中小企業の経営者は、トッププレイヤーとして最前線に立っている場合が殆どであり、ヘタすれば、平社員の10〜20倍以上のタスクをこなしている場合も多いことでしょう。今にもマルチタスクに押し潰されそう、というよりもマルチタスクをこなしきれていないのが現実だったりします。どうすれば、マルチタスクをこなせるのか?解説していきます。
マルチタスクに押し潰される中小企業の経営者
研究職でもない限り、1つの仕事にずっと没頭できるという人は皆無でしょう。
中小企業の経営者ともなると、あっちやこっちから仕事が飛び込んでくることも日常茶飯事です。
自分自身が経営判断(人事・資金繰り)を下すことだけに集中できるならまだ良いのですが、多くの中小企業経営者さんは、トッププレイヤーとして最前線に立っている場合が殆どですから、ヘタすれば、平社員の10〜20倍以上のタスクをこなしているのが現実だったりします。
立ち上がったばかりの小さな会社で、自分が社員に比べて圧倒的に優秀なプレイヤーだったり、社員のモチベーションを維持すること(陣頭指揮で士気を上げる)等を考えると、これはやむを得ない場合もあります。
ところが、皆さんマルチタスクをやりきれず、アップアップということが多いはずです。
現代では多かれ少なかれ、経営者の誰もが複数のタスクを抱えており、マルチタスク(複数の業務)に対応する能力が、そのまま経営者の能力とまで言われています。
しかし、私が見ている限り、多くのアップアップで働いている経営者が、マルチタスクの対応方法について、勘違いをしていらっしゃいます。
今はそれでも良いのかもしれませんが、会社を継続・拡大させていこうとするなら、人間力に任せたそのやり方はいずれ失敗します。(そもそも企業は成長拡大なくして、持続することが不可能)
どうすれば押し寄せるマルチタスクに対して、しっかりと対応できる経営者となることが、可能になるでしょうか?
1つのタスクに取り掛かる時は他を遮断しよう
マルチタスクとは、文字通り複数のタスクが同時に存在している状態ですが、かといってそれらのタスクを同時にこなすことが必要なわけではありません。
そもそも私たちの脳は、複数のことを同時に処理することができるようになっていません。
同時に処理した方が速く処理できるようにに思いますが、実態としては同時に処理しようとすればするほど、処理時間はトータルで長くなってしまいます。
マルチタスクの正しい対処方法は、「1つ1つを確実に終わらせる」ということです。
ここでのポイントは”確実に”という部分です。
それを実現するためには、ひとまず1つのタスクに取りかかったのであれば、そのタスクに”だけ”集中することです。
タスクをこなしがら、別のタスクのことを考えてみたり、途中で中断して別のタスクに移ってみたりというのは絶対にやってはいけないことです。
中小企業の経営者の方はだいたいが忙しいので、社内にいると従業員から「ちょっといいですか?」と声をかけられることも多いかもしれません。
しかし、あなたがタスクに取りかかっている途中なのであれば、「今は手が離せないから後で話を聞かせて」とはっきり言わなければなりません。
社員に多少気を悪くされても、そこは割りきりましょう。
多数の経営舵取り(判断)を行う立場にある以上、一つ一つの判断に集中できなければ、彼らに対して、その場で答えてあげない以上に、いずれ大きな悪影響が及んでしまうからです。
聖徳太子の逸話は嘘だと思って1つずつこなせ
同時に複数のタスクがこなせる、というのは幻想に過ぎません。
どうあがいても私たちには脳は1つ、腕は2本しかないので、複数のことを同時にこなせるわけがありません。
聖徳太子は「7人の話を同時に聞いて、全てを解決した」と子供の頃に伝記で読みましたが、皆さんは聖徳太子の逸話をどう思いますか?
いわゆる豊聡耳の話です。
私は、少々ひねくれていたのかもしれませんが、子供心に「なんて胡散臭い話なんだ」と感じていました。
大人になってからひねくれ加減は更に増して、子供の頃に感じた「豊聡耳の胡散臭さ」が、いよいよ確信に変わっています。
あの逸話はただの伝承で、嘘だと思ったほうが良いです。同時に話を聞いていた人数が、数十年前は7人だったのが、現代は10人に変わって伝えられているくらいですから。
そもそも、聖徳太子のような逸話を、現代のスーパースター経営者さんの本で読んだことはありますか?ソフトバンクの孫さんでも、ファーストリテイリングの柳井さんでも、そんな逸話を彼らの本で見たことはありません。
彼らの仕事に対する取り組み方は逆で、マルチタスクがあったとしても、その場、その場で1つのタスクにフォーカスし、最適な解を出すことを意識している逸話ばかりです。
タスクが溜まりすぎて、にっちもさっちもいかなくなっている方々は、「タスクを同時にこなそうとして、結果としてタスクが処理しきれず、トータルの処理時間が長くなってしまっている」というパターンに陥っています。
タスクがたくさんある状態になると、焦りからかいくつものタスクに手をつけてしまいそうになりますが、結局は1つずつ終わらせていくしか対処法はありません。
忙しくなればなるほど、タスクが積み上がってくればくるほど、冷静に1つずつのタスクを確実に終わらせていくことを意識すること、これが業務効率化に向けた最初の1歩となります。