カジュアル衣料「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが13日に発表した2016年8月期決算は、前年より営業利益は2割減、純利益は半減となりました。これを受けて報道では、「価格戦略の迷走が原因」という論調が目立ちますが、決算短信の数字を客観的に見ると、それ以外の業績低迷要因がもう一つ見えてきます。
ファーストリテイリングの業績低迷は「価格戦略の迷走が原因」という報道
ファーストリテイリングの純利益が半減し、ユニクロの価格戦略が迷走していると報道されています。
朝日新聞:「ファストリ、純利益半減 ユニクロの価格戦略迷走」
8月決算のファーストリテイリングが、2016年8月期の決算を先週公表しましたが、それを受けての報道です。
詳細は同社の決算短信を見ておきましょう。
ファーストリテイリングIR情報 :2016年8月期決算短信
***以下、ファーストリテイリング決算短信より引用***
***引用、ここまで***
本当に価格戦略の迷走だけが業績低迷の要因?
たしかにファーストリテイリングの業績は減益となりましたが、営業利益は半減とまではいっていません。
価格戦略がうまくいっていない部分もたしかにあるのでしょう。
なお、記事には海外の業績についても触れられていましたので、セグメント情報を見ておきます。
***以下、ファーストリテイリング決算短信より引用***
***引用、ここまで***
これを見ると、海外ユニクロの売上は日本のそれに迫っています。
しかし、利益は3分の1程度であり、売上が伸びても、そこまで利益が伸びない原因の1つはここにあります。
さらに利益を半減させているのは金融収支であり、これについても内訳をみておくと、以下のようになります。
***以下、ファーストリテイリング決算短信より引用***
***引用、ここまで***
前年150億円の為替差益があったのに対して、370億円程度の為替差損になっています。
つまり、為替で500億円以上の減益要因が生まれているのです。
ユニクロ利益半減の主な原因は「為替差損」
結果として、たしかに価格戦略に問題はあるものの、ユニクロの利益が半減した理由の主なものは「為替によるもの」である、ということがわかります。
しかし、これも円ベースのものであり、まだ売上の半分以上を国内で稼ぐファーストリテイリングであれば、円建てが実態に近い決算数値といえるでしょう。
ところが、これが海外で半分以上の売上をあげるようになると、ドル建ての決算などが、もしかすると実態に近い決算書になるかもしれません。
円建ての決算はもちろん重要ですが、日本円を中心に企業がビジネスを展開しなくなったとしたら、円建ての決算は実は実態を示さなくなる可能性もあるわけです。
数字を客観的に見ることで、報道の裏側にあるもう一つの事実が見える事例と言えるでしょう。
Photo credit: MIKI Yoshihito. (#mikiyoshihito) via Visual Hunt / CC BY