2015年9月9日に、サンフランシスコで開催されたアップルの新製品発表会で、アップルTVというスマートTVがお披露目されました。アップルTVが革新的なのは、動画配信やゲーム配信といったサービスが優れているからというより、ショッピングが簡単に出来る仕組みを提供している点にあります。アップルはもちろん競合の動きでインターネットショッピングの流れが、大きく変わっていく可能性が生じています。
アップルTVの注目点は娯楽サービスではない
2015年9月9日に、サンフランシスコで開催されたアップルの新製品発表会で、一つの画期的な製品が発表されました。
その新製品は、アップルTVというスマートTVです。
このとても小さな黒い箱が、ウェブを運営する人々全てに、とても大きな影響を及ぼす可能性があります。
その理由は、新型アップルTVがそのメニューに含める派手な動画配信サービスだからでもありませんし、解像度の高いゲームだからでもありません。
確かにそれらのサービスは娯楽としてはとても素敵なコンテンツですが、私達の疲れを癒やてくれるものに過ぎません。
テレビを視聴しながらショッピングができる
では何が画期的かというと、アップルTVがtvOSというiOSをアレンジしたOSで動き、スマートTV用のアプリが一般企業に開放されるという点です。
アップル公式サイトのデベロッパー用のページでは、無料でtvOSで動かすアプリを作るための開発ツールがダウンロード出来るようになっています。
私は昨晩アップルの新製品発表会の動画をアップルの公式サイトで昨日見ましたが、この新型アップルTVというスマートTVのプレゼンテーションを観てから眠れなくなってしまいました。
何故なら、そのプレゼンテーションにはショッピングのアプリのデモがあり、まるでスマホアプリで買い物をするような感覚で、とても簡単に洋服を購入するシーンを見たからです。
これはとても衝撃的でした。
4Kの高解像度で洋服の様々な写真が散りばめられて、とてもシンプルなリモコンを操作すると画像をスワイプすることが出来、しかも購入ボタンを1度押せば予め登録されているアップルIDに紐付けられたクレジットカードで決済が完了します。
ついにお茶の間でTVを見ながら、ショッピングが簡単に出来る時代が来る可能性があります。
もちろんすでにそうした機能は先発のスマートTVやVODでもありますが、アップルが手がけると、とてもシンプルで綺麗な画面で、他のアプリと統一されたインターフェイス、操作感で心地よいユーザー体験が出来るのです。
アマゾンも楽天もアップルTVに脅威を感じるはず
アップルは恐らくアップルTVを通じて、幾つかのビジネスを生み出そうとしているようです。
以下のとおりです。
1)決済サービスの提供
アップルTV上での決済は直接ショップで行うのではなく、アップルのユーザーIDを通すことになります。従ってアップルは決済手数料を好きなだけ取れるのです。従ってアップルは新たに、決済サービスをビジネスで始める可能性があります。(実店舗ではアップルペイという決済サービスを展開するようになったので、それと連動する可能性もある)
2)ショッピングインフラサービスの運営
スマホアプリ感覚で開発出来るtvOS用のアプリ開発キットを無償提供することにより、多くの企業がアップルTVというプラットフォーム上で、アマゾンや楽天のようなショッピングインフラサービスを展開することが出来るようになります。
特に、2)のショッピングインフラサービスが成功すれば突然アマゾンや楽天の競合が生まれる可能性があります。
アップルインサイダーの2年前の記事によると
“Apple’s 500M user accounts second only to Facebook, viewed as key driver of future growth”(June 04, 2013)
『アップルIDのユーザー数は5億人で、その数はFacebookの次に多くアップルの将来の成長の主要な原動力となる』
ということです。
世界の人口は約72億人ですので、実に世界中の人々の12人に1人がアップルIDを持っています。
しかもこの数字は2013年の数字です。
ほんの最近、中国で爆発的にiPhone6が売れたと聞きますから、実際には5億人を優に超える人がアップルIDを持っていることになります。
この数は軽く世界のアマゾンのユーザー数2億人の2倍を超えています。
これはアマゾンにとって大きな脅威であり、アマゾンがキンドルFireというタブレットや、アップルTVと似たスマートTVを売ったり、失敗をしましたがキンドルフォンというスマートフォンを販売した理由にもつながります。
アマゾンは対アップルへの防衛策として、そうした手を打った可能性が高いです。
更に、日本の楽天がアマゾンの後を追うように、Kobo(電子書籍デバイス)や楽天モバイル(携帯電話)を販売するようになっています。
これはまるでアップルというクジラの後を追うのがアマゾンというサメであり、またその後を追うマグロが楽天という構図です。
インターネットという広大な海の生態系が、彼らの動きにより影響を受けるのは必至です。
コンテンツが優れていれば箱に左右されない
ここで私達は考えなくてはなりません。
PC用ウェブサイトばかりに力を入れているだけで良いのか?
少なくともスマホ対応は終わっているのか?
自社独自のスマホアプリを持つ目処はたったのか?
そしてスマートTV用のアプリはいつごろ開発すべきなのか?
残念ながら、立ち止まって考えている時間的な余裕は全くありません。
何故なら海流の速度は日に日に早まっているからです。
どのようなデバイスのための器を作ったとしても、そこに入れる中身であるコンテンツが最も重要であり、今は表面的なデバイスの形に目を奪われてはなりません。
御社に集客できるコンテンツがある限り、どんな器(プラットフォーム)に入れても、ネットユーザーは使ってくれます。
御社独自のコンテンツを創造することに、大きな重点を置いて下さい。
マルチデバイス時代の真の対策はコンテンツ対策です。