今や全国どこの街に行っても必ずあるのがコンビニエンスストアです。コンビニエンスストアのオーナーとなるきっかけは人それぞれですが、もしコンビニエンスストアの経営を行うのであれば、メリットとデメリットをそれぞれ把握しておくことは得策です。膨大なノウハウが蓄積され、初期投資も少なく始めやすいコンビニですが、フランチャイズ本部との契約には注意が必要となります。
コンビニ加盟を考えるきっかけは人それぞれ
コンビニ経営は、どういうきっかけで始まるのでしょうか。
私がコンビニ本部の店長研修を担当していた際、多くのオーナーや店長候補者と接する機会がありました。
研修を進めていく中で、コンビニ加盟のきっかけをインタビューしたのですが、
- 「もともと小さなスーパーをやっていたが、近くに出店したコンビニにどうしても勝てない。それが、加盟を考えるきっかけになった」
- 「前から自分でコンビニ経営をやってみたかった」
- 「コンビニは経営に必要なノウハウがだいたい揃っているので、始めやすいと思った」
- 「本業が別にある会社だが、事業の一つとして展開を行うことになった」
など、様々な話が寄せられました。
どの話を聞いてもワクワクしましたが、同時にそのワクワクを持って加盟されたのであれば、そのワクワクを長い間継続してほしいと思い、研修では可能な限りリアルな経営の姿をお伝えしていたことを覚えています。
コンビニ・フランチャイズの特徴
コンビニ・フランチャイズの仕組みは、ここでは詳細を言及することは控えますが、図のような関係です。
本部が加盟店に対してノウハウを提供し、加盟店はロイヤリティー(フィー)を支払うことで、ノウハウを活かした事業ができる仕組みとなっています。
もちろん、加盟するチェーンによって、特色や注意事項はありますが、コンビニ加盟のメリット(最大限に活かせる点)とデメリット(事前に注意・確認すべきポイント)について、本稿ではまとめてみたいと思います。
コンビニ経営がやりたくなる4つのメリット
コンビニの経営を行うメリットは、以下のとおり4つになります。
1)本部のノウハウが確立している
コンビニは、数あるフランチャイズビジネスの中でも、仕組みがしっかりした業態です。
レジや発注端末をはじめとした最先端の機器、システムを活用した運営ノウハウで、運営マニュアルも作られているため、一からビジネスを始めるよりも格段に早く本業に専念できます。
2)チェーンブランドやスケールメリットを生かせる
一からオリジナルブランドを立ち上げようとすると、まずは知ってもらうところから始まりますが、すでに何十年も続いているコンビニチェーンの看板は多くの人に知れ渡っています。
そのため、宣伝費を別でかけることなく、事業を始められます。
また、直営店や先に開店している加盟店のノウハウも本部にかなり蓄積されているため、事業戦略が比較的立てやすいのも魅力です。
そして、商品の発注から納品もシステム化されており、一定の店舗数を抱えるコンビニチェーンでは、メーカーとの仕入れ価格の交渉を本部が行い、通常よりも安く仕入れられたり(期間条件が付くこともあります)、新商品やオリジナル商品の導入もしやすかったりします。
3)加盟形態が選べる
コンビニビジネスが始まった直後は、もともと酒屋や小さな食料品店を営んでいた方がコンビニに転換することがほとんどでした。
しかし現在は、これまで小売の経験がなかった方でも加盟しやすくなっています。
コンビニの契約形態は、次のように大きく分けて2つあります。
チェーンによってはより細かく分けられている場合もありますが、現状と照らし合わせて、選ぶことができます。
本部が土地、建物を用意する加盟タイプができてから、コンビニの店舗数は一気に拡大しました。
というのも、このタイプは本部の立地調査によってある程度見込みのある店舗で事業をスタートできるうえに、加盟時に準備する金額が、500万円程度で済むからです。
もちろん、本来加盟者が用意するものを本部が代わりに用意することから、加盟後に本部へ支払うフィー率がやや高めに設定されますが、一気にコンビニ事業が身近になったのは間違いないでしょう。
4)決算書類もしっかりしている
コンビニの数値管理は、すべてPOSというシステムによって行われます。
POSは加盟店と本部でつながっていることから、本部を通して会計処理ができるものが多くあります。
経営上必要なもので、多くの店舗で採用されるものについては、あらかじめレジやストアコントローラ(ストアコンピュータ)に登録するだけで、データが本部に転送されます。
その後、毎月出される決算書類に反映されるため、損益計算書や貸借対照表など、必要な決算書類がきちんとした形で、定期的に発行されるので、数字が苦手でつい経理処理を後回しにしてしまう方にとっても、安心です。
コンビニ経営で注意すべき4つのデメリット
さて、メリットがあれば、もちろんデメリットもあります。
デメリットは、フランチャイズ契約上のルールとも取れますので、加盟前にはしっかりと本部に話を聞き、不明点は確認を取りましょう。
1)自分の裁量でできる範囲には限りがある
例えば、商品の発注や販売について、本部が推奨している登録商品は何も問題がないのですが、独自で開発、あるいは仕入れた商品を販売する際には注意が必要です。
絶対にできない、ということではないのですが、事前に本部への確認、承認が必要となります。その他にも、それらはすべて、ブランドイメージを維持、統一するために必要な行動と言えます。
2)膨大なノウハウゆえに、秘密保持義務も厳しい
当たり前の話ではありますが、事業上得た秘密は、外部に漏らすことは許されません。
コンビニを運営していると、特に新しい商品やサービスの情報を、一般告知前に知ることが多くなります。
それは本部がメーカーや関連企業と一定の約束を交わした上で、加盟店に共有しているものですので、決められたタイミングやルールに則って、加盟店も情報をコントロールする必要があります。
また、守るのはオーナーだけではありません。店舗で働くスタッフも同様です。そのためのスタッフ育成もとても重要となります。
3)契約途中での事業終了に制限がある
コンビニの加盟契約期間は、一般的に7年から10年の縛りがつけられています。
この期間は決して短いものではありません。
契約期間中であっても、経営を続けることが難しくなることも多々出てくることでしょう。だからと言って、途中で解約することは簡単にはできなくなっています。
もちろん、オーナー個人の事情もあるのは承知の上ですが、本部の事業運営上の都合はもとより、大家との都合もあります。
コンビニを一店舗開くのに、多くの方が関わっている、ということを意識して、加盟するかどうかを検討された方がいいでしょう。
もし、このあたりで不安要素がある場合は、加盟前に本部にしっかり確認をとることをお勧めします。
4)加盟店指導員のスキル差がある場合がある
コンビニは先述のように、店舗数が爆発的に拡大し、現在も伸び続けています。
そのため、本部も多くの加盟店指導員を配置していますが、最近、そのスキル差が見られるようになってきました。
もちろん、ちょっとした個人差や特徴、得意不得意は人が違えばあるものですが、本当はあってはならないレベルでのスキル差が生まれていることも事実です。
指導員は加盟後から加盟終了まで一定ではなく、指導員の異動、本部の組織再編などにより、変わることも十分あり得ます。
もし、スキルに課題が残る指導員が皆さんの前に現れても、根気よく関わっていくことも大切です。
おわりに
以上、コンビニ経営のメリットとデメリットについて見てきました。
やはりフランチャイズという業態上、制限こそありますが、メリットを有効に活用すれば、複数店経営や同じ立場であるオーナーへのサポートなど、事業として展開させていくことも十分可能です。
ぜひ、無料の説明会や相談会に参加するなどして十分に検討した上で、「自分に合ってそうだ!」と思われたら、ぜひ積極的に事業に関わってみてください。
戦略的に取り組み、スタッフ育成にも注力していくことで、リピーターとなってくださるお客さまとの関係も構築しやすいので、とても面白い経験がたくさんできますよ!
=============================
(社)東京都中小企業診断士協会 フランチャイズ研究会所属
社会保険労務士法人プレミアパートナーズ
安 紗弥香
=============================