「銀座ルノアール」はれっきとした上場企業であり、今季は業績も大幅な増益予想となっている。一見地味に見える店舗だが、店舗内で過ごす顧客は提供される「自由な時間と空間」をとても快適に感じている熱狂的なファンが多い。コーヒーそのものだけでなく、戦う場所を「時間・空間」に変えるルノアールのブルーオーシャン戦略から学べることは多い。
目下業績絶好調 銀座ルノアールは増益予想
東京近郊で80店舗超を運営するコーヒーショップ「喫茶室・銀座ルノアール(以下ルノアール)」のことを、読者の皆様はご存知だろうか?
コーヒー1杯が500円以上と値段も高く、そもそも500円以下のメニューがない。
店舗の入り口もひなびており、内装も洒落っ気なく地味で、どんな人が利用するのだろうと考える方も多いはずだが、ルノアールはれっきとした上場企業で、目下業績も絶好調である。
今年度の業績も、売上高は前期比9.2%増の73.98億円、営業利益で同30.4%増の5.18億円、経常利益で同23.5%増の5.54億円、当期純利益で同50.5%増の2.71億円と2ケタ増益の予想となっている。
なぜルノアールは業績を伸ばしているのだろうか?
ルノアールは喫茶店ではなく喫茶室である
ルノアールの店舗に行くと、一般的なカフェや喫茶店では見られない、客が思いおもいの過ごし方をしている光景が広がる。
良く見かける客の代表的な過ごし方を例示しよう。
- 店の電源を勝手に取り、数時間は平気でパソコンにかじりつく人
- コーヒーを一口飲んだら、閉店で起こされるまで寝て過ごす人
- コーヒーを飲み終わった後、無料のお茶だけで何時間も過ごす人
- ホワイトボードを広げ、ビジネスについて熱弁する人
もうお気づきの通り、銀座ルノアールはコーヒーだけを販売しているのではない。コーヒーを飲んで休憩や打ち合わせを自由に行える「時間と空間」もセットにして販売しているのだ。
それを理解する顧客は、熱烈なリピーターとなり店舗に足繁く通う。
単価が高い商品をリピート購入する顧客が多数いることが、ルノアールにとって最大の強みとなり、好業績へ繋がっているのだ。
「時間と空間」をサービスとして提供するスタンスは、ルノアール自体が、自らを「喫茶店」ではなく「喫茶室」と名乗ることにも如実に現れている。
ルノアールはブルーオーシャン戦略の体現者
外資のスターバックス、タリーズ、ドトールにサンマルクカフェを巻き込んだカフェ戦争は、ますます熾烈を極めている。
大手カフェの大半が、商品そのものでしのぎをけずり、客の回転率を高めることに躍起なのに対して、規模の小さいルノアールが商品だけで勝負を挑んでも負けは見えている。
ルノアールはカフェ戦争を避けて「コーヒー1杯だけではなく、2時間快適に居座れる場所に500円を支払う」顧客をターゲットにすることで、「時間と空間」を提供する漫画喫茶に圧倒的な価格優位性を持ち、大手カフェが手を付けたくない「回転率の無視」という壁を作り、独自の市場へ戦いの場所を変えている。
ルノアールは競争のない未開拓市場を切り開く「ブルーオーシャン戦略」の体現者なのだ。
ぜひ一度ルノアールの店舗へ行き、ゆっくりとした時間を体験しながら、自社にとってのブルーオーシャンがどこにあるのか、しばし思いを巡らせてみてはいかがだろうか?