残業減らしても伊藤忠は大幅の利益増見込む

企業分析

伊藤忠商事は2018年までに純利益を4,000億円に引き上げる計画を立てている。利益の最大化を追求すると共に同社が昨年から社内で朝方勤務推奨・残業禁止制度を敷いており、コストカットも実現している点は注目に値する。多様性の時代に利益を上げるため、自社に合わせた柔軟な勤務制度を構築する重要性が益々強まる。

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伊藤忠商事は3年で過去最高の純利益目指す

1月24日(金)の日本経済新聞で、伊藤忠商事が2018年3月期に純利益を4,000億円まで引き上げる計画である見通しが記事として取り上げられていた。

タイ政府系チャロン・パカポングループと共同で一兆円出資した、中国中信集団(CITIC)の持ち分法投資利益の増加が大きな源泉になると見られている。

配当も毎年引き上げ18年3月期には年60円にするという。1月24日(金)の終値から算出した配当利回りは実に4.9%となる。

実現すれば業界第一位の三菱商事と純利益ベースで肩を並べることになるため、ビッグニュースと言えよう。

話は変わり、伊藤忠商事と言えば5大商社の一角をなすが、以前は他の商社と比較し、泥臭い体育会系の空気を持っていた。

筆者が伊藤忠商事に入社した大学のクラスメイトから新卒当時に聞いた話では、激しい飲み会、深夜までの残業、休日出勤、をこなして業績をあげてこそ一流商社マンというのが同社の社風という印象だった。

しかし、今の伊藤忠商事から体育会系の社風は感じにくい。その理由が昨年施行された残業禁止令である。

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伊藤忠商事の残業禁止令 どんな中身なの?

2014年4月に伊藤忠商事から「より効率的な働き方の実現に向けた取組について ~朝型勤務の正式導入~」と題するニュースリリースが発表された。※1

同社が発表した内容は以下のとおりである。

  • 深夜勤務(22:00-5:00)の「禁止」、20:00-22:00勤務の「原則禁止」。但し、やむを得ず20:00以降勤務が必要な場合は事前申請の上、認める。
  • 早朝勤務時間(5:00-8:00)は、インセンティブとして、深夜勤務と同様の割増し賃金(時間管理対象者:150%/時間管理対象外:25%)を支給する。※7:50以前始業の場合、5:00-8:00の割増率を8:00-9:00にも適用。
  • 健康管理の観点から8:00前始業社員に対し、軽食を支給する。

商社といえば激務で深夜までデスクにつくのが当たり前、という常識を覆す社内制度を作り上げたのである。

もちろん同制度の実施は世界で約7万人いる社員全員が行うものではないが(2,600人が対象)、出た結果は、残業時間が総合職で1人あたり月4時間削減、20時以降に退社した社員が以前30%だったのを7%まで削減、22時以降は突発申請者数名のみというものだった。

社員は夜の時間を活用して会食・社内のコミュニケーションの機会創出、家に帰っての家族との団欒、読書等自己啓発に費やす時間が増えるなどメリットを受けている。

出る経費については、残業を禁止する代わりに早朝割増賃金(時間管理対象者:150%/時間管理対象外:25%)をつけても、人件費コストが7%削減され、電気代も6%減となるなど、確実にコスト削減効果が生まれた。

業務にも特段支障はなく、冒頭でお伝えした通り、伊藤忠商事は過去最高の純利益を3年で生み出す予定だ。

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自社に最適で最高の結果を出す勤務制度を作ろう

この動画の題名は“Early Birds vs Night Owls”(朝型人間VS夜型人間)という。

動画によれば、人間にはゲノム(遺伝子)によって朝のほうが活躍できる人、夜のほうが活躍できる人が決まっているという。

夜型の人間にとって9時から17時までの時間は効率よい仕事が出来ないのだが、夜になると創造性や認知能力を発揮し、ストレスホルモンの分泌レベルが高いため、お金を稼ぎやすいのだそうである。

また勤務時間の形態をどう最適化するかは、自社の業態や社風、理念によって事情がそれぞれ違うはずだ。

しかし経営者にとって大事なのは結果だ。もし意味のない残業に時間を費やしている社員が自社に見られるなら、勤務制度を再構築し、ムダな人件コスト削減を図り、最高の業績をあげることを目指そう。

※1 伊藤忠商事 ニュースリリース
http://www.itochu.co.jp/ja/news/2014/140424.html

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