ある新米教師が読み書きも出来ない1年生をたった1年で3年生の能力に引き上げた方法

経営

 アメリカのNPOプログラムによりアトランタの小学校へ担任教師として赴任したクリスタル・ジョーンズ。彼女の受け持ったクラスの生徒達は読み書きはおろか、教室で授業を受ける習慣すら知らない子供の集まりだった。しかし1年後、クラスの生徒達の90%以上が、3年生と同じか、それ以上の読み書き能力を身につけることになる。彼女の施策とは?

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読み書きも出来ない小学1年生のクラスを受け持ったクリスタル・ジョーンズ

 アメリカの教育NPOティーチ・フォー・アメリカ(Teach For America、TFA)は、アメリカ国内の一流大学の学部卒業生を、教員免許の有無に関わらず大学卒業から2年間、国内各地の教育困難地域にある学校に常勤講師として赴任させるプログラムを運営している。

 このプログラムに加わったクリスタル・ジョーンズは、ジョージア州アトランタのとある小学校で、1年生のクラスを担当することになった。

 ところが学年が始まる9月の時点で、児童の能力には大きな差があり、既に幼稚園の必修単語を理解している子供がやっと2〜3人いたかと思えば、アルファベットや数字が読めない、中には鉛筆さえ持てない、教室で座ることを知らない子もいたという。

 要は、彼女の担当クラスに小学校1年生の、まともな学習能力を持った生徒はいなかったのである。

 ところが、彼女が翌年の9月に生徒達を2年生に進級させた頃には、クラスの90%が小学校3年生、もしくはそれ以上の読み書き能力を持つようになっていた。

 彼女が生徒達に、近い将来に実現できる鮮明な未来像を抱き、自発的にワクワクしながら行動するよう「目的地の絵はがき」を描いたからだ。

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小学生達の学習を飛躍させたジョーンズの施策

 同じティーチ・フォー・アメリカに加わったメンバーの多くは、生徒達の学習能力向上について複雑な数値目標を掲げ、生徒達に共有し、実行の過程で挫折した。

 代わりにジョーンズが行ったことは、小学校1年生の子供なら誰しもやる気が起きて、実現できそうな、実現できれば嬉しいと感じる目標を掲げることだった。

 それは、「今年度の終わりまでに、3年生になりましょう。」という目標だった。

 彼女はこの目標が子供達を動かすと予め算段していた。

 なぜなら、読み書きができない小学校1年生であっても、小学校3年生がどんなものかを知っているからだ。

 大きくて、頭が良くて、かっこいい。それが小学校1年生から見た小学校3年生である。

 彼らのスタート地点の現実を冷静に見極めたうえで、現実的な小学校3年生のカリキュラムも把握し、小学校6年生ではなく小学校3年生になりましょう、と目標を共有したのだ。

 これに加えて彼女は、学習文化を知らない生徒達に学習文化を根付かせるため、生徒を「学者さん」と呼び、生徒同士でも「学者さん」と呼ぶ習慣を身に着けさせた。

 学者とはどのような意味かを説明し、生徒達に「あなたは学習ができる、学習を仕事とする凄い人」という意識を植え付けたのである。

 子供達のその後の反応はといえば、何らかの理由で授業に出られない生徒がいる場合、「◯◯は学者の仕事ができなくて可哀想」というものであった。

 結果、半年後には子供達のテストスコアは2年生レベルに到達し、年度末には3年生レベルに到達していたのである。

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人を動かすのは、短期的で同じ目線を保ち、なおかつ感情を揺さぶる目標

 私達は常日頃、変われない人を変えようと思う時、どうしても数年先、数十年先の壮大な未来や目標を繰り返し共有し、相手に心理インパクトを与えれば、人は動くと考えがちだ。

 しかし、実際のところは、その逆であることが多い。

 人を動かすのは、短期的に実現するかもしれない、相手に「できる」と思わせるレベルに目線を合わせた、感情をゆさぶる未来や目標である。

 ジョーンズの場合も、1年生の生徒達に、1年間という短いスパンで、自分たちでも想像できる未来(3年生)という、かっこいい(憧れ)と思わせる目標を設定した。

 もしも「笛吹けど踊らず」な状況が、あなたの組織にあるのであれば、ジョーンズの例を踏まえ、目標設定の方法、目的地の指し示し方を一度変えてみるのはいかがだろうか?

事例参照:

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