中小企業の場合、商品をあれやこれやと発売しても、その全てを個別の名前でブランド化し、セールスプロモーションをかけるほどの体力がありません。そこで中小企業のブランド・マーケティングで効果的なのが、自社の名前を押し出してブランド化する「マスターブランド方式」を取り入れることです。そのメリットとデメリットをご紹介いたします。
中小企業のブランド化に効果的なマスターブランド方式とは?
企業経営者は皆、自社の存在や商品価値を高めるために、ブランドを作る必要があります。
中小企業の場合、商品をあれやこれやと発売しても、その全てを個別の名前でブランド化し、セールスプロモーションをかけるほどの体力がありません。
例えば、燻製工房A社の「天然ぶりスモーク“燻鰤”」「天然戻りカツオスモーク“燻鰹”」なんて名前の商品を、一個一個認知させることは非常に難しいことが想定されます。
そこで中小企業のブランド・マーケティングで効果的なのが、「自社の名前を押し出してブランド化する」手法を取り入れることで、「マスターブランド方式」と呼ばれています。
本稿ではマスターブランド方式の具体例、採用するメリットとデメリットをお伝えしたいと思います。
マスターブランド方式は多くの有名企業に採用されている
マスターブランド方式は、前述の通り、その企業の製品やサービス又は広告等においてブランド名を表示する場合に、企業ブランド名(企業名)を全面に押し出す方式をいいます。
代表的な例としてBMWがマスターブランド方式を採用しています。
BMWは、自社製品「自動車」をPRする場合、製品ブランド名(自動車の製品名)よりも、企業ブランド名「BMW」を全面に押し出してPRを行っています。
確かに殆どの消費者はBMWという名前は知っていても、“グランツーリスモ”、“Xシリーズ”と言われたら「?」となりますよね。
これは、BMWがマスターブランド方式により、自社の名前をブランド化する戦略を取っているから起きる現象です。
また、Appleもマスターブランド方式を採用している代表例の一つです。
マスターブランド方式のメリットとデメリット
さて、マスターブランド方式には、メリットとデメリットがあります。
まず、メリットとしては、企業ブランド名という1つのブランド名をPRするために集中的に投資することができるので、ブランドのPR効率がよいことです。
先程の燻製工房の事例で言えば、個々の商品の名前をブランド化して押し出すよりも、「鎌倉燻製工房」の天然ぶりスモーク、「鎌倉燻製工房」の天然戻りカツオスモークとすることで、ブランドのPR効率が上がります。
ジャパネットたかたの高田社長が自らの名前と、企業名を全面に押し出したのは、この好事例です。
対して、マスターブランド方式にはデメリットも存在します。
1つ目は、自社が提供する複数の製品のうち、1つの製品で悪い評判を受けてしまうと、企業ブランド全体の評価が下がってしまうリスク集中型の方式であることです。
少し前の話になりますが、マクドナルドの風評被害はその代表例と言えるでしょう。
また、複数の種類の製品(例えば、自動車、家電、おもちゃ)について企業ブランド名を表示すると、企業ブランドがどの製品に強みがあるブランドなのかが分からず、ブランドのイメージがぼやけてしまうことがあります。
安売りのプライベートブランドなら全ての商品に自社名を付けたスーパーマーケットの事例は、ブランドイメージをぼやけさせた失敗例と言えます。
マスターブランド方式を採用するには前もって、自社に課せられた社会的ミッションや自社のコアコンピタンスを認識し、今どのドメインに集中すべきか?などを戦略的に考慮したうえで、これを実施する必要があることを忘れてはなりません。