訪日中国人による日本国内での消費行動、通称”爆買い”の影響度は日増しに強くなっている。しかし、観光庁の調査によると、一度爆買いを経験した中国人がまた同じように爆買いする可能性は、低くなることがわかっている。更にゴッセンの法則に当てはめると、爆買いはいずれ勢いをなくすことが明白だ。我々は今のうちに自活できる道を切り開く必要がある。
訪日中国人の日本爆買いがもたらす経済効果
春節(中国の旧正月)で訪日した中国人の爆買いが2月に大きなニュースとして取り上げられたことを、読者の皆様も覚えているはずだ。
例えば大阪ミナミの繁華街にあり、ミナミや道頓堀といった観光スポットの中心に位置している百貨店の高島屋大阪店は、今年2月の免税売上高で、前期比約2.3倍の49億円の売上を計上した。訪日中国人による売上は、店舗全体の売上高において4%を占めている。
高島屋大阪店では、平成28年2月の春節シーズンにおける売上について、今年の1.6倍にあたる80億円の免税売上高を見込んでいるという。
また今年のゴールデンウィークに観光地のホテルは相次ぐ「満室御礼」となったが、これも5月1日〜5月3日が「労働節」の連休で、訪日した中国人による宿泊予約が影響している。
これら訪日中国人による日本国内での消費行動は、通称”爆買い”と呼ばれる。
マスコミは爆買いについて、日本経済を潤す救世主のような存在として取り上げているが、この傾向は永続的に続くのだろうか。
中国人がいつまでも爆買いすることはない
観光庁による訪日外国人の動向調査によると、日本を訪れた中国人観光客のうちショッピングをしたという人は66.3%にも及んだが、次回も同じようにショッピングしたいと答えた人は31.8%にしか満たなかった。
このアンケート結果は、中国人による爆買い頼みとなっている小売側に警鐘を鳴らしていると言えよう。爆買いは永続的に続くものではないのだ。
また爆買い頼みのビジネスモデルに警鐘を鳴らす、経済学の法則についても思い起こしておきたい。
「ゴッセンの法則」である。
ゴッセンの法則は、人間の需要に対して一定の満足が加わった時、人間がどのような行動を取るかを証明するもので、以下の3段階にわけて説明される。
ゴッセンの第1法則
「一般的に、財の消費量が増えるにつれて、財の追加消費分から得られる効用は、次第に小さくなる。」爆買いにより売り上げが伸び続けても、一度爆買いを経験した中国人にとって効用(満足度)は下がる。従って一人あたりの消費額はいずれ減少する。
ゴッセンの第2法則
「人が効用を最大化するとき、各財への貨幣の最終支払単位によって得られる限界効用(財の限界効用と価格との比)は、すべて等しくなる。」いずれ日本ナレした中国人は、自発的に実勢(最安値)価格を知ろうとするようになり、自分たちの支払いが可能な範囲を冷静に考え始め、身分相応の買い物を楽しむようになる。
ゴッセンの第3法則
「財の価値(価格)は、財の需要量が供給量を超えるときにのみ成立する。」爆買いも中国人が価格乖離を埋め始めると特需要素がなくなる。つまり「中国人だから同じものでも日本人より高いものを買ってくれる」状態はどこかでなくなる。
ゴッセンの法則は、一過性のある爆買い特需に売上を頼っていると、経営が傾いてしまうことを私達に教えてくれる。
「爆買い現象」が特需であることを認識し、中国人爆買い特需以外の売上を伸ばす施策を講じたり、特需で得た利益を節約して守る努力を行うことが必要だ。
現実に中国の経済成長は鈍化し始めている
中国人観光客の両手に抱えきれない荷物を運ぶ様は、さながらバブル期の海外日本人旅行客と重なる姿だ。
しかし先日発表された今年度第1四半期における中国のGDP伸び率は、前年同期比で+7.0%に留まった。昨年の第4四半期では+7.3%だったことから、経済の伸びは鈍化しており、6年ぶりの低成長となった。
2007年のGDP成長率が14%超だったことを鑑みても、中国の成長鈍化は日の目を見るように明らかだ。
バブルがいずれ終焉することは、ジャパン・アズ・ナンバーワンと呼ばれるほどの栄華を極め、その後失われた20年を経験した日本に住む我々が、世界の誰よりもよく知っている。
爆買いの恩恵にあずかりながら、依存せず自活できる道も冷静に切り開いていこう。