「従業員が休憩時間に外へ行くことは認める。ただし、許可制にしたいのだが、法的に問題は無いだろうか?」管理型の勤務形態を目指す社長からアドバイスを求められた筆者。果たして皆さんはこの答えはYESかNOどちらだと思われますか?答えは休憩時間の意義と企業が抱えるリスクを突き詰めれば見えてきます。
自由な働き方推進の一方でリソース管理を求める動きも強い
日本ではワークライフバランスという言葉と共に、働き方の多様性へ向けた労働環境の整備に強い関心が向けられています。
一方、米IBM社では全従業員に対して、自宅勤務からオフィス勤務を促す声明を2月前半に発表しました。
自宅勤務を一周クルッと回してみたけれど、まだオフィス勤務のほうが社員を管理できて生産性が高いと見たのでしょう。
日本でも、「自由な働き方が次世代の働き方」と言う人がいる一方で、労働基準法に則り、今まで以上に従業員の勤怠について、きっちりと管理する企業が増えています。
特に、コンサルタントさんが入った会社などは、それこそ休憩時間や出勤・退勤時間に至るまで、全てが可視化できる状態となっているのをお見受けします。
私の元へも、クライアント様の一件から「従業員が休憩時間に会社から外出する際は、許可制にしたい。法的には大丈夫か?」と相談が入りました。
この会社様も、どちらかといえば、先進的な企業です。
果たして休憩時間の外出まで許可制にして管理できるほど、会社は従業員に対して権利を行使できるのでしょうか?
休憩時間の外出を許可制にすることは可能か?
休憩時間とは、従業員が権利として労働から離れることを保障されている時間を言います。
そして、休憩時間は、従業員に自由に利用させなければならないとされています。
ところがです。
確かに、法律の原則は、自由利用なのですが、現実問題として完全に自由としてしまえば、様々な問題が生じる可能性があることも、容易に想像できます。
例えば、休憩時間中にパチンコ等のギャンブルを行ったり、宗教活動や物品販売等を行う者も出てくる可能性があります。
先程の社長様もこれらに近い実態があり、先程のような許可制を検討されたようです。
実際、このような行為は会社の信用を損なう恐れをもたらし、風紀上でも大きな問題となります。
会社がそれを「良し」としてしまえば、それで問題ないのですが、通常は、職場の風紀や規律を乱す行為を看過する会社はありません。
休憩時間であっても、それらの行為に対して制限を加えられることは、当然のことと言えます。
休憩の目的を損なう制限は法律違反の対象に
休憩時間中に外出する場合の許可制を導入することが、それだけで必ずしも労働基準法違反となるわけではありません。
ただし、休憩時間に制限を加えることができるのは、あくまで休憩の目的を損なわないことが前提となります。
社内に電話に出る者がいなくなり、それを避けるために許可制にするような場合は、従業員にとって休憩の自由利用が妨げられる結果となってしまいます。
このような場合の許可制は、法律違反となってしまう可能性が高いと言えるでしょう。
ですから、休憩時間の制限は常識的な判断で決めれば良いかと思います。
労働者と歩み寄った常識的範囲で決め事を作る
休憩時間の自由利用については、現在のような多様の雇用形態では、なかなか1つの基準内で収めるのは難しいのが現実です。
経営者側も労働者側もある程度歩み寄った、常識的な判断で決めるのが現実的かと思います。
もし、休憩時間に何らかの制限を加えるのでしたら、それは会社内のルールとなりますので、就業規則に必ず記載するようにして下さい。
就業規則に記載がないと、その都度、都度で違った対応となってしまう場合が考えられ、かえって混乱してしまう結果となる恐れもあります。
あくまでも休憩時間は、労働から離れることを保障されている時間なのです。