労働基準監督署の呼び出し調査の実態を社会保険労務士が解説【事例あり】

労務

みなさんこんにちは。
組織活性化プロデューサーの南本です。

労働基準監督署の呼び出し調査というものがあります。

ある企業様にちょっと付き添って参加したので、令和2年10月時点で、労働基準監督署が中小企業に対してどのような調査をしているのかの実態を報告します。

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労働基準監督署の呼び出し調査の実態

労働基準監督署からの呼び出し調査の実態

それでは、労働基準監督署からの呼び出しから、実際にどのような調査が行われているのかというところまで具体的にお話したいと思います。

労働基準監督署からの呼び出し

労働基準監督署の調査は「労働条件に関する調査の実施」という名目で行われます。

労働基準監督署から約2時間の予定で行うということと、事前に提出してくださいというものがレターで届きます。

そこには、出勤簿、賃金台帳、就業規則、雇用契約書、36協定書、変形労働制度の協定書、有給休暇管理簿、健康診断個人票を持ってきてくださいと書かれています。

調査現場の日常

どのような調査が実施されるかというと、中堅担当官と若手担当官の2人で調査を行います。

私が帯同した企業の調査時間は2時間の予定がなんと3時間半でした。

調査は持参資料を1つ1つ細かく細かく見て、それについて質問が来ます。

答えられないと是正勧告というようなやり取りがありました。

この企業は、今コロナ禍で厳しい業態の企業でしたが、不景気だからとか、コロナ禍だからという人情論は全く通用しませんでした。

彼らにとっては、労働基準法や労働安全衛生法といった労働関係の法律が全てなので、ここまでされたら潰れてしまうといった状況は全く関係なく、同情の余地がないという感じです。

労働基準監督署単位で、2人担当の一組について月40社から50社を呼び出しているようなことを言っていました。

年間1組あたり600社も呼び出しをくらっている感じです。

労働基準監督署の主目的

残業をチェックして、不正な未払いがあれば、是正勧告を出すことが目的なのですが、今の労働基準監督署の名目のすべては健康管理です。

健康が大事なので、労働時間を短くして、残業時間を減らすようにし、健康診断を受けさせて、有休休暇を5日以上取らせることを義務化されたように従業員をリフレッシュさせるという健康管理の意味合いで呼び出しをして調査をしています。

名目は健康管理ですが、実際に切り込んでくるところは、やはり総労働時間を減らしていくということで、残業代未払いのような不正があると支払うように言ってきます。

労働基準監督署も担当1組で50社ぐらい調査するということであれば、その管轄の中小企業はまんべんなくまわっていくのではないかと思います。

その中でもどうしても労働時間が長くなりがちな業態があります。

労基署の担当者も成績主義だと思うので、そのような業種業態をピンポイントで狙ってくると思います。

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調査現場の顛末

調査現場が結果的にどのようなものだったかというと、かなり厳しめの是正を求められる感じです。

嫌味を言いながら、厳しい雰囲気を醸し出しながら、1時間半ぐらいいろいろ資料を見ながら、ヒアリングを受けて、それでは厳しめの是正勧告書を作りますといったような雰囲気を出して一旦2人とも中座します。

30分後にまた来ますと言いながら、結局1時間半後に戻ってきて、そこからまた30分間で報告といったような流れです。

ですから合計3時間半かかりました。

途中、その2人組のリーダーの人は嫌味を言いながら、責め続けてきたので、どれだけ厳しい是正勧告を受けるのかと怯えていたのですが、出てきたものは普通レベルのものでした。

この先1か月くらいかけて、残業代などしっかり支払いましょうというものでした。

どうして啖呵を切ったそのリーダーが90分もかかって普通のレベルの勧告書になったのかというと、推測ですが、多分リーダーの上のボスがこのコロナ禍のご時世に中小企業を潰さないように、救っていかないといけないという国の方針を組んだのだと思います。

私の勝手な憶測ですが、中小企業政策をきちんと理解したボスがいて、その人がこれだけ厳しい是正勧告をすると、企業が潰れてしまうといって釘を刺してくれたのではないかと思います。

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労働基準監督署の呼び出し調査の実態:まとめ

労働基準監督署からの呼び出し調査の実態:まとめ

中小企業の社長さんにお伝えしたいこととして、労働時間がどうしても長くなりがちな業態には必ず労基署から調査が入ると思ってください。

物流業や小売業、飲食業、IT関連業などの業態に労働基準監督署の担当者も絞ってやってきます。

その覚悟をしながら、皆さんも顧問の社労士さんと最低限の準備は必要だということをお伝えします。

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労働基準監督署の呼び出し調査の実態

 

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南本 静志

和歌山生まれ。株式会社紀陽銀行入行。銀行業務を2年程度経験後、システム部へ異動。

システムエンジニアとして銀行オンラインシステムや情報系のマーケティングシステムの構築で活躍する。

30歳代の後半には日本ユニシスに出向し、金融機関向けCRMマーケティングシステムの業務設計のリーダーを任される。その後、コンサルタントとして独立、現在は東京千代田区で経営コンサルティング会社と社会保険労務士事務所を設立し、代表に就任。

中小企業診断士及び社員を持つ経営者としての立場で、幹部社員(部長、課長、係長等)を次期役員に昇格させるようなマネジメント系の人材育成プログラムに強みを発揮している。また、初級管理職(主任や中堅リーダー)に対するモチベーション研修や自己発見研修も得意。

アールイープロデュース 

適性検査Cubic(キュービック)

東京中央社会保険労務士事務所

東京中央給与計算センター

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