民法の相続関連法が40年ぶりに改正〜目玉は「配偶者の優遇」
先月、民法の相続に関する改正法が、参院本会議で成立しました。
基礎控除が大幅に縮小された、2015年の相続税法改正はまだ記憶に新しいですが、相続に関する民法の改正はじつに40年ぶりだそうです。
今回の改正の主なポイントは以下のとおりです。
- 1:配偶者の優遇
- 2:介護等の特別寄与分の請求
- 3:預金一部引出し制度の創設
- 4:自筆証書遺言の簡素化
この中で、今回の改定で最も注目されているのが、1の配偶者の優遇です。
そこで本稿は、配偶者の優遇に絞って、改正点をまとめてみたいと思います。
初めて創設された「配偶者居住権」とは?
配偶者居住権は今回はじめて設けられた制度です。配偶者が終身自宅に住み続けられる権利で、「所有権」とは切り離して考えます。
相続財産が1億で、土地建物3,000万円、預貯金7,000万円のとき、
- 妻:土地建物3,000万円+預貯金2,000万円
- 長男:預貯金2,500万円 長女:預貯金2,500万円
と分けてメデタシメデタシ…、なんて事例はFP試験の問題集などではよく見ますが、実際はこんなに簡単に行かないケースも多々あります。
例えば土地建物3,000万円 預貯金600万円、だとどうでしょう。
妻が土地建物を相続したら、子どもは600万円しか相続できません。
子どもは本来、法定相続分なら900万円までは主張できるので(遺留分:法定相続分×1/2)、モメた結果、妻は住み慣れた土地建物を売って均等に相続することになった、という事例はよくある話です。
実の親子ならともかく、「後妻」と「前妻との子」との遺産分割などでは、「私は500万円で良いから、お義母さんドウゾ」とすんなり行くとは限りません。
そもそも妻も、現預金がゼロでは老後の生活費が厳しくなります。結局住み慣れた家を売却し、遺産分割に臨まなければならなくなります。
そこで新しく採用されたのが、「配偶者の居住権」です。
「物件の所有権」と分けることにより、仮に「所有権」を持った息子が家を売ってしまったとしても、配偶者は「一生住み続ける権利」を持つことになります。
婚姻20年以上の夫婦~住居を遺産分割の対象から除外
また、結婚20年以上の夫婦であれば、配偶者が生前贈与や遺言で取得した住居は、「遺産とみなさず、遺産分割の計算対象から外せる」ようになります。
この場合でも、配偶者が住み慣れた自宅を手放さずに済むことになり、更にその他預貯金などの遺産も受け取ることができます。
配偶者居住権と合わせて、どちらも配偶者の老後の生活に配慮した制度となっています。
配偶者にとって有利な制度改正ですが、やはり制度だけに頼らず、生前の遺言や贈与などはしっかり実施しておきたいところですね。