フィンランド ムーミンが生まれた国の知的な制度に学ぼう

経済

 世界的人気小説・漫画の「ムーミン」作者であるトーベ・ヤンソン生誕100周年を祝い、今年はフィンランドに注目が集まっている。フィンランドでは近年世界的な大ヒットスマホゲームを生み出す世界有数のIT大国ともなっている。なぜ北海道程の小さな国で優れた技術が生まれるのか?その背景にある優れた制度をご紹介したい。

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フィンランドで大ヒットゲームは生まれる

 世界的人気小説・漫画の「ムーミン」作者であるトーベ・ヤンソン生誕100周年を祝い、今年はフィンランドに注目が集まっている。

 しかし、フィンランドが産んだ優れたコンテンツはムーミンだけでない。

 クラッシュ・オブ・クラン(Clash of Clans)、アングリー・バード(Angry Birds)と言えば、多くの人に知られるスマホゲームであり、フィンランドが産んだ世界的大ヒットゲームである。

節約社長
クラッシュ・オブ・クラン (Clash of Clans)

 世界で1億ダウンロードを達成したアングリー・バードを作ったロビオ・エンターテインメント社は2003年にヘルシンキ大学の学生が設立した企業だ。世界122カ国でApp Storeナンバーワンを記録したクラッシュ・オブ・クランを制作したスーパーセル社は、今やフィンランドを代表するゲームメーカーで、2013年に日本のガンホー/ソフトバンクの子会社となった。

 フィンランドはフィン人が人口の約91%を占め、人口わずか530万人程度だが、一人あたりの名目GDP(国内総生産)は世界12位に位置する有数の経済大国だ。更に2012年にはThe Earth Institute(英語版)により、フィンランドは国民総幸福量(GNH)がブータンについで、世界2位であると報告された。

 繁栄の裏でフィンランドには、幾多の外圧危機をくぐり抜けてきた多難の歴史がある。

 中世から近世にかけては北欧の大国だったスゥエーデンに支配され、18世紀にはスゥエーデンに代わりロシア帝国の支配下に置かれた。1900年前半台に独立したのもつかの間、第二次大戦では、ソ連の進行に対向するため枢軸国(独・伊・日)側へ付き、それを理由に敗戦国となったのである。

 第二次大戦終了後、軍事面・外交面ではソ連の影響下におかれたが、それでもフィンランドは地の利と知恵を活かした貿易を中心とする経済政策により、外貨を蓄え、社会を豊かにするユニークな取り組みを生み出してきた。以下ご紹介する。

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フィンランドの知的で合理的な取り組み

1)フィンランド・メソッド(教育システム)

 フィンランドの教育水準は世界トップレベルであり、経済協力開発機構(OECD)による国際的な生徒の学習到達度調査では、毎回トップ5に入る。教育水準を押し上げているのは「フィンランド・メソッド」だ。フィンランド・メソッドとは、生徒を競争による相対評価ではなく、達成度によって評価するシステムのことである。中学では成績が低い30%の生徒が特別学級に振り分けられるか、補習授業を受ける仕組みになっている。低学力の生徒に対する個別の教育は、落ちこぼれを学校ぐるみで防ぐ合理的な制度として世界で知られている。

2)タイムバンキング制度(労働時間集約システム)

 フィンランドは、もともと男女同権思考が強い国だ。国会議員の40%近くが女性(日本は9%強)であり、医師と弁護士の50%は女性である。日本のように「女性が活躍するための制度」を国が設けなくとも、子供を持った女性が活躍できる制度が多くの企業で採用されている。タイムバンキングは、仕事が多い時期に時間外労働をして、閑散期に多く休みを取るといった体制で社員の私生活にも配慮した雇用制度である。男女関係なく利用することが可能であり、労働の対価を時間ではなく仕事の対価で見ることが可能な優れた制度である。

3)「テケス(技術庁)」と「スラッシュ」による国をあげたIT振興

 1990年台前半に深刻な経済危機へ陥ったフィンランドは、官民あげて、それまでの林業など資源に依存した産業構造を再構築した。テケス(技術庁)はその中心として、企業や大学の研究開発事業の資金援助と調整の援助を行っている。公的機関でありながら積極的な自らの投資と、海外からの投資を呼びこむ役割を担っている。ノキアなき後は、スタートアップ企業を支援するフィンランドのNGO組織「スラッシュ(SLUSH)」のヨーロッパ最大規模となるITカンファレンスをも積極的に支援している。前述の世界的大ヒットゲーム「アングリー・バード」が生まれたのもスラッシュだ。

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おまけ・フィンランドは世界有数の親日国

 フィンランドは世界有数の親日国でもある。

 フィンランドでは毎年「桜まつり」が開かれ、フィンランド人は公園の桜堤で一堂に会し、桜を愛でながら和太鼓や剣術、パラパラやコスプレなどの日本文化を楽しむ。

 歴史的な経緯もある。

 まず、日本は日露戦争でフィンランドの敵国であるロシアを負かしたことで、独立前にロシアの圧政状態にあった多くのフィンランド国民を勇気づけた。

 更に1921年に、国際連盟の事務次官であった新渡戸稲造が、フィンランドとスウェーデンの間で起こっていたオーランド諸島の領有権争いを「統治はフィンランド、言葉や文化風習はスゥエーデン」という画期的な執り成しで裁定し、問題解決にあたった。

 オーランド諸島は現在フィンランド自治領として、大幅な自治権を移譲され、平和的な領土問題の解決モデルの1つともなっている。

 次は日本がフィンランドから学ぶ番だ。

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