に慎むべきですが、伝える限定数が事実に基づいたものであれば、「○○枚/個限定」という表示方法は、人の損失回避傾向を利用した効果の高い販促方法です。
適切な形で採用をおすすめしたいと思います。
Photo credit: TAKA@P.P.R.S via Visualhunt.com / CC BY-SA