資金・技術・販売面で自力が乏しいために、多くの中小企業がアイデアを実現できず飛躍のチャンスを逃している。かたや大学等研究機関は特許やノウハウを有効活用しきれず、宝の持ち腐れを起こしている。産学お互いの悩みを解消するために、技術・補助金の提供や販路開拓まで総合的に支援してくれる制度が、シーズ活用研究開発事業である。
シーズ活用研究開発事業制度の目的とは?
資金・技術・販売面で自力が乏しいために、多くの中小企業がアイデアを実現できず飛躍のチャンスを逃している。
かたや大学等研究機関(以下/大学)では、研究成果をもとにしたシーズ(研究開発や新規事業創出を推進していく上で必要となる発明や能力、人材、設備など)があっても、生み出された特許・ノウハウの活用が十分に進んでいない。
また日本の大学が出願している特許の多くは大企業に供給されているが、技術シーズの大部分は活用されずに、大企業内で眠っている。
中小企業と大学はニーズが合致しているのに、まだ十分にマッチングできていないのが現状なのだ。
ただし中小企業に対してTLO(産学連携期間)や自治体等が、大学とマッチングしてくれるだけで事業が成功する確率は低い。
大学の特許・ノウハウを利用して事業化するためには、研究開発、ビジネスプランの構築、マーケティング、資金調達、販路開拓に対する総合的な支援が必要だ。
経済産業省はこれら中小企業や大学等の要請に応じるために、「シーズ活用研究開発事業」制度を設けている。
「シーズ活用研究開発事業」とは、中小企業・小規模事業者による大学発の技術シーズを活用したプロジェクトに対して、国が補助金を支給し、研究開発および販路開拓の支援を行ってくれる優れた制度である。
以下、取得要件を提示する。
制度の概要と具体的に申請可能な補助要件
「シーズ活用研究開発事業」による補助金と産学連携支援を受けるには、以下の要件を満たす必要がある
- 1)補助事業終了後、2年以内に事業化に結びつく研究開発、販路開拓であること
- 2)日本の競争力を支える「中小ものづくり高度化法12分野」いずれかに該当する技術を活用した事業であること
- 3)「大学発の技術シーズ」について開発者等からの技術支援を受ける体制があること
- 4)公序良俗違反その他経済産業省が認めない事業でないこと
その他資本金が中小企業と経済産業省が認める範囲内であり選考に受かれば、以下のような援助を受けられる。
1)産学連携マッチング
経済産業省から、自社のニーズにマッチングする大学等研究機関を紹介してもらえる。連携方法はライセンス契約や共同研究契約など、様々な形で行える。
2)補助金の支給
事業化に必要な経費の2分の1以内から3分の1以内(事業内容により変わる)で、以下の範囲の補助金を受け取れる。
- 1年目(平成27年度):300万円以上2,000万円以下
- 2年目(平成28年度):300万円以上2,000万円以下(予定)
3)販路開拓支援・技術指導支援
販路開拓が必要な場合や融資が必要な場合は、金融機関(地元優先)が販路の斡旋や事業資金融資を行ってくれるように、働きかけてくれる。また公的な試験場からの技術指導も斡旋してくれる。
シーズ活用研究開発事業を活用する際の注意点
平成27年の公募は5月11日(月)から6月19日(金)までとなっている。
採用されるのが困難に見えるかもしれないが、制度を活用している業種業態は、介護・鍼灸・ロボット開発など多岐にわたる。先入観を持たずに制度を詳しく調べることで、自社が適用範囲内となるケースも多々ある。
なお、公募にあたり注意したい点が2つある。
- 公募前に必ずe-Rad(府省共通研究開発管理システム)へ登録すること
- 1年毎に見直し査定が行われるので、実現ベースで公募すること
実現したいアイデアがあるならば、アイデアを高度な次元で実現するために、シーズ活用研究開発事業制度の活用を検討してみてはいかがだろうか?