国民生活センターでは、消費者被害実態把握と被害発生防止に役立てるため、2002年4月より「消費者トラブルメール箱」を開設しています。トラブルメール箱に寄せられたトラブル事例を3つご紹介し、何をどう改善するべきだったか消費者生活アドバイザーの視点からひも解きます。商品宣伝は「これで正しく伝わるだろうか」という疑う目を持つことが肝要です。
国民生活センターに寄せられた通販トラブル
国民生活センターでは、消費者被害実態把握と被害発生防止に役立てるため、2002年4月より「消費者トラブルメール箱」を開設しています。
2014年度内に寄せられた情報の受信概況、追跡調査を実施した主な事案等についても報告が挙げられています。
この報告書における「追跡調査を実施した主な事案」の中で、特にネットでの取引や広告に関連するトラブルを以下のとおりピックアップしてみました。
- (1)現状と大きく相違した、14年前の発売当時の定価を二重価格表示していた通販サイト
- (2)「24時間受付」と表示があるが、内容によって対応時間が異なる修理サービス
- (3)会員限定ツアーなのに一般利用者でも途中まで購入手続きを進められるオンライン旅行サイト
これらのトラブルから、消費者と事業者の目線がどのように違っていたのかを紐解いていきましょう。
消費者の不満・不信を買った3つの事例
(1)現状と大きく相違した、14年前の発売当時の定価を二重価格表示していた通販サイト
<2014年5月受信>
●寄せられた情報
「A社のネット通販サイトで販売している健康食品に掲示された参考価格が、当該メーカーが自社のウェブサイトで販売している価格と大きく異なっている。販売価格はメーカーのウェブサイトとほとんど変わらないが、根拠の疑わしい参考価格を表示することにより割引率を高く見せているという二重価格表示をしているのではないか。」●調査結果
メーカーのネット通販の販売価格は600 円前後だが、A社ネット通販では、販売価格の上に「参考価格2,700 円」と掲示されていた。通信事業者の説明:
「該当商品は14年前の発売当時の定価が2,500 円であったことから、発売当時の定価を参考価格として表示している。」国民生活センターからの依頼:
現在、メーカーのウェブサイトでは発売当時の定価は表示されておらず、600 円前後で販売されているのであれば、14 年前の発売当時の価格を参考価格とすることは客観的・社会通念上相当とは言いがたい。
現在のメーカーの販売価格を参考価格と考え、ネット通販でも参考価格の表示を見直す必要があるのではないかと伝えたところ、ネット通販サイトから参考価格は削除された。
●フィデス・久保の視点
楽天の二重価格問題以降、消費者の二重価格表示に対する関心が高まっています。事例のように、仕入れ商材であれば消費者は容易に市場の販売価格を調べることができます。比較対象価格は最近相当期間にわたり販売された価格を表示すべきでしょう。
(2)「24時間受付」と表示があるが、内容によって対応時間が異なる修理サービス
< 2014年6月受信>
●寄せられた情報
「タブレット端末に不具合が出たので、24時間受付案内を見て問い合わせたところ、夜間は担当者不在につき対応できないと言われた。ウェブサイトの案内を見る限り対応可能であるように思うので、表記に問題があるのではないか。」●調査結果
修理サービスお客様相談室の説明:
「受付は24時間行っているが、設定や操作に関連した内容である場合、専門担当者が夜間(20:00~9:00)不在であり、他の担当者が分かる範囲で対応する。内容によっては翌日以降に架け直していただくこともある。修理が必要な故障の場合、夜間でも昼間でも本社への誘導を行う」との回答。国民生活センターからの依頼:
同社ウェブサイトの案内では「24時間受付の故障受付窓口」との記載があることから、24時間対応可能とも受けとれる。夜間の受付は後日対応になることがある等、案内ページに実態に応じた注記などの検討を依頼したところ、「担当部署に改善提案をする」とのこと。
●フィデス・久保の視点
対応可能なサービスの範囲を明確にサイト上で示すことが、消費者の不満を未然に抑える対策となります。サイトに表示していても、消費者が見落とす可能性も十分あり得ますので、丁寧な説明を心がけましょう。
(3)会員限定ツアーなのに一般利用者でも途中まで購入手続きを進められるオンライン旅行サイト
<2014年10月受信>
●寄せられた情報
「マイレージ加入者会員限定のツアーなのに、一般利用者の操作画面にも表示があり、途中まで購入手続きを進めることができることは問題ではないか。」●調査結果
オンライン旅行サイト会社の説明:
「ツアー検索時点ではログインの必要がないため、会員以外の方にもツアーは表示される。申し込み手続きの手順としては、日程を入力して空席照会等を行った後、ログイン画面が表示され、そこで会員でない人は申し込みができないこと等が表示される。会員限定のツアーにはツアー名の頭に【□□○○ツアー】と□□(会員名称)とツアー名称の前に会員名称を明記し、会員向けである旨が表示されており、画面上には【□□TOURS】のロゴがある。申し込み画面上では、個人情報等の詳細を入力する前にログイン画面が表示され、そこで非会員は申し込めないことが分かるため、特段問題があるとは考えていない。」国民生活センターからの依頼:
□□ツアーのツアー内容詳細画面では「□□会員限定」である旨が分かるような説明はなく、「□□」の文字や「□□TOURS」のロゴのみでは、□□がマイレージ会員を示すことを知らない非会員には分かりにくいと思われるため、□□会員限定のツアーであることを、より分かりやすく表示することの検討を依頼したところ、了承された。
●フィデス・久保の視点
途中まで購入手続きを進めたにもかかわらず、サービスが利用できないことを後から知ることは、消費者にとって非常な不満となります。会員向けの差別化サービスであったとしても、一般消費者からの余計な不満を買うことは顧客を失うことにつながります。明瞭な表示でリスク回避しましょう。
だろう商売が消費者トラブル発生源となる
商品選択や購入にあたり重要と考えられる情報について、正しい情報であることはもとより、消費者目線に立って混乱や誤解を招かないように、その提供方法に配慮することが重要です。
「これくらいは判ってもらえるだろう」という発想ではなく、「これで正しく伝わるだろうか」という疑う目を持って検証してみることをお勧めします。
事業者としてはきちんと情報提供しているつもりでも、思わぬ落とし穴があるものです。