2015年の大きなニュースとして、日本マクドナルドホールディングスの不採算店舗の閉店、及び米マクドナルド本社の保有する株式の売却問題が、多数報道されています。マクドナルドの店舗が大量閉店することになった本質的な理由とは何か?マクドナルドが残した一等立地の店舗へこれから進出するのはどのような業態の企業か?エリアマーケティングのプロが解説いたします。
日本マクドナルド閉店店舗の行方を大胆に考察
2015年の大きなニュースとして、日本マクドナルドホールディングスの不採算店舗の閉店、及び米マクドナルド本社の保有する株式の売却問題が、多数報道されています。
実際に店舗で『マクドナルドの閉店ポスター』を見て、『不便さ』や『寂しさ』を感じる人も多いのではないでしょうか?
2015年12月期の連結決算は380億円の純損失と、2年連続の赤字となる見通しであり、回復の兆しはまだ見えないのが実情です。
更に米マクドナルド本社が保有株式のうち、約33%に及ぶ1,000億円程度を売却する計画が上がっていますが、現在の経営環境では買い手を見つけることも困難とのこと。
今後のマクドナルドの動きに注目されている方も多いと思いますが、今回はその閉店店舗の行方について考察したいと思います。
日本マクドナルドの閉店はなぜ起きたのか?
まず最初に、マクドナルドの店舗が大量閉店することになった理由を提示してまいります。
閉店理由1:家賃が売上に合わなくなった
日本マクドナルドの不採算店を年内100店舗目途に閉店を行う。そういったニュースが多数報道されています。
閉店する店舗の中には、駅前の一番立地にある店舗も多数含まれており、『あんな人通りの多いところにあるところが閉店するの?』と思われる方も多いと思いますが、大きな要素は『家賃』が『売上』に合わない、というのが実情でないかと思います。
つまり『不採算店舗』=『利益が取れない店舗』ということになります。
『閉店する店舗』を見ると、10年以上の店舗が多く含まれており、中には30年以上の店舗もあるのが実情です。
つまり、それまでは採算が取れていたが、ここ数年の間に採算が取れなくなってきたということが考えられます。家主との賃貸契約期間を閉店コストと天秤にかけた考慮もなされていることでしょう。
閉店理由2:『時代の変化』に合った商品を含めたマーケティング戦略ができていなかった
報道では、『使用期限切れ鶏肉問題と異物混入問題の発覚で、消費者からの信頼を失っている』とされる記事も多数がありますが、実際は、『引き金』であり、以前からイエローサインが出ていると私は思っております。
つまり、商品を含めたマーケティング戦略が『時代の変化』と合わなくなってきていることが大きな要因と考えております。
実際に、閉店するフランチャイズチェーンを含め、大手チェーンは多数あります。
勢いが衰えないコンビニエンスチェーンも年間で多くの閉店を行っております。
しかし、そのほとんどは、スクラップ&ビルドと呼ばれる閉店をした後に、商圏を引き継ぐ新店舗を展開させるという方式をとっているのが現状です。
そういった場合は、閉店する店舗の『時代の変化で歩行者や車の量が変わり、導線が変わってきた場合』や『駐車場の広さ』が合わなくなってきた場合に、『立地面』での問題を改善するため、新しい場所でリニューアルオープンが行われます。
しかし、今回のマクドナルドについては、閉鎖店舗の商圏は別の店舗が引き継ぐ形を主としており、俗に言う『単純閉店』というものになります。
立地ではなく、商品・価格・サービス・販路・販促といったマーケティング戦略の課題が浮き彫りになっており、将来見込めない店舗として閉店されるのです。
つまり日本マクドナルド本体として、『時代の変化』に対応したマーケティング戦略を模索している段階であり、直近で売上を改善することが困難であるとの判定の結果であると思います。
一等立地をめぐる跡地争いが激化する見込み
そうなると、『立地面』での問題はないわけですから、他の業態や飲食業界、競合するファストフードチェーンからすると、この『一等立地』は非常に魅力的なものとなります。
特に都心では『一等立地』はほぼ空いていないという状況の中ですので、家賃が高くても出店したいというのが実情であると思います。
お客様が店舗を認識する理由については、店舗+看板で約60%というデータが存在します。つまり一番立地にあることでチェーンの広告効果も望めるということになります。
例え、その場所の家賃が高く、利益が出なくても他店の利益でカバー出来るのであれば、出店する方が、広告効果やイメージ効果を鑑みると、プラスに発展すると考えるのです。
日本マクドナルドは、長く『若者』に人気で、『キッズマーケティング』により家族連れも多く来店されていました。近年では、パソコン用の電源施設も充実し、中心部で『カフェ店舗』的な役割も担うファストフード+カフェの併設店舗もありました。
そういった客層を取り込みたいチェーンにとっては、非常に好都合の立地であり、しかも一等立地。明確な出店調査と商圏調査を踏まえた立地選定を行った店舗は、今後も各社の跡地を巡った戦いが激化することが予測されます。
エリアマーケティングのプロが予測するマクドナルド閉鎖店舗の行方
1.マクドナルド店舗→ファストフードチェーン
現店舗をそのまま居抜き物件として活用ができ、内装費等は低コストで出店できるということで、ファーストフードチェーンも多数候補して上がっています。
既に同業界のファーストキッチンや、バーガーキング、それにカフェチェーン等が狙っているというニュースもあります。
マクドナルド本体としては、シェア争いの中で本意ではないでしょうが、閉店時には、現状回復をしなければならない契約が多く、閉店コストを考えると似通った業態の他ブランドに入ってもらうことで、お互いメリットのある話になるでしょう。
2.マクドナルド店舗→飲食チェーン
飲食チェーンも、マクドナルドの跡地に多数出店してくるものと考えられます。
防水設備やダクト、空調設備などの工事コストがかからない点は、飲食チェーンにも非常に好都合のようです。その点で大手飲食チェーンも出店が多数出店予想されます。
特に近年、大手の居抜き物件を出店対象としている飲食チェーンもある状況です。
3.マクドナルド店舗→ドラッグストアなどの小売業
大手のドラックストア等も、マクドナルド跡地への出店候補として挙がっているようです。
小売業は非常に立地特性が高いため、『一番立地』の路面店というのは、非常に魅力的な存在です。
また、客層が『若者』や『家族連れ』に指示されている立地は、小売業にとって非常に親和性が高いものと考えます。
100店以上の閉店店舗の跡地を巡って、様々な業種及び業態の競争が激しくなり、更に短期間での跡地交渉になることを考えると、一部の業種やチェーンだけが跡地に進出するのではなく、様々な業種が進出することになることが予測されます。
しかし、一番立地の家賃を考えると、小零細企業の出店は考えにくく、チェーン組織が出店を行うことが予測されます。
「時代の変化への対応力」が経営には必須
今回は、日本マクドナルドの閉店店舗の行方を考察する切り口でお話を致しましたが、いかに『時代の変化への対応』が重要であるかと考えさせるニュースでした。
どれだけ大手チェーンであったとしても、『時代の変化』に対応できなければ、撤退せざるを得ない時代であることの証明のようです。
『人口減少』『少子高齢化』『競争激化』『消費飽和』等、企業側として2016年も課題は山積みではありますが、『時代の変化』に併せたマーケティング戦略を立案することが重要になります。
『時代の変化』は『ビックデータ』を活用するだけでなく、『消費者目線・消費者心理』が欠かせないものです。
2016年の年頭に当たり、再度『時代の変化』を検証し、自社の『マーケティング戦略』に変革を起こす必要があると考えます。
Photo credit: pika1935 via Visual Hunt / CC BY
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販路企画
田口勝
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