終活とは、誰しもが迎える人生の終わりに対して、前もってポジティブな準備を行うことです。終活の代表的な活動の1つが、エンディングノートを作成することです。
ところがエンディングノートと遺言を混同されている方も中にはいらっしゃいます。
そこでそれぞれが有する9つの特徴、4つの共通点から見える相互活用法もプロが解説してくれます。
人生の終わりを前向きに捉える「終活」とは
ここ最近「終活(しゅうかつ)」という言葉が、盛んにメディアで取り上げられているのを皆さんもご存知のことと思います。
終活とは、誰しもが迎える人生の終わりに対して、前もってポジティブな準備を行うことで、これからの人生を更に前向きに生きる一連の活動をいいます。
右肩上りの経済成長の時代が終わり、子供や孫達の行く末を考えれば、少しでも良い状態でいのちのバトンを渡してあげたいと考える人が増えており、終活が盛んに行われる要因となっています。
私の元にも多くの経営者さんから、自分が大変な思いをされながら今を築いてきた分、終活の相談が舞い込んできます。
エンディングノートと遺言を混同する人は多い
終活の代表的な活動の1つが、エンディングノートを作成することです。
どこの本屋さんに行っても、今やエンディングノートが必ず数冊は並んでいます。
市販されているエンディングノートは、思い出の欄、家系図の欄、不動産目録、預貯金目録、証券目録、自己決定(終末医療など)などの欄があって、そこに自分なりに書き込みをする本やノートになっています。
確かにエンディングノートは、自分のこれまでを整理するのにお勧めなのですが、遺言とは性質が全く違うものであるため、使い分けが大切です。
エンディングノートと遺言を混同されている方も中にはいらっしゃいます。
そこで本稿では、少しエンディングノートと遺言について整理してみます。
エンディングノートと遺言が持つ9つの特徴
まずはエンディングノートと、遺言の特徴を、それぞれ9つずつ提示いたします。
1.エンディングノート
- 法的効果はほぼ0
- 気軽に書きはじめることができる
- 気軽に訂正ができる
- 気軽にやめることができる
- 費用がかからない
- ノートの存在が誰にも気付かれないかも知れない
- 書いたとおりになるかどうかわからない
- 誰にも知られず秘密にしておくことができる
- 思い出や収納場所などの細々したことまで書くことができる
2.遺言(民法で規定のあるもの)
- 法的効果が認められる
- 気軽に書けない(様式が厳格)
- 気軽に訂正ができる
- 気軽に訂正できない(訂正の方法が法定)
- 気軽にやめることができない(新たな遺言など)
- 費用がかかる(自筆証書遺言以外の場合、以下同じ)
- 遺言執行者を決めれば遺言内容を実現してもらえる
- 遺言と聞くと気が重くなる
- 公正証書遺言でも付言事項で気持ちを残すことができる
エンディングノートと遺言 4つの共通点
前述のとおり、両者の違いは概ね法的効力の違いに現れますが、実は共通点もあります。
共通点は、以下のとおりです。
- 残すだけではダメ
- 書きはじめはやはり気が重い
- 信頼できる人に託す
- 両方とも重要な秘密
それぞれ噛み砕いてご説明しましょう。
1)残すだけではダメ
書いただけではその内容が実現されるかどうかわかりませんので、その内容を実現してくれる人が必要になります。子供などの親族をその内容に沿って説得したり納得させたりすることを、常日頃からしておくことがとても大切なのです。
2)書きはじめはやはり気が重い
書きはじめはやはり気が重いのは誰でも同じです。エンディングノートも遺言も両方とも同じですね。ですが、この点では思い出を中心に書くつもりではじめると、エンディングノートは始めやすいですね。
3)信頼できる人に託す
信頼できる人に託すことは大切です。遺言なら遺言執行者に、エンディングノートなら責任感のある親族に託したり、内容や保管場所を伝えておくことが大切です。
4)両方とも重要な秘密
遺言や財産に関する事項を詳細に記したエンディングノートは、遺言同様にとても重要な秘密です。
エンディングノートは法律効果が生じないので、やはり遺言の方が大切なのですが、両方あればそれぞれのない部分をカバーできます。
または遺言をエンディングノートに近づけて、公正証書遺言の付言事項を充実させる方法もお勧めいたします。