廃墟が聖地になった理由~顧客と共に新たな価値を創り出した鶴見緑地公園の場合

マーケティング

 私達が思いもしなかったところで、顧客が私達の商品に価値を見出す場合があります。例えば、大阪花博の跡地廃墟・鶴見緑地公園は誰にも見向きもされぬ空間でしたが、ここに価値を見出した人々にとって「廃墟」は「聖地」となりました。顧客と共に新たな価値を創り出す「価値共創(コ・クリエーション)」は、これからのマーケティングに欠かせぬ概念です。

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製品やサービスが持つ価値は顧客が決めている

 こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。

 今回は、製品やサービスが持つ「価値」は顧客が決めている、という話をしたいと思います。

 製品やサービスが持つ「価値」は、顧客が「お金を払ってもよい」と考えたとき、初めて発生します。

 たとえば、売価数千万円の宝石だったとしても、宝石に興味がない人にとって、その価値はゼロですね。

 さて、企業が新製品やサービスを開発する際、開発の中心テーマは、

  「どのような価値を顧客に提供するか(したいか)」

 となります。

 この「価値づくり」のために開発担当者はとことん頭を絞り、また、大企業であればマーケティングリサーチに相応の予算をかけて、

  「顧客はどんなことを価値があると認めてくれるのか、どんな価値を求めているのか」

 を把握し、製品・サービス仕様に落とし込もうとするわけですね。

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大阪花博の廃墟が特定層の聖地になった理由

 ところが、企業の担当者が思いもしなかった価値を、顧客が発見するというケースもたくさんあります。

 一般には「無価値」とみなされるものであったとしても、ある人々には価値があると高く評価され、喜んでお金を払う、ということが起きるのです。

 具体事例をご紹介しましょう。

 「国際花と緑の博覧会(通称:大阪花博)」を覚えていらっしゃいますか。

 1990年に、大阪の鶴見緑地公園で開催された大阪花博は当時、大変な人気を集め、総入場者数は、特別博覧会史上最高となる2,312万人超となりました。

 ただ、閉会後は予算不足から施設維持が十分に行われず、26年後の今、会場跡地は廃墟となっています。

 鶴見緑地公園の管理者である大阪市としては「さて、どうしたものか・・・」と頭を抱えていたところですが、近年、思わぬ人々からの人気を集めているのです。

 思わぬ人々というのは「コスプレヤ―」たちです。人気アニメやゲームのキャラクターの衣装を着た人々が、鶴見緑地の廃墟で様々なポーズを取り、写真撮影をして楽しんでいます。

節約社長

 コスプレーヤーにとって、ぼろぼろの施設こそが、アニメなりゲームの雰囲気に近く、その世界観にどっぷり浸れるというわけです。

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「価値共創(コ・クリエーション)」で顧客と共に価値を創り出せ

 同じく、アニメファンの聖地となっているのが、和歌山県の無人島「友ヶ島」です。

 ここには旧陸軍の第3砲台跡があり、スタジオジブリ制作の人気アニメ映画『天空の城ラピュタ』で描かれた世界にそっくり。

 ということで、スタジオジブリ作品好きの人たちにとって「垂涎の場所」となっているのです。

節約社長

 さて、花博跡地の鶴見緑地公園の場合、当初コスプレ―ヤ―が集まり始めたころ、着替えのためにトイレを長時間占有するなど、一般来園者の苦情の元となっていました。

 しかし、公園管理側が最近、月2回ほど「コスプレディ」を開催するようになりました。

 「コスプレディ」では、コスプレーヤーのために更衣室やロッカーを準備し、参加費500円を徴収するようにしたことで、新たな収益源となるとともに、一般来園者の苦情を減らすことにも成功しています。

 これは、顧客が見つけた価値に対して、サービス提供側がその価値を認め、それを高める対応をしているということであり、共に価値を創り出す「価値共創(コ・クリエーション)」と呼ばれるものです。

 今後、様々な製品・サービス分野において、企業が提案したい価値だけでなく、顧客が発見する価値をいかにおさえ、それを顧客と共に高めていくかというマーケティングが必須になっていきます。

 あなたの会社は、その準備ができていますか?

画像:

Photo credit: kxz Chen via VisualHunt / CC BY-SA

Photo credit: tyoro via VisualHunt.com / CC BY-SA

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松尾 順

株式会社ジゾン
コンサルティング準備室 室長

早稲田大学商学部卒。マーケティング・プロデューサー。
ニールセン・ジャパン、CRC総合研究所でマーケティングリサーチ、コンサルティングに従事した後、電通ワンダーマンで、データベース・マーケティングやCRMの企画・プロデュースを経験。さらに、ネットベンチャーの立ち上げにも執行役員として参画した。

現在は、心理学、行動経済学といった消費者心理・行動の理解に役立つ学問分野の研究を活用し、売れる商品づくり、効果的なコミュニケーション開発に取り組む様々な企業をマーケティングリサーチからマーケティング施策の企画・運営までトータルに支援している。

株式会社ジゾンでは、CMSシェアナンバーワンのソフトウェア「HeartCore」の導入に伴うマーケティングコンサルテーションを担当している。

【著書】
『ブランディング戦略―ブランディングの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ) 』誠文堂新光社
『[実務入門] 営業はリサーチが9割! 売上倍増の“情報収集”完全マニュアル (実務入門)』日本能率協会マネジメントセンター
『先読みできる!情報力トレーニング (ビジマル)』TAC出版

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