「正社員を雇う」=「その社員と結婚する」
今日は、「正社員がいらなくなった本当の理由」というテーマでお話ししようと思います。
今は、よりベンチャーチックになればなるほど、小さな会社で、より大きな利益を出していくっていう感じで、最低限の正社員のメンバーだけ揃えて、他をどんどんアウトソーシングしていくっていうやり方が非常に流行っております。
では、そもそも正社員ってなんなんだろう?って言いますと、実は「正社員」という用語は正式には法律上存在しないんですよ。
ただ単に、雇用期間が限定されるのを「契約社員」といって、雇用期間が限定されないのを「正社員」とよんでいるわけでございます。
そして、正社員は法律上とても保護されていまして、実質解雇することができません。
法律上、いかにも予告解雇手当っていう、30日分の給料を払えば解雇できるようになっているんですが、実際裁判では一切こういうの通用しませんからね(笑)。
もう絶対出来ないッって思った方が良いですね。ですから、どっちかっていうと、もう「結婚」に近いです!
「正社員を雇う」意味は、「その社員と結婚する」ような感じですね。
余程の理由がない限りは、離婚できない(笑)。そのくらい正社員は法律で守られています。
正社員として人を雇い入れると、おのずと社会保障の負担も会社側が負うことになります。
年金が1番大きいんですけれど、社会保険料で給料の17%くらいの会社負担が出てくるんですね。
年収500万円ですと、ザックリ85万円くらいを別に年金事務所に払わなければいけないという状況です。
ですから、これを永遠に払い続けていけるかどうかってくらい、人を雇うことは大きな買い物です。
結婚するのと近いくらいに、責任を負わなければいけないっていう状況なんですね。
外資の雇用はスポーツチームの雇用に近い考え方
ここでチョット待てよと。外資は簡単にクビ切ってるじゃないかって。
そう思われた方もいるかもしれませんけれど、外資はもともと人を雇う時に契約自体が違うんですよ。
大体ですけれど、私がよく見るパターンは、職務内容を限定してある場合が多いですね。
「あなたの能力をうちは買うわけだから、この業務をあなたは出来ますか?」って。
そこで「出来ます」って答えたら、それが出来る前提の元での契約になっているし、必ず1年契約くらいの期限が定めてあるのが普通です。
要するに契約社員なんですよ。
ですから、日本のいわゆる期間の定めのない正社員とは、違うんだっていうふうに捉えてください。
外資の場合、現場によっては結構ドラスティックでね〜(笑)。
1番ヒドイのは契約を更新しないって告げない。契約更新に呼んでもらえない。
あとは、契約更新の話があって紙を渡される時に、その紙はどっちかなって話でね。
要は、「契約は更新しません」の紙なのか、それとも「ボーナス」の紙なのか、どっちかって話です。
もし、ボーナスの方だったらその瞬間「ラッキー(歓喜)!!!」みたいなね。ボーナス貰った人っていうのは、来年も雇用っていうことに大体なっているんですね〜。
こういう感じで傍(はた)から見ると、結構ドラスティックなんですけれども、どうして外資系は…外資っていうかアメリカチックな経営ってこんなふうにやるんでしょうか?
スポーツ選手のことをイメージして欲しいんですけれど、スポーツ選手って、チームのためにメンバーの入れ替えがず〜っとあるじゃないですか。
それと同じで、「良いチームのためには足を引っ張る社員はいらない」みたいな感じで、スポーツチームの運営に近いんですね。
社員さんを選手みたいな感じで捉えて経営をやっていくっていうのが、アメリカ的経営なんですね。
ベンチャーで強いところも考え方は似ている
そして、日本でもいわゆるベンチャーチックな会社っていうのは、この考え方にかなり近い雇用をやっています。
私が知っている所では、25年前のリクルートでは間違いなく、本当に人をどんどん入れ替えていくような契約で、社員さんを雇っていたっていうのがあります。
ですからね〜、今もベンチャー企業で強い所っていうのは、やはり社員を硬直させないっていう部分はあります。
硬直化することによって、どんどんスピードが遅くなっていきますからね。
だから、ベンチャー企業は人がどんどん入れ替わって行くんですけれど、あれは良いことなんですよ。
人をクビにしているわけではなくて、本当にスピードについていけなくて、どんどん脱落していくっていう傾向があるんですけれど、日本的経営ではないからこそ、あんなに強いのかな〜っていう感じもしています。
殆どの仕事がアウトソーシングできる時代
あとは、1番最初にアウトソーシングに乗っ取られたのは、対人折衝を面倒くさがる人たちがやっていた部署が、どんどんアウトソーシング化されたんですね。
私も資格学校の先生をやってまして、その資格にすがるような人たちって、「いや自分は営業職とか無理です。絶対ムリです。とりあえず人とあまり携わらないで生きていきたいんです。中で書類書いたりそういう仕事したいんです。」みたいなね。
コンピューター系にも結構多いんですよね。
ですけれど、これは確かに20年くらい前はね、各会社でそういう部署を置いていたんです。
そして、そこに正社員たちが配属されて、社内にノウハウを蓄積していくっていう流れがあったんですが、今はそういう流れが全く無いんですよ。
インターネットで会社と会社が繋がってからは、自社のノウハウよりも、よその業界のノウハウの方がよっぽど価値があったりとかね。
そういうのが簡単に引き出せるようになって、月会費でだいたい3〜5千円くらい払うと、よその業界のノウハウもぜ〜んぶ手に入るようなね、そういったサービスもたくさんあるわけです。
アウトソーシング会社もどんどん出来てきて、経理から人事から、それから広報もね!もう本当にバックオフィスでやっていた事はほとんどアウトソーシング会社がやってくれるし。
ものづくりだってそうです。
ものづくりだってね、「これ作りたいな〜」って思ったら外注出せば作ってくれます。
ものを売るのもそうです。もういっそのこと、Amazonに全部預けておけば、Amazonが全部発送してくれますからね。
そんなふうに随分ラクになってきました。
インターネットの出現がバージョンアップできない人の居場所をどんどん潰している
そこで中小企業の社長たちがいつも言っているのは、結局、人っていうのはバージョンアップしないとダメだよねって。
そうしないと、給料を払い続けていくのもツラいんですよ。
バージョンアップしない人を定年まで永遠に雇わなきゃいけない。
その時に「あいつ、もう今年40だよ…あと20年給料払ってあげないといけない…俺もそれまで生きているかどうか分からないけれど、あいつ大丈夫かな…何もできねぇし。」ってね。
なんやかんや言いながらね、余裕がある会社っていうのは、クビなんか切らないんですよ。
だけれどもね、そのバージョンアップしない人たち、ただ歳ばっかとっていくような人たちを永遠に雇っていくっていうのは、もうこれからは無理だろうなぁ…って社長たちも愚痴る時もあるわけです。
正社員の数っていうのは、インターネットの出現でもうどんどん増えることが無くなっていて、そして正社員っていうのは、よりアタマを使うことを求められてきます。
やっぱり、インターネットっていうのは、これだけ仕事を失わせるくらいの、本当の意味のイノベーションだったんだなって、技術革新だったんだなって思います。
社長さんたちが悪いんじゃなくて、本当の技術革新が起こったことで、正社員さんがどんどん少なくなっているっていう話です。