大塚家具の株主総会が27日(金)へ向けいよいよ大詰めを迎えている。今回の「経営方針を巡る内部対立」について、多くの報道では「お家騒動」「同族会社の内輪もめ」といった言葉を多用しているが、「同族会社」には定義が2つあるため、どの定義を持って報道機関が大塚家具を「同族会社」と報道するのか知ると共に、もう一方の定義についても正確に把握したい。
大塚家具の株主総会がいよいよ今週末に迫る
大塚家具の株主総会が27日(金)へ向けいよいよ大詰めを迎えている。
娘であり社長の久美子氏は投資ファンドや機関投資家を軸に攻勢を強める一方、会長側は取引先や個人株主を取り込もうと躍起になっている。委任状争奪戦は、お互いが20%近くの支持を固めて五分五分の戦いだ。
今回の「経営方針を巡る内部対立」について、多くの報道では「お家騒動」「同族会社の内輪もめ」といった言葉を多用している。
問題視されている「同族会社」の正確な定義とはなんだろうか?大塚家具はどのような定義で同族会社と見なされているか?
以下、検証する。
「同族会社」の正確な定義をおさらいしよう
同族会社には2つの定義があることをご存知だろうか?
1つは「法人税法」の定義、もう一つは「社会通念上」の定義である。以下、2つの定義をおさらいしよう。
まず、法人税法の「同族会社」とは、「上位3株主の持ち株比率をあわせて株式の保有比率が50%を超える会社」のことを指す。
株式の需要が低い中小企業、買収防衛策として株式の大部を取締役会が確保している一部大企業が「法人税法」上の同族会社にあたる。
それでは大塚家具は、法人税法上の同族会社にあたるだろうか?答えは「否」である。
大塚家具の上位3株主の保有割合は、2014年12月の時点で以下の通りとなっている。
- 大塚勝久氏:18.0%
- ききょう企画:9.7%
- 日本生命保険:5.8%
それぞれを合算しても33.5%に達せずしか到達しないため、大塚家具は「法人税法上」の同族会社ではないことがわかる。
次に「一般通念上」の同族会社の定義は、「創業者一族の力が大きく働きやすい組織運営体制が構築され、また経営における実質的な支配権を創業者一族が行使している企業」を言う。
従って、大塚家具は「社会通念上」で使用される定義によって、同族会社と報道されているのだ。
ただし通常、税理士(公認会計士)や弁護士が「同族会社」という発言をした場合には、その大半が「法人税法上の同族会社」を指すことを覚えておきたい。
日本で法人税法が定義する同族会社は何%?
ところで日本企業における「法人税法上の同族会社」はどれくらいあるかご存知だろうか?
なんとその割合は、97%に達する。※1
また同族会社である割合は、「資本金5億円超:12.8%」「資本金1億円以上5億円未満:32.3%」「資本金1億円未満:76.4%」と、規模が小さな会社となるほどに高まる傾向だ。
中小企業の場合、上位3株主自体も「社会通念上の同族会社」と定義が重なる実態を有している場合が多い。
我々日本の社会は、同族会社の繁栄なくして経済活性化することはあり得ない。
シリーズの次回は、「社会通念上の同族会社」が抱えるジレンマを探っていく。
参照元
※1 中小企業庁 「我が国の中小企業の実態」
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100215a05j.pdf