働き盛りの30~50歳代に拡大急増する健康食品の定期購入トラブル・その実態

時事

 ここ最近問題となっている健康食品の通販定期購入トラブルですが、30~50歳代の相談が急増しているようです。主にその要因は、ネット通販を利用した際の定期購入トラブルに端を発するようです。多くの人が利用するSNSなどが流入経路となっており、誰もがその被害者となる可能性を秘めています。本日は神奈川県内で寄せられた苦情相談を引き合いにその実態をお伝えします。

スポンサーリンク

健康食品の通販定期購入トラブルで30~50歳代の相談が急増

 ここ最近問題となっている健康食品の通販定期購入トラブルですが、30~50歳代の相談が急増しているようです。

 平成28年度上半期の神奈川県内における消費生活相談では、「健康食品」に関する苦情の契約当事者の年代別構成比が、3年前と比べて大きく変化していました。

 一方、平成25年度に問題となった「送り付け商法」相談も、先日寄稿した「(株)たんぽぽ」の事案のように依然70歳以上の高齢者層ではありますが、問題となっています。

 今回は、高齢者だけでなく、30~50歳代の働き盛り世代にも広がる健康食品トラブルについて、以下ご紹介します。

スポンサーリンク

30〜50歳代の働き盛り世代が抱える通販定期購入トラブル〜神奈川県の場合

 相談内容の詳細は、以下のとおりです。

平成28年度上半期 神奈川県内における消費生活相談概要
(2016年12月22日 神奈川県)
<分析の対象>
分析データ:神奈川県及び県内の市町村の相談窓口で受け付けた苦情相談で平成 25 年度から平成27 年度までの各年度及び平成 28 年度上半期の全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)の登録データ
分析項目:「健康食品」に関する苦情相談
相談事例:平成 28 年度上半期に受け付けた苦情相談から抽出

●「健康食品」に関する苦情相談は前年度同期と比べ66.9%増加

 平成25年度に主に「健康食品の送り付け」により急増した後、翌年度にはほぼ以前の件数に戻った。

 平成27年度以降、再び増加傾向にあり28年度上半期は再び増加。

 998件で、前年度同期(598件)と比べ 400件(66.9%)増加し、苦情相談総件数全体に占める割合は約3.1%となっている。
節約社長
健康食品相談件数(神奈川h28上)

●苦情相談の契約当事者の年代、30~50歳代が急増

 平成28年度上半期で最も件数が多い契約当事者の年代は、「40歳代」の216件(構成比21.6%)、次いで2位は「50歳代」の155件(15.5%)、3位は「30歳代」の145件(14.5%)となっている。

 各々の構成比は年々増えており、平成25年度には1位が70歳代、2位が80歳以上で、70歳以上の高齢者が7割近くを占めていたことと比較すると、「健康食品」に関する苦情の契約当事者の年代別構成比が大きく変化している。
節約社長
健康食品相談件数_年代(神奈川h28上)

●苦情相談の販売購入形態は「通信販売」が74.3%

 平成28年度上半期で最も件数が多い販売購入形態は、「通信販売」の74.3%(741 件)。

 「通信販売」の構成比は平成25年度の構成比は25.1%でしたが、26年度42.0%、27年度59.5%と、年々増加している。

 一方、平成25年度最多の49.4%を占めた「電話勧誘販売」は構成比が年々減少し、28年度上半期では7.4%まで減少している。
節約社長
健康食品相談構成比_購入形態(神奈川h28上)

●契約に至った広告媒体、「電子広告」が圧倒的多数で3年前の4倍以上。SNS経由が増加

 契約当事者がどのような広告を見て契約に至っているか、広告媒体別にみると、「電子広告」が圧倒的多数を占め、平成28年度上半期には半年間で 483件と平成25年度の4倍以上に増加している。

 電子広告の中で特に増加しているのが、「SNS の広告を見て」という相談で、平成25年度には37件であったものが平成28年度上半期には半年間で58件まで増加。

相談例:

SNS のバナー広告をクリックすると販売会社のサイトに誘導される。

「10キロ痩せたという女性モニターの体験談をSNS広告で見て」「写真を共有できるSNSで芸能人も勧めるダイエット健康食品の広告を見て」申し込んだなどの相談。

 一方、「新聞広告」「テレビ広告」など他の媒体はほぼ横ばいか減少傾向となっている。
節約社長
健康食品相談件数_媒体(神奈川h28上)

●相談内容キーワードは「解約」「インターネット通販」「電子広告」「連絡不能」

 相談内容の上位は、平成27年度及び平成28年度上半期の1位は「解約」(606件)、2位は「インターネット通販」(589件)、3位は「電子広告」(483件)となっており、28年度に入って「連絡不能」(302件)が4位に上がっている。

 28年度上半期について契約当事者の年代別に比較すると、相談件数が大幅に増加した40歳代を中心に30歳代以下及び50歳代、60歳代もほぼ同様の傾向となっている。

 「無料お試し」「お試し価格 500 円」などとうたう「電子広告」を見て契約し、定期購入であることに後から気付いて「解約」の連絡をしようとしても電話がつながらず「連絡不能」であるという相談が多く寄せられている。

 また、28年度は「痩身」や「効能・効果」などが上位に入り、広告にうたわれている「ダイエット効果あり」「バストアップ効果あり」などの効果が実感できないため「返品」したいという苦情も多い。

●70歳以上の高齢者は依然「電話勧誘」「強引」「無断契約」「代引配達」などが上位

 70歳以上の高齢者の相談が7割近くを占めていた平成25年度は「電話勧誘」「強引」「無断契約」「代引配達」「虚偽説明」というキーワードが上位となっている。

 28年度上半期においても、70 歳代及び 80 歳以上では「電話勧誘」「強引」「無断契約」「代引配達」などが上位に入り、高齢者においては「電話勧誘」で、「強引」に勧誘を受け、「代引配達」で料金を支払ってしまったことに関する相談や、申し込んでもいないのに「無断契約」され、商品を送り付けられたという「ネガティブ・オプション」の相談も依然多い。
節約社長
節約社長
健康食品相談内容(神奈川h28上) 健康食品相談内容_年代(神奈川h28上)

●健康食品摂取による体調不良相談も、平成28年度の上半期で既に25年度の2倍以上

 健康食品の摂取に伴う体の不調等の「危害」に関する相談件数は年々増加し、平成28年度上半期には半年間で86件と平成25年度の2倍以上となっている。

 内容としては、「下痢」「吐き気」「腹痛」「便秘」等の消化器障害や、「発疹」「かゆみ」等の皮膚障害等の発生が報告されている。

 中には、ダイエット効果をうたう錠剤を摂取して、甲殻類アレルギーが出たという苦情もあり、事業者に申し出ると「カニ・エビが含まれていることがサイト画面に表示されている」と言われたが、スマートフォンの画面では見づらくて気付かなかったという相談もあった。
節約社長
健康食品相談内容_危害(神奈川h28上)

スポンサーリンク

健康食品の消費者トラブルはネット通販の影響で若年へシフト

 このように、健康食品の消費者トラブルは、高齢者に対する強引な電話勧誘や送り付け商法(ネガティブ・オプション)から、60歳代以下の幅広い年齢層に対するネット通販での定期購入トラブルにシフトしてきていることが読み取れます。

 ここまで電子広告経由のネット通販による健康食品等の消費者相談が増加していると、法規制強化の動きが気になります。

 平成28年5月に成立した消費者契約法の改正では、消費者の利益を一方的に害する条項を記載した10条を改正し、これに該当する条項の例示として、「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな契約の申込み又は承諾の意思表示をしたものとみなす条項」が追加されました。

 わかりやすい事例でいうと、たとえば、定期購入型の通販などで「消費者が、継続購入が不要である旨の意思表示をしない限り、健康食品を継続的に購入する契約を結んだとみなす」といった内容の規約は無効とする、というものです。

 法改正の施行期日は平成29年6月3日となっていますが、施行日を待たずに昨年9月より、消費者委員会の「消費者契約法専門調査会」にて、第2次改正に向けた検討が行われています。

 検討課題として、(1)「勧誘」要件の在り方、(2)不利益事実の不告知、(3)困惑類型の追加、(4)平均的な損害の額の立証責任、(5)条項使用者不利の原則、(6)不当条項規制の更なる追加などの諸項目が挙げられています。

 電子広告(SNS含む)での“お試し”から定期購入に誘導する広告が『勧誘』とみなされ、規制対象となる可能性も懸念されます。

 今後の動きに注目しています。

時事
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
久保 京子

株式会社 フィデス 代表取締役社長

広告表示のコンプライアンスや消費者視点の顧客サービスを重視した、ネット通販マーケティングのコンサルティング会社です。

景品表示法や医薬品医療機器等法(旧薬事法)などの広告法務や、顧客満足を高める顧客対応など、ネット通販の「守り」の部分をバックアップします。

広告表示規制が強化される中、違法表記は企業の信用やブランド価値の低下など、致命的な事業リスクになりかねません。
また、拡散力が飛躍的に高まったネット時代のカスタマー対応は、ダイレクトに売り上げとコストに影響を与えます。

カスタマー対応はもとより、広告の違反基準となるのは、サービスの受け手である一般消費者目線です。
常に消費者目線を意識することが、事業のリスクマネジメントの基本となります。

お気軽にご相談ください。

取得資格
内閣総理大臣及び経済産業大臣事業認定資格 消費生活アドバイザー
※消費者と企業の懸け橋として、企業の消費者志向経営をサポート。
 消費者庁の法執行専門職員(景表法やJAS法などの違反被疑事案の調査補助を行なう)や、
 照会専門職(事業者からの相談対応)の要件となる資格。

サービス内容
法令順守広告制作・監修・コンサルティング
顧客対応・顧客情報活用コンサルティング
ECサイト改善コンサルティング

久保 京子をフォローする
節約社長