東芝に学ぶ社内カンパニー制を導入するメリットとデメリット

企業分析

 重電メーカー東芝の不正会計問題を大きくした1つの要因として、コーポレートガバナンス(企業統治)が全く機能していなかったことがあげられている。コーポレート・ガバナンスが機能しなかった理由の1つとして東芝が取り入れている「社内カンパニー制」がある。そこで社内カンパニー制のメリットとデメリットを比較し対策を検証する。

東芝の企業統治揺らがせる社内カンパニー制

 重電メーカー東芝で複数の事業部をまたぎ、数千億円規模の不正会計が行われていたことが、大きく報道されている。

 今回の不正会計で大きな問題の1つとされているのが、コーポレートガバナンス(企業統治)が全く機能していなかったことである。

 コーポレート・ガバナンスとは、企業の不正行為を防止すると同時に、競争力・収益力を向上させることも総合的に達成できる目標設定を行い、長期的な企業価値の増大に向けた企業経営を行う仕組みを言う。

 コーポレート・ガバナンスを実現するのに大きな役割を持っている部署が、企業の良心とも言える「監査部」である。

 しかし第三者委員会の調査報告書によると、東芝の監査部は全く機能しておらず、会計操作に気が付きながらも気づかないふりをしていた節があるという。

 その一因となっていたのが東芝が1999年から導入していた「社内カンパニー制」だと言われている。

社内カンパニー制のメリットとデメリット比較

 社内カンパニーとは同じ企業内で、事業分野毎で人・モノ・カネといった経営資源を分配し、各事業部毎に独立採算制度を敷く組織形態のことをいう。

 1994年にソニーが社内カンパニー制を導入したのが、日本における同制度が普及するきっかけとなった。

 各部門は「カンパニー」と呼ばれるが、登記簿に記載される義務を持たない。

 しかしその実態は「事業部以上の権限と結果を求められる」一個の人格を持った企業組織である。

 社内カンパニー制を導入するメリットとデメリットを比較してみよう。

メリット1)個の事業部で責任明確化が可能

 社内カンパニー制が日本で導入されたバブル崩壊直後の時代は、日本企業の伝統であった「護送船団方式」の組織運営が成り立たなくなったことで、より一層「個の事業部が持つ実力」を明確化する必要があった。社内カンパニー制は権限がカンパニーへ大きく移譲される分、結果も各部門で明確化される。よってカンパニーのメンバーは期ごとの成績に対するコミットメントが求められ、キャッシュ・フローに対する強い責任意識を持つこともできるようになる。

メリット2)市場の変化へ迅速に対応できる

 1つの事業ごとに組織を小さく分けることで意思決定が迅速になるため、市場環境の変化や戦うフィールドを変更することが容易である。またカンパニー毎に財務諸表で成果が明確に出るため、事業から撤退するか否かの判断が早く行える。企業全体で考えた時には不採算カンパニーを撤退させ、優良なカンパニーに資源を集中させることで、資源効率を高めることが可能になる。

デメリット1)部門間を横断したシナジー創出が難しい

 カンパニー制を導入すると、カンパニー間を横断したシナジー創出が難しくなる。同じ企業に所属しながらカンパニー毎に「所属意識」が生まれるため、自分の所属組織に対するメリット・デメリットを考える意識が生じやすくなるからである。よって企業全体で総合的に考えた時に意志がバラバラになりやすく、別カンパニー間で手を組めば生まれるはずのシナジーが生まれずチャンスを逃したり、不効率な資本配分が生まれる場合がある。

デメリット2)結果至上主義に陥り情報秘匿が行いやすい

 社内カンパニー制のメリットである「結果責任の明確化」は同時に、結果至上主義を生み出す。各カンパニーの幹部が大きな権限を持つようになるため、縦割り型のヒエラルキー(階層)も生まれやすい。更に各カンパニーの幹部は、企業の経営陣に対して「絶対的な成果」を提出しなければ自らの立場はもちろんカンパニーの生死を危険に晒すことになるため、悪い事実をカンパニー内へ情報秘匿する圧力が生じてしまう。

東芝は社内カンパニー制のデメリットが表面化

 東芝の不正会計に関する第三者委員会の報告によると、例えば「映像カンパニー」の経理部では、海外支社の経理部と共謀した自主的な会計操作を行っていたことがわかる。

 またコーポレート(企業本体)側の財務部は、映像カンパニーの経理部門から不正会計について相談すら受けており、見逃していた実態が記載されている。

 更に最悪なのは、企業の良心と言える「監査部」が「不正の防止と業績の向上をカンパニーへ両立させるよう」促さなければならないにも関わらず、数字目標のみに主眼を置いた監査を行っていたことだ。
 
 東芝の不正会計ではまさに社内カンパニー制のデメリットが、ことごとく露見してしまう形となった。

 規模が違えど、これらは「結果を明確化させた複数の部門」を持つ企業なら、どんな企業であっても起こりうる事態だ。

 カンパニー制を敷くにあたっては、結果を達成する強いハートに加えて、正しいことを行う強い正義感が社内に必要であることを東芝の事例は教える。

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