一斗缶に詰めたポテトチップスのプレゼントで話題を呼んだ湖池屋が、もも味とバナナ味のポテトチップスを発売開始し、またもその奇抜な戦略に話題が集まっている。湖池屋が仕掛ける業界二番手としての水平的な差別化戦略は、一般化が進んだ業界では極めて有効な手法の1つである。カラムーチョなどで見せたチャレンジ文化も後押しとなる。
奇抜なキャンペーンを仕掛け続ける湖池屋
スナック菓子メーカー湖池屋の仕掛けた「伝説の一斗缶ポテチ」という、創業当時の販売形態を再現し、消費者へプレゼントするキャンペーンが、史上稀に見る消費者の応募を集め大成功を収めている。
そんな湖池屋がまたもや奇抜な戦略を仕掛けている。
ポテトチップスのもも味とバナナ味を、5月18日(月)から全国で発売開始するのだ。
事前評価によるとこのポテトチップス、しっかり桃とバナナの味わいを再現しているという。
販売に併せて湖池屋は「栄養と満足を手軽に取れる“朝ポテチ”習慣を朝食マーケットに広げ、“ポテトチップス”をパン・米・グラノーラに次ぐ“第4の朝食”として育てていきます。」と声明を発表している。
これら一見奇抜に見える商品開発やキャンペーンから見える、湖池屋の戦略を以下考察したい。
湖池屋が仕掛ける業界二番手の差別化戦略
日本のポテトチップス業界は、カルビーが3分の2以上のシェア(約67%)を占める寡占業界だ。湖池屋は業界第2位に甘んじている。
しかし湖池屋にチャレンジできて、カルビーにとっては取り組みにくい戦略がある。
差別化戦略だ。
差別化戦略とは、アメリカの経営学者マイケル・ポーターによって提唱された、同業他社との差別化を図るために付加価値を実現し、競争を優位にする戦略のことを言う。
差別化戦略はコモディティ化(一般化)が進んだ業界で有効な手法であり、アプローチには以下2つの戦略がある。
- 1)品質による垂直的差別化: 薬の有効成分が他よりも配合率が高い、電池が3倍長持ちするなど製品自体が差別化されている
- 2)水平的差別化 :同じ洋服デザインでも色のバラエティを増やす、など消費者個々の好みに合わせ多様化することで差別化を図る戦略
ポテトチップスは今やコモディティ化が進んでおり、希少性やサービスによって差別化するのは難しい。
差別化は行き過ぎると、製品としての機能を損なうケースが生じリスクが高いため、シェアを維持しなければならない業界一番手の企業は取り組みにくい。
しかし差別化戦略の成功は、市場の活性化、新しい価値の創造によるユニークな地位構築につながり、二番手にとっては大きなチャンスとなる。
湖池屋のもも・バナナ味ポテトチップスの販売は、ポテトチップスに従来なかった「甘い」という概念のバラエティを持たせる、水平的差別化展開と言えよう。
湖池屋には既に水平的差別化成功の歴史あり
湖池屋は既に差別化戦略で幾つかの成功を上げている。
1984年に発売された「カラムーチョ」と1993年に発売された「すっぱムーチョ」の大ヒットである。
業界に従来なかった「激辛」「酸っぱい」といった味覚をポテトチップスへ定着させ、商品の販売は既に30年を超えている。
偶然でこれらのヒットは生まれない。
湖池屋の企業理念には、
- 2 独創的で心の満足度の高い商品、サービスを提供する。
- 3 独自のブランド戦略の元に、ロングセラー商品を育成していく。
とある。
徹底的にブランドの差別化を意識した理念の元に、的確な市場リサーチ、チャレンジがあってこそ、湖池屋は奇抜な戦略でもヒットを生み出せているのだ。
ポテトチップスのもも味とバナナ味は本日発売だ。一度食してみてはいかがだろうか?