昨年の10月に厚生労働省は長時間労働の実態と、これを要因とする過労死等に対する対策を記した「過労死等防止対策白書」を公表しました。平成27年時点で、企業アンケートから長時間労働に対して、どのような実態が報告されていたのか全貌を把握できるため、一読してみることをお勧めいたします。本稿はその内容をかいつまんでご紹介します。
厚生労働省が「過労死等防止対策白書」を公表
昨年の9月30日に、2015年末に大手広告代理店・電通で起きた女性社員の過労自殺が、労災認定されたことが大きく報道されました。
何の因果か、翌10月7日には厚生労働省から、政府の閣議決定を経て「過労死等防止対策白書」が公表されました。
「過労死等防止対策白書」は、平成26年11月に施行された過労死等防止対策推進法に基づき、日本における過労死の現状や、どのような予防策があるかを記したものです。
本稿では、その内容について解説したいと思います。
「過労死等防止対策白書」が伝える国内労働実態
過労死等防止対策推進法は、過労死等の防止のための対策の推進・過労死等防止対策推進協議会の設置、組織の設置など、過労死対策を国の責務として定められた法律です。
「過労死等防止対策白書」は、同法に基づいた調査研究や啓発を主な内容とするもので、平成27年に政府が行った過労死等の防止対策、過労死の現実、遺族たちの体験談を含めた報告書となっています。
同白書によると、労働者1人当たりの年間総実労働時間は、平成元年時点で2074時間だったところから、平成27年には1734時間まで减少しています。
ただし、イギリスの1,600時間前後、フランス・ドイツの1,400時間前後など、欧州諸国と比較すると日本は、国際水準で未だに長時間労働をしている国と見なされます。
また、年次有給休暇と労働時間との関係をみると、週労働時間が長いほど、年次有給休暇の取得率は低い傾向にあることも判明しています。
正社員の約 16%が年次有給休暇を1日も取得しておらず、週労働時間が 60 時間以上の労働者では 27.7%が年次有給休暇を1日も取得していないのが現状だと報告されています。
発表された過労による自殺や死亡は氷山の一角
また、企業へのアンケート調査を行った結果として、過労死ラインとされる時間外労働時間月80時間を超えると回答した企業は22.7%あることも判明しています。
時間外労働者の多い業種は、
- 情報通信業⇒44.4%
- 学術研究、専門・技術サービス業⇒40.5%
- 運輸業、郵便業⇒38.4%
となっており、知的産業を中心として時間外労働が発生しやすいこともわかっています。
長時間労働(残業)が発生する要因としては、
- 業務量が多い
- 人員不足
- 業務の繁閑の差が激しい
- 顧客(消費者)からの不規則な要望に対応するため
これらの回答が企業からあがっています。
このような現状の元、平成27年度には長時間労働を要因とした自殺が93件、長時間労働等による脳・心臓疾患を要因とした過労死等が96件報告されていますが、これは氷山の一角と専門家は伝えます。
これら長時間労働の実態を伝える「過労死等防止対策白書」は、以下URLからダウンロード可能になっております。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000138529.html