課税売上高が1,000万円以下の免税事業者と取引している場合、免税事業者が消費税を支払わないならば、自分たちの仕入れも課税仕入の対象とならないのではないか?という疑問が沸き起こります。実際にはどうなのか、国が定める課税仕入の定義を見ながら考えてみましょう。
免税事業者からの仕入れは課税仕入にしなくてOK?
個人事業主や小規模企業のうち、課税売上高が1,000万円以下の場合、消費税の納税義務は免除されることになっています。
この条件に該当する事業者は「免税事業者」と言われます。
さて、この免税事業者について、3月期末で決算の近い経営者の中には、免税事業者との取引について、“あるアイデア”を考えつくかもしれません。
免税事業者が消費税を納めてない以上、「この事業者から仕入れた商品が課税仕入の対象とならないのではないか?」「ならば、自分たちもこの分について消費税を支払わなくても良いのでは?」というアイデアです。
というのも、消費税はあらゆる消費に課せられ、税金を支払う人と税金を国に収める人が異なる間接税という側面を持っており、たしかにそう考えられなくもありません。
実際のところどうなのでしょう?
免税事業者からの仕入れも課税仕入の対象!
この点、消費税法基本通達は以下のように、課税仕入の意義を定めています。
法第2条第1項第12号《課税仕入れの意義》に規定する「他の者」には、課税事業者及び免税事業者のほか消費者が含まれる。
つまり、自らが課税事業者であるなら、免税事業者から商品を仕入れたとしても、課税事業者から仕入れた時と同じように、その仕入れについて消費税を支払わねばなりません。
消費税の納付税額は、
- (課税期間中の課税売上げ等に係る消費税額)−(その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額(仕入控除税額)
という計算の元で求められます。
この場合の課税仕入れとは、
- 商品などの棚卸資産の仕入れ
- 機械や建物等の事業用資産の購入又は賃借
- 原材料や事務用品の購入
- 運送等のサ-ビスの購入など
など事業のための購入にかかるもの全てを指します。
すなわち、消費税の納税義務は、仕入れた業者の区分によって生じるものではなく、消費の目的に応じて発生するものなのです。
消費税が非課税でOKな取引は限られている
ちなみに消費税が非課税な取引は、
- 1)保険診療収入
- 2)介護保険対象サービス
- 3)整体院・治療院などの保険適用分
- 4)不動産の賃貸による家賃収入
- 5)投資ビジネスで得る売却益
などに限定されています。
それぞれが消費するものではなかったり、社会公共的に消費税を課税することが望ましくないものばかりです。
免税事業者か、そうでないかは、課税仕入の計算と何の関係も無いことを、ぜひ覚えておいていただければと思います。