2020年の東京オリンピック開催は、日本全体で累計約36兆円の効果を生み出すとされている。2020年に向けた景気の上昇を好感する声も大きいが、その後に控える「2025年問題」が生み出す苦難からも目を背けてはいけない。企業にとっては税負担の増加と共に質・量共に人材難に陥るなど直接的な影響が大きいため、今から備えをしておく必要がある。
オリンピック後に控える問題が日本を襲う
2020年に東京オリンピックが開催することが決定し、日本は来(きた)るオリンピックイヤーに向けて、景気の上昇を好感する声が大きくなっている。
それもそのはず。東京オリンピックによる経済効果は、累計で約36兆円に上ると予測されているからだ。この数字は日本政府に収入として入る一年間の歳入金額に匹敵する。
東京オリンピックに向けて、押し寄せる外国人観光客のインバウンド消費をさらに高めるために、キャッシュレスでの買い物に慣れた外国人に対して日本経済のインフラを整えようとした動きもある。
もちろんオリンピック会場設営に伴う大小さまざまな雇用も生まれ、その経済効果ははかりしれないほど大きい。
しかし日本経済は、そのオリンピックにかすんで見えなくなっている、大きな苦難の時代へ着々と向かっている。
金メダルをいくらたくさん獲得しても、「2025年問題」が生み出す苦難から逃れるのは容易ではない。
今だからもう一度振り返る2025年問題
オリンピックの後で国家的に問題視されているのが”2025年問題”だ。
2025年問題とは、2025年に完全なる高齢化社会が訪れることが主な要因となり、日本社会で生じることが予測される諸問題の総称である。
年齢別の人口分布で圧倒的に人数の多い団塊の世代が2025年に75歳以上に到達し、2025年には4人に1人が後期高齢者と呼ばれる75歳以上となる。この人口動態がもたらす「2025年問題」は、日本へどんな苦難をもたらすのだろうか?以下提示する。
1)要介護の高齢者が爆発的に増える
高齢になると医療費が多くかかり、生涯医療費を見ると70歳以降に生涯の医療費の約50%を費やすことが分かっている。要介護認定を受けるリスクは75歳から大幅に上昇し、85歳以降を過ぎると約60%の人が要介護認定される。病院のベッド、医師の数は足りなくなり、十分な医療や介護を受けられない可能性もある。ショッキングな言い方だが”死に場所”が見つからない、という問題も起こりうる。※1
2)要介護者保護のために現役の負担は増大
厚生労働省の発表する社会保障と税の一体改革時の推計によると、2025年における年金給付は下落し、医療、介護に関わる負担は大幅に増加する見込みとなっている。高齢者が負担する医療保険料、介護保険費だけではなく、現役世代の税負担も重くならざるを得ず、消費税の引き上げも必須の状態だ。少子高齢化にも歯止めがかかっていないため、社会全体で高齢者を支え、自分が高齢者になったときも支えてもらう、という社会保障制度の破綻が2025年に起きると考えて過言ではない。
2025年問題は企業に対しても大きな影響あり
企業にとって2025年問題はどんな影響を与えるだろうか。
直接影響があると見られるのが介護業界だ。2025年に向けて要介護者が増えるため、インフラ設備に多額の投資を行う必要が生じている。慢性的な人材不足を解消するため、大幅な人件費上昇も見込まれる。
すべての企業に影響する問題としてあげられるのは、社会保険料の負担増加が確実なことだ。また人口が減少する中で優秀な人材を競って獲得しなければならず、そもそもの人口母数が少なくなるため、数的な人材難も想定しなければならない。海外への進出や人材確保も多くの企業にとって、より現実的なものとなるだろう。
利益を出しながらコツコツと節約し、健全な経営を体制を確立することで、きたるべきXデーに臨むようにしよう。
参照元
※1 公益財団法人 生命保険文化センター
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/2.html
※2 厚生労働省「社会保障・税一体改革」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/kaikaku.html