2014年5月に成立した「改正都市再生特別法」は、日本の未来が”都市集約型”社会となることを決定づけた。日本は2011年より既に”人口減少社会”に突入しており、税金で維持していた行政サービスや社会的なインフラがなくなる場所の不動産価値は、今後大幅に減額される。東京都であっても場所によってはその価値に格差が生じるとみられる。
改正都市再生特別法が示す日本のこれから
関西の中核都市・尼崎市に在住する筆者が郊外を歩くと最近目につく現象、それは”主を失った空き家の多さ”である。
雨戸がきっちり締められ、あるいはポストにガムテープが貼られ、中には植物が生い茂っている家というのも多くなっている。
それもそのはず、尼崎市の人口は1970年の55.3万人超を頂点に、2015年2月時点で44.6万人まで減少している。
話変わり、2014年5月に「改正都市再生特別法」が成立した。
改正都市再生特別法の内容は、特に人口の減少が激しい地方都市を対象として、医療・福祉・商業などの人が集まる施設を都市の”中心部”に集めるものだ。
政府は今後改正法を基準として、電車やバスなどの公共交通手段の整備を行い、住みやすい地方都市作りや地方自治体の生き残りを促す。
この改正法は裏を返せば、日本の未来が”都市集約型”社会となることを決定づけた。
関西の場合は、大阪、神戸、京都など政令指定都市のアクセスが良い場所に、サービスの一極集中が始まることを意味する。
人口減少社会が地方の不動産価値を落とす
日本は2011年より既に”人口減少社会”に突入している。
一部では「過疎化する地方で古民家をリノベーション(リフォーム)して、田舎暮らしをする」潮流も見られるが、人口減少の歯止めとはなっていない。
若い男女が仕事を求めて首都圏へ流出することで、少子高齢化が進む悪循環が進んでいるのだ。
それを如実に示すデータが2月に総務省が発表した、全国都道府県別の人口推計である。
”人口が増えた”都府県は7つのみで、それ以外の40道府県では、人口が減っている。
例えば人口減少率1位の秋田県の人口は、減少率1.26%の約108万人という結果となった。このまま行くと秋田県の人口は毎年12,600人ずつ減少していき、減少率のパーセンテージが上がればさらに減少数も増える。
規模の小さな市町村で、人口の減少が行政に与える影響はとても大きい。減収のインパクトが大きくなるのに、既に作ってしまった箱モノ(利用者数の少ない赤字の病院、市役所、学校など)が残るからだ。
それもいずれ維持できなくなり、当たり前の行政サービスや社会的なインフラがなくなった地域は最終的に消滅する。
日本創成会議が発表した未来の人口推計を見ても、現在全国にある1800市区町村の半分が2040年には消滅することが予測されている。
不動産価格は「対象不動産が将来生み出すであろうと予測される純収益の現在価値の総和を求めることによって」※1算出される。
地域の利便性がなくなることにより、収益を生み出すことが将来見込まれない土地の価格は、最悪ゼロになる可能性が高い。
首都圏でも不動産価値に格差が生じていく
地方の人口減少ばかりに目が向きやすいが、三大都市圏にとっても人口減少はもはや対岸の火事ではない。
先述の総務省による人口推計では、東京は人口増0.68%となったが、神奈川県は0.19%に留まり、大阪に至っては0.15%の減少となった。
更に東京都の土地価格相場も、地域ごとに見ると上昇が既に鈍化している地域もある。中野区や北区の一部や国立市や狛江市など、比較的郊外にあり電車を利用するには不便な土地だ。
資産価値を維持し続ける不動産が、都心の限られた場所のみになっていくことは確実である。
参照元
※1 不動産の鑑定評価に関する法律「収益還元法」より