税務調査は確率こそ低いとは言え、数十万人単位で個人に対しても行われます。そこで本稿は、個人に対して行なわれる税務調査でツッコミを受けやすい2つの点をご紹介します。また、個人事業主が法人成りした場合、個人時代の確定申告内容が引き継がれるのか?という疑問にもお答えいたします。
毎年数十万人に実施される個人対象の税務調査
個人の確定申告期間真っ只中、すでに申告を終えた人、まさに今準備中の人、全くの手つかずでこれから準備する人、様々いると思います。
会社と比べると頻度は低いですが、この確定申告をもとに個人事業にも税務調査が行われます。
最新調査によると調査が行なわれる確率(実調率)は1%程度。法人の実調率3%と比較すれば非常に少ない数字に思われます。※
ただし、母数となる確定申告者の数は毎年2,000万人以上ですから、20万人に税務調査が入ると計算すれば、いつでも税務調査に対する備えを行う必要があると言えるでしょう。
そこで本稿は、
- 個人の税務調査で問題になりやすい2つの点
- 個人事業主の確定申告内容は法人成りした後も引き継がれるのか?
という2つの気になる点を探ってみたいとい思います。
個人の税務調査でツッコまれやすい2つの点
まず、個人の税務調査でよく問題になる2つの点についてご紹介します。
1)生活費との混同
とにかく領収書を集めまくって、経費で落として税金を安くしようとする人がいますが、これはもちろんNGです。
経費として認められるのはあくまで事業で使用したものだけです。
事業とそれ以外で共通して使っているような場合は、案分計算をして事業の使用分だけを取り込まなければなりません。
例えば自宅家賃や水道光熱費、電話代など、車を事業と兼用で使用していれば、ガソリン代や税金・保険代、車の減価償却費も案分して計上しなければ、税務調査ではこれらの項目にツッコミが入ります。
2)現金主義
通帳に入金された時や、現金でもらった時に「売上」計上、支払ったり振り込んだ時に「費用」計上する方法を、現金主義といいます。
例えば12月の売上であっても、その入金が1月であれば1月の売上として計上します。
この現金主義、わかりやすいためついついやってしまいがちですが、これが認められるのは「青色申告+小規模事業者」の要件を満たす人が税務署に届出を出した時です。
もし12月の売上を入金された1月の売上としてしまうと、売り上げの計上漏れとして指摘されてしまいます。
個人の申告内容は法人成り後も引き継がれる?
次に、個人事業主として確定申告を続けていたが、幸いにも税務調査に入られず、そのまま法人成りを果たしたとします。
この際に、個人事業主としての確定申告内容が、法人成りした後も引き継がれるのか?という疑問が浮かびます。
結論から言うと、個人事業から会社を作って法人成りした時にも注意が必要です。
確かに個人事業は所得税、会社は法人税の部署が担当するため、例えば個人事業の税務調査に来た調査官が、法人成り後の会社も調査するということはありません。
ただし、引き継ぎの有無を確認される場合があります。
個人事業から法人成りをしてもやってることに何も変わりがないように感じますが、法律上は個人から法人へと、全く別のものに変わっています。
もし法人成りの時点で棚卸資産や事業で使用している固定資産を所有していると、個人から法人へ売却した、あるいは無償で贈与したとみなされます。
そうすると個人では、消費税や事業所得・譲渡所得の修正、法人では受贈益の計上などが必要となる可能性が生じるのです。
つまり、個人事業主時代の申告がきちんと行われていないと、法人成りした後も影響が少なからずあると言って良いでしょう。
法人成りを検討しているならば、これらの知識を踏まえて、適正な確定申告を行う必要があります。
※税務行政の現状と課題 国税庁
https://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/shingi-kenkyu/shingikai/150309/shiryo/pdf/04.pdf