直近、ロイターが行ったトランプ政策「入国禁止」に対するオンライン調査では、賛成派が反対派を上回り、トランプ大統領を指示する人が多いという結果が報道されました。しかし、過去2年の間に電話調査で同じ質問をした統計では、反対派が賛成派を上回る結果が出ています。アンケート手法が変わるだけで相反する結果が出たのはなぜでしょうか?
「入国制限・禁止」オンラインのアンケート結果はトランプ支持派が多数
こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。
今回は、難民・移民の米国への入国を禁止する大統領令に対する、米国民のアンケート調査結果について考えてみたいと思います。
この大統領令を巡っては現在、政治と司法との全面対決の様相を示していますね。
さて、ロイター/イプソスが1月31日に発表した米国国民の「オンライン意識調査」によると、トランプ大統領が発令した「難民・移民の入国制限」について、「強く支持する」「ある程度支持する」の合計が全体で49%。一方、「強く反対する」「ある程度反対する」の合計は同41%でした。
単純に解釈すると、大統領令に反対する米国民よりも賛成する米国民のほうが多いということになり、トランプ大統領としては、国内外の批判もなんのその、「私の大統領令は国民の支持を受けている」と主張することもできるわけです。
オンライン調査と電話調査で国民の意見が変わるのはなぜ?
ただ、過去に実施された調査では、今回のロイター/イプソスとは反対の結果を得ている場合もあるのです。
過去2年間に様々な形で行われた「電話調査」の場合、平均すると米国への移民を制限することに対する「反対」が56%にのぼり、「支持」は39%にとどまっています。
しかし、オンラインで回答できる「ネット調査」の場合では、その結果を平均すると支持が49%、反対は39%と、今回のロイター/イプソスの調査結果と同様の結果になっています。
あれ、同じような調査なのにこんなに違いが出てしまうのか、と驚かれる方もいらっしゃるでしょう。「電話調査」と「ネット調査」の回答の違いはなぜ生じてしまうのでしょうか?
過度の専門的な議論は避けますが、一番大きい要因としては「社会的望ましさバイアス」の存在が考えられます。これは、他者に対して自分が「好ましい人物であると思われたい」という欲求からくるものです。
難民・移民は、それぞれの国の内紛などに巻き込まれた被害者であり、「かわいそうな人たち」であるわけです。
そうした人々に手を差し伸べるのは社会的には望ましいこと。したがって、他者に対しては、「自分は難民・移民の入国制限には反対する」という意思表明を行うべきということになります。
ですから、電話をかけてきた調査員に、「難民・移民の受け入れ制限に賛成しますか、それとも反対しますか」と聞かれたとき、ストレートに「賛成」とはなかなか答えにくい。
社会的望ましさバイアスが働いて、ついつい「反対」と答えてしまう可能性が高いと考えられるのです。
一方、ネット調査の場合、オンラインの調査フォームに一人で回答する形ですから、「社会的な望ましさバイアス」がかかりにくい。要するに、自分の気持ちに正直に答えることが、より容易になると考えられます。
アンケートで拾えるのはあくまで「総論」意見
こう考えると、オンラインのアンケートスタイルで実施された「ロイター/イプソス調査」は米国民の「本音」を表していると言えるのかもしれません。
まあ、「本音」とはいっても、“総論賛成、各論反対”のところがあるでしょう。
困っている難民・移民を助けてあげたいのはやまやまだけど、自分の仕事が奪われるかもしれない、一部の難民・移民による犯罪に巻き込まれるかもしれない、という不安があり、できればそんな不安の種を増やしたくないという感情がアンケート回答に反映されているのだと思います。
さてさて、今回の大統領令の行く末、どうなりますかね?
第三者としては、ヒューマニズムの視点からも、極端な入国制限としか言えない大統領令は無効化してほしいと願っています。
Photo credit: DonkeyHotey via Visual Hunt / CC BY-SA