従業員が順調に増え、事業も軌道に乗り始めた経営者に見られる特有の悩み、それは「社員との距離が遠くなり危機感や目標を共有できない」ことである。大きな原因の1つは「お金の流れを共有していないこと」を要因とした「意識のズレとギャップ」だ。経営者が社員に段階を踏んで大きなお金の流れを学ばせる「全員参加型経営」を解決策としてお奨めする。
会社がうまくいくほど社員と距離が遠くなる
中小企業の経営者、特に1)最近社員数が順調に増えてきて、2)事業も軌道に乗り始めた、経営者によく見られるお悩みがあります。
それは「企業規模が拡大し軌道に乗るほど、社員との距離が遠くなり危機感や目標を共有できない」ことです。
いわゆる家族経営から企業への脱却を図るとき、又はもう既にその段階に到達し数年経過している経営者も、皆同じような悩みを抱えています。
家族経営の時代は、経営者と社員がいわゆる「あうんの呼吸」で経営に取組めました。
あうんの呼吸が成り立っていた時は、
- 経営者が会社の向かうべき方向を示すと社員が一致団結して進んでいけた。
- 経営者が売上目標を示すと、無条件でその目標に向かって突き進めた。
という状態で事業が行えていたことでしょう。たとえ今よりお金に余裕が無くとも。
それこそが家族経営の強みであり、経営者は会社を伸ばすために自分の本業に突き進めたわけです。
意識のズレはお金に関する理解の差異が理由
しかし、最近は何故か違う・・・
経営者が方向性を示しても、何故か社員に伝わっていない。社員から「事業を前進させるために必要な熱さ」が感じられない。
経営者が売上目標を示しても、「何故この売り上げを達成しなければいけないんだろう。達成したら何か良いことあるのかな??」そんな気持ちが社員の中にはあるのではないでしょうか??
- 「売上目標を達成しても、会社が儲かるだけ・・・」
- 「自分には特に何にもメリットがないなぁ・・・」
こんな社員同士のヒソヒソ話さえ経営者の耳に入ってくるかもしれません。
それに対して経営者も応戦するかのように、
- 「うちの社員は、なぜ危機感が足りないんだろう・・・」
- 「もっと経営者意識、採算意識を持って欲しいなぁ・・・」
- 「会社の利益は全部自分が取ってるわけではないのになぜそんなこと位分かってくれないのか?」
と考えてしまいます。
これこそが、中小企業の(もしかしたら中小企業に限らないかも知れませんが)経営者が抱える大きな悩み、つまり「経営者と社員の立場の違いからくる危機感のズレ、ギャップ」です。
立場の違いから生じる意識のズレを完全に埋めることは、確かに難しいかも知れません。
しかし、少しでもこのズレを埋めることは不可能ではないはずです。特に中小企業の場合は。
おすすめの良い手立ては「会社の大きなお金の流れを共有すること」です。
これを実践するために、まず経営者は最低限「会社のお金の流れ」を理解する必要があります。
そういう話をすると、「決算書を読めるようにならなきゃ!!」と思う経営者の方も多いかもしれませんが、決して経営者は完璧に決算書を読みこなす必要はありません。
経営者は信頼できる専門家の力を借りて、自分に必要な経営数字を抜き出してもらい必要な判断を行えば良いのです。
ではなぜ経営者がまずお金の流れを理解する必要があるかと言えば、自分が理解することで、社員にも簡単な会社のお金の流れを理解してもらえるよう、自らの言葉で説明が可能になるからです。
必ずしも最初の段階から会社の決算書から具体的な数字を抜き出して、会社の経営状態を全てオープンにすることもないでしょう。
あくまでも会社のお金の流れを理解してもらうことが先決です。
少しずつ学ばせ全員参加型経営を実践しよう
- 自分のお給料はどこから出てくるのか?
- 自分のお給料を上げるにはどんな働きが自分には必要か?
- 会社の利益は必ずしも経営者の懐に入っているわけではない。
- 会社が利益を追求しなければいけない理由。
この様な事を少しずつ社員に学んで頂くことによって、少しずつ「経営者意識、採算意識」を持って頂くことは、意識のズレを防ぐために非常に効果的です。
ポイントは、あくまでも少しずつです。
このような手法を私は「全員参加型経営」と呼んでいます。
そして、この「全員参加型経営」は中小企業こそが導入しやすいはずです。
なぜなら多くの中小企業では、経営者と社員が連日顔を合わせているため、情報共有のコミュニケーションが取りやすいからです。
中小企業様でこそ真価を発揮する「全員参加型経営」の導入を、ぜひお勧め致します。