クックパッドの業績牽引の主役であり、創業者・佐野陽光氏との経営方針の違いで対立していた、穐田誉輝(あきたよしてる)前社長が14.7%保有する株を売却し、2.4%まで減らすことが、先週末に報道されました。今回の株式売却は穐田氏に何をもたらし、佐野氏にはどのような影響を与えるのでしょうか?
クックパッドのお家騒動で前経営者に動きあり
大手レシピサイト・クックパッドで続く、経営陣の経営方針の違いに端を発した揉め事に、大きな動きがありました。
業績牽引の主役であり、創業者・佐野陽光氏との経営方針の違いで対立していた、穐田(あきた)前社長が14.7%保有する株を売却し、2.4%まで減らすと報道されたのです。
クックパッドの時価総額(平成28年8月27日時点終値)は、約1,100億円ですから、穐田前社長は株式の売却によって130-140億円を手にすることになります。
今回の株式売却には、穐田社長のどのような意志が現れているのでしょうか?
株式を売却した前社長穐田氏が手にするもの
そもそも、雇われであれ創業者であれ、経営者が株式を保有する理由は2つあります。
1つめは会社の業績に経営者としての責任を持つこと、2つ目は結果が出た時に株価の上昇が資産価値の増大をもたらすことにより、インセンティブとして作用することです。
ただし2つめのインセンティブは、上場企業の経営者には有効ですが、非上場企業の場合、いくら儲かっても、株を第三者に売ることが容易ではありませんから、あまり大きなインセンティブにはなりません。
株式保有を経営者のインセンティブとするのであれば、第三者へのM&Aによる売却などを想定し、準備を進めておく必要があります。
さて、今回のクックパッド内紛劇ですが、揉め事の中身については、各種記事がありますので、そちらをご参照いただくとして、穐田氏がもうクックパッドの経営を少なくとも長期的視点でやろう、と思わなくなったことは間違いありません。
100億円以上のキャッシュを手にすれば、他にやりたい多くのことが実現可能であるため、穐田前社長の社外における動きには引き続き注目が集まりそうです。
厳しい経営の舵取りを求められるのは現経営陣
対して、創業者・佐野氏を中心とする現経営陣には、今後難しい舵取りが見込まれます。
文句のない業績牽引により、時価総額を最大で6倍まで増加させた旧経営陣の一掃により、株価はここ2年で最安値を更新しました。
更に株価が下がれば、他社からの横槍(株式購入により経営への干渉)が入りやすくなりますし、内紛報道の影響により他社との協業に困難を来しやすいなど、積極的な企業行動が取りにくくなるのは必至です。
そのような中で佐野氏は、前経営陣の元で行われていた「事業多角化と食材物販」を真っ向から否定しており、9月からは食材物販がまず無くなります。
これらのテコ入れが結果として出なければ、更に負のスパイラルが待ち受けるのも容易に想像できます。
クックパッドの社内で、本当のところ何があったのかは分かりませんが、本当に人と人の関係は難しいものだと思います。
しかし、社会やビジネスは結局のところ人でしか動きません。
お客さまに信頼をいただき、お客さまに貢献し、報酬をいただく。報酬をいただける方が誰なのか、顔がはっきり見えている私のような仕事は恵まれているのかもしれません。