就任後100日のアンケートで、歴代最低の支持率を記録したトランプ政権。にも関わらず、株価は上昇し続けてきました。ところが、ここに来て、大統領選挙へロシア政府が関与した疑惑で、アメリカの株式とドルが一気に売られ始めました。これまで上昇してきたワケと、一気に売られたワケをわかりやすく簡単な言葉でお伝えします。
歴代最低支持率のトランプ政権と株価上昇の怪
トランプ大統領は、大統領選で保護主義貿易や人種差別問題など、批判される内容を多く公約に掲げていました。
そのため、マスコミではトランプ大統領批判が相次ぎ、それが世論となって支持率の低下につながっています。
ABCニュースとワシントン・ポストが、就任100日を契機に行った調査では支持率42%と、歴代大統領の平均支持率69%を大幅に下回り、歴代最低の支持率という結果も出ています。
一方で、米国株式市場はトランプ大統領就任以来、大幅な上昇を続け、史上最高値を更新中です。本来、人気のない大統領が就任すれば株価が上昇することは考えられないことです。
ニクソンしかり、カーターしかり、ブッシュ(子)にいたるまで、歴代大統領の中でも人気のない人物が大統領に就任した年は、株価が下落しやすい法則があるからです。
なぜトランプ政権下で株価は上昇を続けたの?
では、なぜトランプ大統領就任の今年、NYダウは大幅な上昇を見せているのでしょうか?
実は、この上昇にはトランプ大統領が掲げた公約「法人税の大幅減税」が大きく影響しています。
現在の米国における法人税の実効税率は、国税・地方税等を合わせて約40.75%(財務省発表カリフォルニア州)と、世界で最も高水準に設定されています。
第2位はフランスの33.33%。ちなみに日本は29.97%です。これをイギリスの20%を更に下回る15%まで引き下げようとうするのが、経済政策のトランプ大統領の政策における目玉なのです。
もし、企業が100万ドル稼いだとすると、今までは税引き後利益が59.25万ドルでした。
これが85万ドルになるわけですから凄い税制改革ですね。
仮に、1株利益で考えると59.25ドルの株が85ドルになるわけですから、PER(株価収益率)10倍が市場平均とすると、592.5ドルの株が850ドルに値上がりするということを意味します。
しかも、法人税率が先進国で最も安くなると、海外の企業が米国に拠点を移してくる、Googleやアップルのように租税回避していた米国の優良企業が本国に戻ってくる、というメリットも生じます。
トランプ政権が低支持率であっても株価が上昇してきた背景には、これらの期待による下支えが存在したのです。
ロシア疑惑を発端として株式・ドル共に売られたワケ
しかし、これだけの減税を行うにしても、財源が無ければ実行は不可能です。
これまでトランプ大統領は、外国からの輸入、特にメキシコのような国からの輸入に課税し、財源を確保する仕組みを訴えてきましたが、これも諸外国からの強い反抗に合い、上手く進んでいるとは言えません。
従って、無い袖は振れないと冷静に考え、トランプ大統領の減税実行を危ぶむ声は、これまでも多く上がっていました。
しかも今回、トランプ大統領が選挙へのロシア政府による関与疑惑で退陣に追い込まれれば、法人税減税を主体とした政策は完全に没になる、という思惑が広がっています。
これが、米国株式もドルも売られる動きにつながっているのです。
ただし、米国の憲法では大統領が弾劾されて辞めた場合、副大統領が大統領になります。
現在は、与党共和党が上院・下院ともに過半数を占めているので、トランプ大統領が辞めさせられても共和党政権が続きます。
ですから、ペンス副大統領がそのまま「トランプ政策を続ける」と言えば、大型減税は可能です。
とはいえ、実際にトランプ大統領が辞めれば、大幅減税を強力に推進する原動力を失うこととなるため、減税自体が無くならないとしても、減税率の縮小が余儀なくされる可能性は高いと考えられます。
景気拡大を背景に上昇した分もありますが、減税期待で上昇を続けた米国株にとって、「大幅減税」が無くなるというイメージが与える影響は、決して小さいものではありません。
疑惑が晴れない限り、株式市場では不安定な動きが続くことでしょう。