先だって鳥取港でズワイガニの初セリが行われ、「五輝星」のブランドで販売される最上級ズワイガニが、これまでの最高値1匹130万円で競り落とされました。
通常であれば、仕入れたものは自社の利益を上乗せして販売されますが、仕入れ値より低い金額での販売は当然損失になってしまいます。
それでも卸会社の人たちはカニに高値を付けます。その理由を解説しましょう。
ズワイガニたった1匹を130万円で競り落としてモトは取れるの?
先だって鳥取港でズワイガニの初セリが行われ、「五輝星」のブランドで販売される最上級ズワイガニが、これまでの最高値1匹130万円で競り落とされたそうです。
更に、初セリと言えば、年明けのマグロの初セリでは、マグロが1千万円を超える値段で競り落とされる、というニュースが毎年恒例となっています。
通常であれば、仕入れたものは自社の利益を上乗せして販売されます。
ですが、ニュースに出るような「ご祝儀相場」の値段は、普通の取引価格をかなり上回っていることは間違いありません。
これを更に利益を上乗せして販売しようとすると、仮にお寿司なら1カン当たりいくらになるのか…少なくとも回転寿司で出せるような値段ではないはずです。
仕入値よりも低い金額での販売となれば、当然損失が出てしまいます。
1匹130万円する価値は広告宣伝効果にある
なぜ、ご祝儀相場を作る会社は、損失を出してまで高い金額でカニやマグロを競り落とすのでしょうか?
一番の要因と思われるのは、広告宣伝効果です。
初セリでの高額落札は、テレビ、新聞、最近ではネットニュースなどで取り扱ってくれる可能性が高いリソースです。
そうすると、わざわざ広告費用を出さなくても、自社の名前を大々的に取り扱ってくれるのですから、周知効果はかなり大きく期待できます。
また、それにより集客が高まると、それ以外の商品販売も見込めるため、そちらの利益で高額落札分の損失をカバーできることになります。
実際に松葉ガニを競り落とした業者は「少しでもPRできれば」と話していたとのことです。
新しいブランド名や鳥取県の名前を広めたい、という思いで高額での落札となったのでしょう。
落札した松葉カニの取得費用はどう処理する?
この落札されたカニですが、鳥取市内にある施設に展示されることになっています。
どのくらいの期間展示されるかは不明ですが、もし1年を超えて展示される場合、カニの取得費用は減価償却資産として8年(器具備品/生物/その他のもの)で償却されることになります。
その後で販売等された時には、未償却残高が全額費用となります。
通常は展示などせず、売ることを目的として購入していると思いますが、取得した期に販売してしまえば、もちろんその期に全額費用計上されます。
しかし、もし取得から販売までの間に決算期末をはさんでしまうと、その期では費用化されずに棚卸資産として翌期に繰延べ、販売されたときに全額費用化されることになります。